2020.10.12
社会的な動物である人間にとって、お互いを理解し合い、親密度を高め、愛を深めていくことは、生きていく上で最も大切なことです。そんな心の作用を生み出してくれるホルモンが存在します。愛のホルモンというニックネームを持つ「オキシトシン」といいます。
その分泌を高めることは、妊娠を目指す夫婦にとって、一層必要とされるでしょう。
「オキシトシンと妊娠の関係」については別記事で触れましたが、
今回は、妊娠希望中にオキシトシンの分泌を高める方法についてご紹介します。
妊娠前からオキシトシンを分泌させることは大切です。家族や周囲の人々と円滑な人間関係を築き、心身共に健康であることが、日々の生活を安定させるからです。また、子どもを迎えることを意識したら、そのための体作りも考えておかねばならないでしょう。
オキシトシンを分泌させるには、セルフマッサージが効果的です。頭から足まで、オイルやクリームを使って、ゆっくりなでていきます。この時、皮膚の感覚に意識を向けます。こうしてセルフマッサージを行うと、自分を大切に思うことができ、オキシトシンがよく分泌します。そして、ストレスが軽減され、体の緊張も解かれます。お風呂上がりや寝る前に行うと快眠効果も得られ、美肌効果も期待できます。
妊娠を成功させることは夫婦の共同作業です。肉体的にはもちろん、精神的な支え合いもとても大切ですから、オキシトシンの分泌を意識して増やすことが必要でしょう。
オキシトシンには、男性の場合、精子の放出量を増やし、その活動を活発にする作用があります。女性の場合には、子宮を強く収縮させて、放出された精子を子宮の奥に吸い込ませる効果があります。このようなオキシトシンの働きは、それだけ妊娠の可能性を高めてくれます。ですから、女性の妊娠しやすい周期に合わせて、パートナーとの触れ合いを集中的に増やすようにしましょう。
また、妊娠希望中に気を付けたいことは、ストレスです。ストレスはオキシトシンの分泌を抑制してしまうからです。不妊かもしれないと思うようになると、特に女性は自分に責任があると感じ、自責の念を抱えてストレスをためてしまう傾向があります。たとえなかなか妊娠しなくても、自分を責めるのではなく自分を愛する心を育むことが大切です。そのためには、ゆったりとした気持ちで「つらいのは自分だけじゃないんだ」などと自分に優しく言葉がけしながら、自分の気持ちを受け入れましょう。そうすれば、オキシトシンの分泌を促すことができます。もちろん、こうしたプラス思考の姿勢をパートナーにも向けてあげてください。
普段から、「ありがとう」の感謝の言葉や相手を思いやる優しい言葉をかけ合うこともオキシトシンの分泌を高めます。まめにコミュニケーションをとることも忘れないようにしましょう。
なかなか妊娠に至らず、通院して体外受精を選択する夫婦もいることでしょう。
体外受精で、卵子と精子を採取する施術を前にすると、どうしてもストレスがかかりますから、「五感の楽しみ」を得てリラックスしてオキシトシンを増やしましょう。
(※体外受精の胚移植後は、オキシトシンが子宮の収縮を促すことから、しばらくはパートナーとの肉体的触れ合いは控えたほうが良いでしょう)
このようにパートナー間でストレスをためないように心がけ、互いに思いやり、愛し合うことでオキシトシンの分泌を高めます。分泌が高まれば、一層愛が深まり、さらにオキシトシンが増えていく、そうした良循環を是非、手に入れてみてください。
《 監修 》
山口 創(やまぐち はじめ) 教授
桜美林大学リベラルアーツ学群 教授、博士(人間科学)、臨床発達心理士。
オキシトシンを分泌させる触れ方、ストレスや痛みを癒す皮膚感覚について研究。
子育て、医療、セラピーなど多数の現場で研究・講演活動中。
『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)、『子育てに効くマインドフルネス』(光文社新書)など多数執筆
▶HP http://www2.obirin.ac.jp/y-hajime/
橋爪 あき(はしづめ あき) 睡眠改善インストラクター
慶應義塾大学卒業。
一般社団法人日本眠育普及協会代表、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、
日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、NPO法人SASネットワーク理事。
睡眠知識の広報活動、講演、執筆、メディア・企業の企画協力などを行う。
▶HP https://min-iku.com/