2020.07.06
妊娠が分かると、「さて、いろいろ準備をしなくちゃ」とあれこれ考えますが、まず、マタニティ服のことが頭に浮かぶのではないでしょうか。
妊娠初期は、おなかが目立たないことから、しばらくは普通の服で済ませようとする人もいますが、やはり、初期からマタニティ服の着用に目を向けるといいでしょう。
妊娠すると、身体には様々な変化が起こるので、衣服もその変化に合わせなくてはならないからです。最近は、マタニティといっても、デザインがよく工夫され、普通の服と見かけの変わらないものもたくさん売られています。
妊娠すると、まず体温に変化が起きます。妊娠初期は体温が高くなり、体幹部が熱っぽく感じられます。一方で、四肢の末梢部分は冷え、寒さを感じやすくなるので、熱が籠もらないようにすると同時に、冷えをふせぐことも必要になります。締め付けが強いものは血流を妨げ、冷えの原因となるので、避けなくてはなりません。
また、妊娠初期は、だるさ、眠気、乳房の張り、足のむくみ、つわり、敏感肌、情緒不安定などのマイナートラブルも起こりやすいので、こうした不調に対応することが必要です。さらに、女性ホルモンの影響で日焼けやシミなどの色素沈着も起こりやすいので、美容の面からも対策をしたほうがいいでしょう。
①吸湿性・通気性の良いものを選ぶ
冬場は保温性も重要で、特に、おなかまわりは冷えないように気をつける。静電気も起こりやすい季節なので、繊維の組み合わせには注意する。ポリエステルやナイロンなど帯電しやすい素材同士を組み合わせると静電気が起こりやすいので、綿・シルク・麻などの天然繊維と組み合わせるようにする。静電気防止スプレーを使用してもよい。
②ゆったりとして、伸縮性があり、動きやすいものを選ぶ
ウエスト、首まわり、アームホール、手首と足首部分に圧迫や締め付けがないか、服を重く感じないかチェックする。
③重ね着できるセットにしておく
上半身のほてりや下半身の冷えに対して、脱いだり着たりの調整がしやすいように工夫する。
④シンプルなデザインを選ぶ
ヒダが多すぎたり、丈が長すぎたりすると、ひっかかりや転倒の原因になることもある。
⑤衣服だけでなく、履き物にも注意する
軽く、靴底に滑り止めのあるもの、履いていて安定感のあるもの、脱げにくいものを選ぶ。フラットシューズ・スニーカーがよい。
夏場は、つばひろの帽子や紫外線カット素材の上着を着用し、紫外線から肌を守る。冬場の防寒具は、暖かいタイツやレッグウォーマーで足を冷やさないようにする。マフラーはひっかかりを避けるために、長いものは避ける。
このようにいろいろな注意点がありますが、最近は機能性の高い衣服が開発されていて、妊娠初期から後期まで、さらには授乳期にまで長く使える便利なものも販売されています。楽しんで準備してみてはいかがでしょうか。
参考資料 女性の生理的特性と衣服の温熱的快適性 佐藤真理子
繊維学会誌 第75巻 第6号
≪取材協力≫
佐藤 真理子(さとう まりこ)
文化学園大学 服装学部・大学院生活環境学研究科 教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修了。博士(学術)。放送大学・千葉大学ほか非常勤講師を経て現職。専門は衣服の快適性と機能性。著書に『被服学事典』(朝倉書店/分担執筆)、『衣服の百科事典』(丸善出版/分担執筆)ほか。日本家政学会、繊維学会等に所属。
《 監修 》
橋爪 あき(はしづめ あき) 睡眠改善インストラクター
慶應義塾大学卒業。
一般社団法人日本眠育普及協会代表、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、
日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、NPO法人SASネットワーク理事。
睡眠知識の広報活動、講演、執筆、メディア・企業の企画協力などを行う。
▶HP https://min-iku.com/