2020.09.07
「節約」というと、「チラシをチェックして10円でも安い物を買おう」とか、「朝のテイクアウトのコーヒーを控えよう」という毎日のコツコツとしたお金の節約を考えがちです。
そもそも、節約しようと思っている多くの人は「将来のためにお金を貯めたいから」と答えることでしょう。では、それは「いつまで」に「いくらぐらいのお金」が必要なのか考えたことはありますか?
今回は、これから妊娠を検討している方に向けて子どもを授かる前に始めるお金の節約についてお話します。
子どもを望んでいる時期、具体的に将来の貯蓄をイメージするのは「子どもが小学生くらいまで」ではないでしょうか。
しかし、子どもはその先もどんどん成長しますし、実はそれ以降の方が、子どもに関するお金が必要になります。
これから妊娠を検討する方の中には、不妊治療を視野に入れていらっしゃる方もいるかもしれません。
実際に妊娠した時に慌てないためにも、「人生」という長期的な視点と、「子どもを養育する(大学卒業まで)」という中期的な視点で、お金や暮らしを考えてみることが大切です。
実際に子どもが生まれると、子どもが大きくなるにつれて、食費、習い事や塾通いなどの費用がかかり、進学するコースによっては教育費が高額になります。
また、子ども同士の付き合いに関する出費も出てくるものです。
すると、お金は出ていく一方で、徐々にコントロールするのが難しくなります。
例えば、大学進学にあたり500万円程度の教育資金が必要となったとき、その場で用意するのは大変です。しかし、20年間で貯めようと計画すれば、1カ月2万円程度の積み立てとなります。「子どものためのお金を、先取りして用意する」と考えましょう。
実は子どもが小さいうちは、長い子育て期間の中で最もお金がかからない時期です。子どもにかかるお金も親である自分たちでコントロールしやすいので、「お金を貯めやすい時期」といえます。
自分たちでコントロールしやすいという意味では、妊娠前も当てはまります。
長期的な視点で考えたとき、今の若い世代が老後に年金だけで生活を賄うのは難しいでしょう。
そのため、働いてお金を稼いでいるときに、「将来使う予定のお金」を貯蓄として取り分けておくことが必要です。
毎月の生活費と平均余命などから計算すると、長期的に見て、いくらくらい必要か考えることができるでしょう。
中期的な視点で見ると、妊娠・出産、育児があり、子どもの養育費や学費などを用意しなくてはいけません。
妊娠前にクリニックの受診等でお金を使うケースもあります。
妊娠・出産・子育て以外にも、マイホームや車の購入など、大きな出費も考えられます。
いつ、どれくらいの出費がありそうか、リストアップしてみましょう。
一度将来を考えてリストアップをしてみると、将来のために必要なお金が見えてきます。
現在の生活を続けていて大丈夫でしょうか?
また、現在働いていても、この先もずっと働き続けられるとは限りません。
そうしたことも含めて、貯蓄が必要だということが分かります。
まず、すぐにやるのは、現在の収入と支出を把握することです。
1カ月の収入がいくらで、【何にどれくらいのお金を使っているか】を2人で確認しましょう。
家計簿をつける、スマホのアプリを利用する、買い物したらレシートをもらって1カ月の集計をするなど、やりやすい方法でかまいません。
クレジットカードの引き落とし分や電子マネーで支払った分も、忘れずに計算しましょう。
収入と支出を把握したとき、赤字になっていないでしょうか?
月々の赤字をボーナスで補填している場合は、すぐに見直しましょう。
月々の収入の範囲で生活することが大事です。
節約は「とにかく安い物を選べばいい」という話ではありません。
必要なものはきちんとお金を払い、「払わなくていいものや、ムダなものがないか見直す」というのが節約です。
例えば、昔は存在しなかったスマートフォンは、現代では必需品になりました。
必要ですから使いますが、契約プランを見直す、格安スマホを検討する、ゲームの課金を制限するなど、使い方を見直すことはできます。
家賃は? 光熱費は? 衣類は? 日用品は? こうしたことを、1つ1つ見直していくことが節約につながります。
なかでも「保険料」「通信費」「食費」は、見直しによって節約できる割合が大きいといわれています。
このように生活を見直すことで1カ月5,000円の節約ができたとしたら、1年で6万円、10年で60万円にもなるのです。
では、貯蓄はどのようにしたらいいのでしょうか?
家賃や光熱費、食費や日用品など、毎月かかる費用を計算して(予算)、収入から引いた分を貯蓄します。
このとき、夫婦が自由に使えるお小遣いも決めておきましょう。
予算以外のお金を使わなければ、残りは貯蓄に回すことができます。
そのポイントとして、「ランチ代はお小遣いから出す」「ヘアカットは家計でOK、ネイルサロンはお小遣いをあてる」「2人での外食は月1回までは家計でOK、それ以上はお小遣い」など、ルールを決めることです。
「お小遣いは1万円だけど、どうしても6,000円のネイルサロンに行きたい…」
そんなとき、「今月は3,000円残しておこう。そのためには、お弁当を作ってランチ代を浮かし、朝のテイクアウトコーヒーは週1回に減らして…」と工夫するでしょう。
楽しみを叶えるための節約なら、無理なくできるのではないでしょうか。
ある程度の貯蓄ができていれば、何らかの理由で収入が減った場合や急な出費があったときにも慌てずにすみ、心に余裕が生まれます。
そして、生活を見直すことでお金が貯まれば、「自分でお金や生活をコントロールできた」という自信につながるでしょう。
その体験は、これからの生活や人生に役立つことでしょう。
子どもを迎えようと思う時期は、夫婦にとってはお金について考えるのに最も適した時期といえるでしょう。
《 監修 》
菅原 直子(すがわら なおこ) ファイナンシャルプランナー
子育て世帯にかかせないお金知識を自治体の講座などわかりやすく解説。学生向け奨学金講座や新聞・雑誌等に教育費に関するコメント・執筆も。「子どもにかけるお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」メンバー。