2022.02.07
気管支ぜんそくは、呼吸をするときの空気の通り道である気道(気管支など)の粘膜が慢性的に炎症を起こすことで、気道が狭くなって、咳(せき)をしたときや息を吐くときに笛の鳴るようなヒューヒューとした音・ゼーゼーした音(喘鳴:ぜんめい)がみられたり、呼吸が苦しくなったりする発作を繰り返すアレルギー性の病気です
1,2)。
小学生を対象にした調査では、約5%の子どもに気管支ぜんそくがみられることが分かっています。
また、成人の患者さんでは命にかかわることがありますが、近年では小児の患者さんが亡くなることはほとんどなく、2017年には0~14歳の患者さんで亡くなった人はいませんでした3)。
亡くなる小児が非常に少なくなったことには、早期発見と早期治療が行われるようになったことや、標準的な治療が普及して有効な治療薬が適切に使えるようになったことが関係しているのではないかといわれています。
気管支ぜんそくの原因は、すべてが明らかにされているわけではありませんが、気道の炎症(気道炎症:きどうえんしょう)のために、少しの刺激にも敏感な状態(気道過敏:きどうかびん)になり、ここに様々な因子が作用して気道が狭くなって空気の通りが悪くなり(気道制限:きどうせいげん)、気管支ぜんそくの症状が出ると考えられています1,2,4)。
●体質などの因子
⇨男の子、家族にアレルギー体質の人がいる、気管支ぜんそく以外にもアレルギーがかかわる症状があるなど
●環境因子
⇨ダニ、ハウスダスト、花粉、タバコの煙、大気汚染物質、ペットの毛などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)など。
また、気象の変化、感染、激しい運動(水泳は問題ありません)なども、気管支ぜんそくを引き起こす恐れがあるといわれています(図1)1,2)。
気管支ぜんそくの症状は、咳や息を吐くときのヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)、夜に咳で眠れない、明け方に咳で目が覚める、咳き込んで吐いてしまう、運動するとゼーゼーする、息苦しくなる、ホコリや煙を吸うと咳が出る、横になっているより座っている方が楽に呼吸ができる(起坐呼吸:きざこきゅう)、笑うと咳が出る、など様々です2)。
💡このような呼吸困難の発作は、夜間、朝方に多く、発作がひどくなると窒息の恐れがあります1)。
気管支ぜんそく以外にも、喘鳴が出る病気はかなり多いので、息を吐くとき、吸うとき、吐くときと吸うときの両方かの3つのパターンのどれかを観察することが大切です。
それぞれ(表1)のような病気が考えられます5,6,7)。
気管支ぜんそくの診断では、問診や診察によって、症状の移り変わり、家族のアレルギーの有無、生活環境などを確認します。
検査では、診断をはっきりさせたり、ほかの病気でないことを確認したりするため、次のような検査が行われることがあります2)。
なお、気道抵抗測定と呼吸NO検査と気道過敏性テストは、より詳しく調べるための専門的な検査です。
気管支ぜんそくの治療は、気管支ぜんそくの症状が出ない状態(発作がないコントロールの良い状態)を維持すること、スポーツや日常生活が普通にできること、呼吸機能などの検査結果が正常であること、の3つを目標にし、最終的には薬がなくても気管支ぜんそくのない体になることを目指します。
これらの治療目標を実現するため、気管支喘息についてよく理解した上で以下の対応や治療を行います4,8)。
なお、気管支ぜんそくの治療に使われる薬には、炎症を抑えて発作が起こらないようにする薬(長期管理薬、コントローラー)と、急な発作を抑えるために使う薬(発作治療薬、リリーバー)の2種類があります(表2)9)。
いつもは、炎症を抑えたりアレルギーの反応を和らげたりする長期管理薬を使って、長期にわたり発作が起きないようにします。
急な発作が起きたときには、いったん発作治療薬を使って、速やかに発作を抑えるようにします。
また、乳幼児期のアレルギーは、他のアレルギーの病気を合併しやすく、成長するにつれて、いろいろなアレルギー症状が出たり消えたりすることが大きな特徴です。
これをアレルギーマーチと呼んでいます。
通常、アレルギーマーチは生後6カ月ごろの📖食物アレルギーやアトピー性皮膚炎から始まり、3歳ごろから気管支ぜんそくがみられるようになり、思春期にはアレルギー性鼻炎がみられ、成人してからは成人の気管支ぜんそくが現れることが多いといわれています2)。
このような症状は、成長とともによくなることもありますが、アレルギーマーチを進行させないためには、アレルギーを起こさせる原因を減らすとともに、できるだけ早く気づき、適切な治療によって症状を抑えることが大切です10)。
予防やホームケアでは、以下の対応を心がけます11)。
(1)こまめな掃除
床の掃除機がけは、できるだけ毎日することが望ましいです。
畳の部屋も含め3日に1回はしっかり時間をかけて掃除をするとよいでしょう。
(2) じゅうたん・カーペットは使わない
ホコリが溜まりやすいので使用しない方がよいでしょう。
(3) 寝室や寝具に気をつかう
寝室のホコリや寝具には、特に気をつけましょう。
寝具にも、1週間に1回掃除機をかけましょう。
(4) 風通しをよくする
部屋は風通しをよくして、ときどき換気します。
(5) 暖房器具の選び方
石油やガスなどを発生する暖房器具は、室外換気型のものを選びましょう。
(6) タバコなどの化学物質はさける
タバコ、線香、蚊取り線香、花火、ペンキ、シンナー、接着剤、防虫剤のように、のどや鼻を刺激するものは遠ざけましょう。
(7) ペットがいる場合
犬や猫の毛やフケ、鳥の羽毛などがアレルギーの原因になることがあります。
発作を繰り返えしているときには、ペットを親戚などで預かってもらうか、最低限、子どもと同じ部屋に入れないようにしましょう。
また、以下のような様子がみられたら、診察を受けましょう11)。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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