2020.08.24
分娩がなかなか進まない「軟産道強靭(なんさんどうきょうじん)」という症状があることをご存じですか?
年齢や体質、子宮の奇形などが原因になりやすいようですが、できるだけスムーズな分娩を目指して、妊娠中から柔軟にしておきましょう。
軟産道は分娩時に赤ちゃんや胎盤などが通過する場所のことで、膣、外陰、会陰などから構成されています。
「軟産道強靭」とは、この軟産道が十分に伸び広がらず赤ちゃんが出てこられないため、分娩の進行が遅れることをいいます。軟産道強靭は、妊婦さんの栄養不足、筋力不足、加齢、骨盤のゆがみが影響した股関節の可動域の不均等など原因はさまざまです。
軟産道の筋組織は加齢によって委縮し、組織の柔軟性や伸展性が乏しくなるため、高年齢での初産の場合は軟産道が強靭することも予測し、分娩前からの身体のケアが大切になります。
なお、軟産道強靭は事前に診断することが難しく、分娩時の軟産道の伸展性や分娩の進行具合によって診断されます。軟産道は時間とともに軟化することが多いため、母子の状態から判断し、軟化するまで様子を見ることもありますが、軟化が見られない場合は緊急帝王切開を行うこともあります。
分娩時に赤ちゃんの通り道となる軟産道を柔軟にして収縮・伸展を良くすることは、分娩をスムーズにに進行させるのはもちろんのこと、会陰切開を回避したり、骨盤底筋のダメージを少なくしたりします。
また、産後の尿漏れ、痔の予防、体型、体力の回復も早くなる、などのメリットも期待できます。何よりも、分娩の進行がスムーズなのは、赤ちゃんの負担が少なくなるので、赤ちゃんにとってもうれしいメリットになります。
赤ちゃんの育つ子宮が収まる骨盤がゆがんだまま運動をしたり、低下した脚力や足底筋でウォーキングをすることは、かえって軟産道を緊張させてしまう恐れもあるため、運動の習慣がない妊婦さんはもちろん、積極的に運動をする妊婦さんにも、軟産道を柔軟にするストレッチをお勧めします。
子宮が出産にそなえて下がってくる前の妊娠35週までは子宮が高い位置にあると、お母さんの膀胱や軟産道への圧迫が軽くなり、股関節、脚への負担も軽減するので血流が良くなります。赤ちゃんへ酸素や栄養も届きやすく、赤ちゃんの子宮の中での動きも楽になります。また、脚力の低下を防ぐことで、骨盤底筋の収縮も活発になり、分娩時の助けになります。
分娩時に赤ちゃんがスムーズに生まれてきてくれることをイメージしながら、楽しく身体のケアをしてみましょう。
《 監修 》
立花 みどり(たちばな みどり) ボディアナリスト
一般社団法人日本ピルビスワーク協会 特別顧問。
即効的に骨盤をリセットする運動ピルビスワークを考案し、
40年間で60万件もの指導実績を持つ骨盤美容の第一人者。
近年では不妊改善と産前産後の骨盤リセットサロンを運営する傍ら、産後ママ対象に乳幼児から姿勢を整える育児「骨育」の指導に力を入れている。
▶HP https://pelviswork.com/
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
濵脇文子先生の監修記事一覧
📖妊娠希望に掲載中の記事