2020.02.04
その一つに、男女雇用機会均等法に規定されている、妊婦健康診査とその結果に基づく保健指導を受けるための時間の確保があります。
妊婦健康診査は、妊娠週数によって2週間に1回、4週間に1回などと目安が定められています。受診のために時間を確保したい申し出を行った場合は、会社は拒否をすることができません。
では、受診のために確保した時間、例えば早退などをした場合は、給料に影響があるのでしょうか。
雇用における給料の考え方には、ノーワーク・ノーペイの原則というものがあります。
これは、働いていない時間には、支払うべき給料も発生しないという意味です。
どんなにやむを得ない理由であっても、働いていない時間である以上、会社は給料を支払う義務はありません(有給休暇や会社の都合で命じた休業を除きます)。
妊婦健康診査においても、この原則が適用されますから、早退や遅刻等の場合は、その分が給料から控除されることになります。
「ええっ!そんなのひどい!」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、時給で働く方を想像していただくと分かりやすいかと思います。
“風邪などで1時間早く帰りました、でも仕方のない理由なのでその1時間も給料が発生します。”というのは違和感があると思います。
月給で働く場合でも、それは同じことなのです。一般的には翌月に(給料の締め日によっては当月に)、「欠勤控除」または「遅早控除」などの項目に、時間単価を算出して計算した金額がマイナスで入ることになります。
もちろん、給料こそ控除されますが、理由が妊婦健康診査ということであれば、勤怠不良として、人事評価など査定に響くようなことはあってはならないことです。
もしそういったことがあれば、明確なマタニティーハラスメント(マタハラ)といえますので、会社に異議を申し立てるか、労働局や社労士に相談しましょう。
多数派ではないですが、上記の妊婦健康診査の時間を有給としている会社もあります。
「有給」というと、法律で定められている「年間20日」などの有給休暇と勘違いしてしまう方も多いのですが、そちらは略すと「有休」と書きます。
「給料が有る」という意味で使われるもので、対義語は「無給」です。
本来は勤務する義務がある時間に休んだ場合、給料が出るのか出ないのかを「有給か無給か」と表現します。
月給の方の場合、「有給」ということは、翌月などに給料が控除されないという意味です。決して「年間20日」などの「有給休暇(有休)」が充て込まれるわけではないので、ご安心ください。
有給休暇を強制的に使用させられるのは、労使協定に基づく計画的付与や、いわゆる働き方改革における5日間の消化義務を満たすためなど、一部の例外を除いて違法です。
ただし、給料が減額されるくらいであれば有給休暇(有休)を使用するという選択肢は、一般的によくある考え方といえます。
他の記事にも書きましたが、妊婦健康診査では、勤務についての細かい指導を受けたり、それを会社に伝えるための「母性健康管理指導連絡カード(母健連絡カード)」が発行されたりします。
会社がそれに応じた配慮を行い、結果として勤務時間が短くなった場合は、やはりノーワーク・ノーペイの原則によりその分の給料は発生しないことになります。
《 監修 》
木幡 徹(こはた とおる) 社会保険労務士
1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。スタートアップ企業の体制構築やIPO準備のサポートを主力とし、企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。
▶HP https://fe-labor-research.com/