2021.12.01
目次
細菌やウイルスが口から入り、胃や腸に侵入することによって、発熱、腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れる病気を感染性胃腸炎と言います1)。
そのうち、原因の約90%がウイルスによるものでウイルス性胃腸炎と呼ばれ、秋から冬にかけて流行します2)。
ウイルス性胃腸炎の原因は、ノロウイルス・ロタウイルスなどです。
ノロウイルス胃腸炎は数日で、ロタウイルス胃腸炎は1週間ほどで自然によくなりますが1)、脱水症状が強い場合は入院となることもあります2)。
ウイルス性胃腸炎の原因は、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルスなどです1,2)。
生牡蠣(かき)によるノロウイルス胃腸炎はよく知られています。
このうちノロウイルス胃腸炎は11月~1月に、ロタウイルス胃腸炎は3月~5月に流行のピークがあります1)。
胃腸炎の原因となるウイルスはヒトからヒトに感染します。
主な感染経路は口からで、例えば次のようなケースです1,3,4)。
・ウイルスに汚染された食品(加熱が不十分な食品を含む)を食べた。
・感染者の糞便や嘔吐物、あるいはそれらが付着したもの(おむつ、便座、ドアノブ、テーブル、食器、ふきんなど)に素手で触れてしまい、その手を介して自分の口にウイルスが入った。
ウイルスによって異なりますが、感染してから1~2日経過して次のような症状が現れます1-4)。症状が現れないこともあります。
・発熱、嘔吐、下痢、腹痛(ロタウイルス胃腸炎の下痢便は白っぽいのが特徴)
・発熱や繰り返す嘔吐と下痢のため、脱水状態になる
・脱水による症状として、口の中が乾き、尿の量が減る
・まれに、けいれん、意識障害、腎臓の障害などを起こす
・まれに、ロタウイルス胃腸炎の場合は胃出血、尿路結石、急性脳症・脳炎をきたす5)
糞便中にウイルスの目印となる分子(抗原といいます)があるかどうかを調べる検査があります1,3,4)。
通常は、医師がお子さんの症状や地域の感染状況などから総合的に判断して、ウイルス性胃腸炎と診断することが多いようです3,4)。
ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスに効く薬がないため、下痢などによる脱水を防ぐことが治療の基本的な考え方です。
安静を保ち、水分を補給して、食べやすく栄養が取れるように食事を工夫します。
ほとんどの場合、数日~1週間ほどでよくなりますが1,2)、意識の低下やけいれんなどが見られた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
医療機関では点滴で水分を補うこともあります。
また、吐き気が強い時に吐き気止めを処方されたり、激しい腹痛に対して痛み止めを処方されたり、腸内環境を整えるために乳酸菌製剤などの整腸薬が処方されることがあります。
下痢止めは、排出すべきウイルスを腸内にとどめておくことになるため、病気の初期には使われません2)。
家庭では、子どもの安静を心がけ、様子を観察して水分補給をします。
湯冷まし、お茶(むぎ茶、ほうじ茶)、イオン飲料などを少しずつ、回数を多くして与えましょう2)。
食事は、重湯(おもゆ)、おかゆ、軟らかくゆでた野菜など、消化の良いものを与えます2)。
母乳はそのまま、ミルクなら半分~3分の2くらいに薄めて与えます2)。
症状(便の状態、食欲)がよくなっていれば、徐々に普段の食事に戻して大丈夫です2)。
ウイルス性胃腸炎の予防法は、普段からの手洗いと、感染者が出た時に糞便・嘔吐物の処理に気をつけることです1,3,4)。
特に、食事・料理の前やトイレの後、汚物処理の後は十分に手を洗いましょう。
感染した人は入浴の順番を最後にすること、タオルをその人専用にすることなども大切です。
汚物を処理する時、汚物そのものはもちろん、使用したマスクや手袋にも素手で触れないようにビニール袋に入れて捨てます。
公的機関や衛生用品メーカーが汚物処理の手順をわかりやすくまとめています。
参考リンク(2021年12月1日閲覧)
▶https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000678258.pdf(感染対策普及リーフレット|厚生労働省)
ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスのうち、ロタウイルスにはワクチンがあります。
このワクチンは飲むワクチンで、乳児に対する2回または3回の接種でロタウイルス胃腸炎の発症と重症化を予防します6,7)。
『参考資料』
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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