『下痢止め』子ども(小児)の処方箋: 下痢 ってどんな時に起きるの?【医師監修】

2022.03.28

7

子どもの下痢はどんな時に起きる?【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

子どもの下痢は、ウイルスや細菌の感染、ジュースの飲み過ぎ、食物アレルギー、抗菌薬の服用などによって起こります1)

つらそうな様子を見ると、すぐに薬などで治療をしたくなるかと思いますが、感染症や食中毒による下痢は、体が病原体を追い出そうとする反応なので、下痢止めで無理矢理止めない方が体の外に病原体が出ていきます。
 
 
一方、下痢が長く続くと、体から水分が失われ、また、体に必要な塩分なども一緒に排出されてしまいます。
脱水症という好ましくない状態になりえます。
 
まずは脱水症を防ぐために、水分に加えて塩分・糖分の補給が必要です。
軽症の下痢の場合は、水、お茶、スポーツドリンクでもよいです。
乳児の場合は、母乳やミルクをそのまま与えます。
 
水分・塩分・糖分が速やかに吸収されるように工夫された「経口補水液」が食品メーカーや製薬会社から発売されていて、ドラッグストアなどで購入できます。
子どもが下痢をしたり、吐いたりした場合、速やかに経口補水液を飲ませるのも1つの方法です。
下痢の時に家庭ではどうしたらよいか、かかりつけ医に聞いておくとよいでしょう。
経口補水液を飲むことで急性下痢による死亡率を3分の1ぐらいに減らせることが報告されています。

どんな時に下痢止めが処方されるの?

医療機関では、直接的な下痢止めではありませんが、整腸剤(リンク)が使われることが多いです。

整腸剤は、善玉菌を腸内に送り込んで腸内環境を整えます。
整腸剤の使用は複数のランダム化比較試験で有効とされています。

乳幼児の長引く下痢の背景には、ミルクに含まれる乳糖を分解する酵素(乳糖分解酵素)がなかったり、働きが低下していたりすることがあります。
乳糖不耐症と呼ばれ、その場合は乳糖分解酵素を薬として補ってあげます。
 
 

細菌性の下痢ではない場合などの状況で、特に必要とされる場合に、名前通りの「下痢止め」が使われることもあります。

下痢止めは、腸の動きを抑えて、「便のもと」を腸内に長くとどめるなどの働きがあります。
「便のもと」から水分が腸に吸収されるので、下痢が改善されます。
下痢が治まったら、飲むのをやめます2)
 
 
この記事では、子どもに使われる下痢止めを紹介します(2022年時点)。
薬を使い始めて何か気がかりなことがあれば、医師、薬剤師に相談しましょう。

下痢止めが処方される病気

📖感染性胃腸炎(食中毒)、過敏性腸症候群
など

下痢止めの種類

整腸剤の記事は【こちら】を確認ください

 

 

ロペミン(ロペラミド)

<薬の形状>
細粒、カプセル、錠剤(後発品)
<特徴>
腸の動きを抑えて下痢を改善する薬です。
<注意>
6カ月未満の乳児には使用できません。
6カ月以上2歳未満の乳幼児には原則として使用できません3)
2歳以上5歳未満にも使用しないほうがよいでしょう。

 

タンニン酸アルブミン(タンニン酸アルブミン)

<薬の形状>
粉末
<特徴>
腸で徐々に分解され、腸全体で緩やかな収れん作用(しゅうれんさよう/組織や血管を縮める作用)を示します2,4)
<注意>
牛乳のタンパク質の成分が含まれるため、牛乳アレルギーの人には使用できません。

 

>アドソルビン(天然ケイ酸アルミニウム)

<薬の形状>
粉末
<特徴>
腸内の有害物質や過剰な水分、粘液などを吸着して除去することで、下痢を改善します。
<注意>
嘔吐の副作用があります4)

乳糖分解酵素の種類

ガランターゼ(β-ガラクトシダーゼ〈アスペルギルス〉)

<薬の形状>
散、顆粒(後発品)
<特徴>
乳糖を分解して消化吸収を良くし、下痢や消化不良を改善します。
<注意>
授乳時または食事と一緒に飲ませます。

 

ミルラクト(β-ガラクトシダーゼ〈ペニシリウム〉)

<薬の形状>
細粒
<特徴>
乳糖を分解して消化吸収を良くし、下痢や消化不良を改善します。
<注意>
1回分をおちょこ(盃)などにあけ、ぬるま湯を少量入れて溶き、授乳の直前または途中で飲ませます。50℃以上では酵素の働きが低下するため、ぬるま湯の温度が50℃以上にならないように注意しましょう4)

 

 

『参考資料』

1)小児の下痢.MSDマニュアル家庭版
(2021年12月17日閲覧:小児の下痢 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
2)松本康弘.小児の服薬指導 Next Step.じほう.2021
3)ロペミン小児用細粒 添付文書
4)くすりの適正使用協議会.くすりのしおり.https://www.rad-ar.or.jp/siori/index.html

下痢止めに関するQ&A

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。

    松井潔先生監修記事一覧
    📖子育てに掲載中の記事
     
     

     

    💡休日・夜間の子どもの症状で困った時は☎【♯8000】

     

    保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。
    この事業は全国統一の短縮番号♯8000をプッシュすることにより、お住いの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。
    厚生労働省ホームページ:子ども医療電話相談事業(♯8000)について

     

    【本サイトの記事について】
    本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。 Unauthorized copying prohibited.
    登場する固有名詞や特定の事例は、実在する人物、企業、団体とは関係ありません。インタビュー記事は取材に基づき作成しています。
    また、記事本文に記載のある製品名や固有名詞(他企業が持つ一部の商標)については、(®、™)の表示がない場合がありますので、その点をご理解ください。

この記事は役に立ちましたか?

ありがとうございます!フィードバックが送信されました。