2021.10.22
目次
プールの水から直接感染することがあることから、プール熱と呼ばれるようになりましたが、プールでなくても感染します1)。
ただ、最近のプールは消毒が十分行われているため、プールでの感染は減っています2)。
流行は6月ごろから始まり7月、8月にピークを迎えますが、近年では小規模ですが冬に流行したことがあります3)。
風邪やインフルエンザなどの感染症は、冬に流行するイメージがありますが、夏に流行する感染症もあります。
中でも、咽頭結膜熱、📖手足口病、📖ヘルパンギーナは、「子どもの三大夏風邪」と呼ばれるように、ウイルスが原因で主に子どもの間で夏に流行する主要な感染症です4)。
アデノウイルスには60以上の型があり、アデノウイルスの型によって引き起こす症状が異なります。
咽頭炎・扁桃炎・肺炎などの呼吸器の病気、結膜炎・咽頭炎などの目やのどの病気、胃腸炎などの消化器の病気など、さまざまな病気の原因となります。(図1)
図1:アデノウイルスの感染によって起こる主な病気
アデノウイルスによる感染症で、結膜炎に加えて咽頭炎の症状が見られるものを咽頭結膜熱と呼んでいます5)。
咽頭炎は📖溶連菌感染症、単純ヘルペス感染症、EBウイルス感染症などでも発症する6)ので目の症状に乏しいときは鑑別が必要です。
咽頭結膜熱の原因となるのは、アデノウイルスの3型が主であると言われています7)。
アデノウイルスの感染経路は、感染者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染(ひまつかんせん)と、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染があります4,8)。
5~7日間の潜伏期間の後、39~40℃の高熱が4~5日続き、のどの痛みのほかに頭痛、食欲不振、全身倦怠感、ときに下痢や腹痛が見られます。
のどの痛みは咽頭炎によるもので、結膜炎は軽度から中等度で、目が赤くなり(充血)、目やにが出るほか、目の痛み、まぶしく感じる、涙が出るなども見られます5,7)。
また、リンパ節の腫れ、乳児ではおう吐や下痢が見られることもあります1)。
まれに軽度の肺炎を起こすこともあります3)。
のどの痛みや目の症状は、約1週間でよくなってきます1)。(図2)
図2:咽頭結膜熱の主な症状
咽頭結膜熱のようなアデノウイルスが原因の感染症の治療薬はなく、ワクチンもありません。
そのため、症状を和らげる対症療法が中心になります。
安静と十分な水分補給を行い、結膜炎がある時は目薬を使います1)。
飛沫・接触感染する咽頭結膜熱の予防は、感染した人との密接な接触を避け、流行期にはうがいや手指の消毒を励行することです。
手指の消毒は流水と石けんによる手洗いが中心です。消毒用アルコールは、アデノウイルスに対する効果は弱いと言われています7)。
マスクや咳エチケットも大切です。
プールや温泉施設を利用する時には、前後にシャワーを必ず浴び、タオルは個別にし、手洗いも励行しましょう8)。
ホームケアは、次にあげることを中心に行うとよいでしょう。
(1) 高熱が続くことが多いので、不安になることもありますが、解熱剤の使い過ぎには注意する
(2) 水分を十分にとるようにする
(3) のどに痛みがあるときは、熱いもの、オレンジジュースのように酸っぱいものはのどにしみるので避ける
(4) 食事は塩からいものや固いものは避け、冷たくてのどごしがよいものにする(冷ましたおじや、とうふ、やわらかく煮たうどん、うらごししたバナナ、ゼリー、ヨーグルトなど)
(5) こまめに手洗いをし、結膜炎がある時はタオルの共用はやめる5)
また、以下のような様子が見られたら、もう一度診察を受けましょう5)。
(1) 5日以上高熱が続く
(2) 水分摂取ができずおしっこの量が少なく脱水の危険がある
(3) ぐったりする
熱が下がり、のどの痛みと結膜炎がなくなったあと、2日間経てば登園・登校ができるようになります1)。
『参考資料』
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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