2020.09.23
葉酸がお母さんや赤ちゃんにとって大切な理由を理解し、適切なタイミングで必要な量を摂取するように心がけましょう。
核酸は細胞核の中にあり、遺伝情報やタンパク質を作る情報を持っているため、体を作るためにとても重要な要素です。
妊娠期は胎児の体を作るために、細胞分裂が活発に行われる大切な時期なので、核酸の合成に必要な葉酸を十分に摂取することが求められます。
また、授乳期の赤ちゃんの発達にとっても重要な栄養素なので、お母さんが葉酸を摂取し、母乳を通して葉酸を赤ちゃんに与えることも大切です。
葉酸については様々な研究が進み、その必要性がうたわれるようになりましたが、現在の食生活では不足しがちなため、妊娠前から葉酸の摂取が推奨されています。
この期間は「神経管」という中枢神経系のもとになる細胞の集合体が形成されています。
細胞分裂を繰り返しながら脳や脊髄が作られていくため、胎児にとってとても重要な時期なのですが、同時に「神経管閉鎖障害」という先天性障害を発症するリスクが高い時期でもあります。
また、月経が遅れていることで妊娠に気付くケースなどでは、すでに妊娠周期が進んでしまい、必要な時期に十分な葉酸を摂取することができなくなる恐れがあります。
このような事態を避けるためにも、妊娠を希望するタイミングで葉酸を積極的に摂取していくことが大切です。
葉酸は授乳期の赤ちゃんの発育にも影響があるといわれています。
出産後も意識して摂取するようにしましょう。
神経管の下部の閉鎖障害を二分脊椎といい、その障害が起きた部位で、脊髄の骨と皮膚の欠損が起こり、脊髄が十分に守られていないため、神経組織に障害が起こって膀胱や直腸の機能障害、下肢の運動障害を起こすことがある病気です。
神経管上部の閉鎖障害では脳の発育ができない無脳症などが起こる場合もあります。2)
いずれも普段から食卓に並ぶ食材ばかりなので、毎回の食事に取り入れやすい栄養素といえるでしょう。
しかし、水溶性ビタミンのため水に溶けやすく、熱や光にも弱いため、調理の過程で栄養が失われてしまいます。
そのため、気を付けて摂取しているつもりでも、実際に取り込める量が不足してしまう可能性があります。
また葉酸は体内における備蓄性が低いため、今日摂取した分を翌日に回す、ということはできません。
毎日摂取することが必要です。
妊娠を計画している女性に対しては1日400μg、妊婦に対しては1日440μgが推奨量とされています。
ほうれん草で440μgを摂取するには、約6株3)、お店で売っている1把分くらいが1日に必要な量になります。一度にすぐ取れる量ではありませんが、調理方法を工夫して栄養素の損失を防ぎながら、必要な葉酸量を摂取していきましょう。
なお、普段の食事から葉酸を摂取し過ぎることによる健康障害は報告されていません4)。葉酸は水溶性なので、必要摂取量より多く取り入れてしまったとしても、尿中に排出されます。通常の食事における葉酸の過剰摂取についてはそれほど気にする必要はないので、積極的に摂取することを心がけましょう。
葉酸を多く含む植物性食品 | 1食あたり の重量(g) |
葉酸(μg) 1食あたり |
葉酸(μg) 100gあたり |
---|---|---|---|
・玉露(浸出液) | 150 | 225 | 150 |
・なばな(洋種、茎葉、ゆで) | 80 | 192 | 240 |
・グリーンアスパラガス(ゆで) | 100 | 180 | 180 |
・からしな | 50 | 155 | 310 |
・さつまいも(皮むき、蒸し) | 200 | 100 | 50 |
・ほうれん草(ゆで) | 80 | 88 | 110 |
・えだまめ(ゆで) | 30 | 78 | 260 |
・いちご | 80 | 72 | 90 |
・はくさい | 100 | 61 | 61 |
・しゅんぎく(ゆで) | 60 | 60 | 100 |
葉酸は身近な食品から取り入れることが可能ですが、普段の食事からの適正な葉酸摂取が困難な場合は、食事全体のバランスに留意したうえで、栄養機能食品の利用も推奨されています。
ただし、栄養機能食品は効率よく栄養素を取り入れるように作られているため、過剰摂取につながりやすくなります。1日1000μgを超えて摂取することは望ましくないため、食事からの摂取量とのバランスを考えながら、取り入れるようにしてください。5)
1) 2) 3) 5)厚生労働省:2006年2月1日発表「妊産婦のための食生活指針」(「健やか親子21)推進検討会報告書):https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-02c.pdfを加工(一部引用)して作成
4)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (234ページ)を加工して作成
《 監修 》
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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