2022.07.04
1. 蕁麻疹(じんましん)とはこんな病気
2. じんましんの原因と症状
3. じんましんの検査でわかること
4. じんましんの治療法と薬
5. じんましんのホームケアと予防
じんましんは、漢字では「蕁麻疹」と書き、皮膚に突然皮疹(ひしん:ブツブツや赤みなどの皮膚の症状)ができ、しばらくすると跡を残さずに消えてしまう病気です。
「蕁麻」(じんま)とは植物のイラクサのことで、イラクサの葉に触れてかぶれるのと同じような皮膚の症状が起こることから、じんましんという名が付けられました1) 。
じんましんは、4~5人に1人が一生に1度はかかる病気といわれるように、ありふれた病気ですが、原因やきっかけが分からないことが多く、症状の出かたや治療の内容も患者さんごとに違いがあるといわれ2) 、複雑な面もある病気です。
じんましんは、食べ物や薬に対するアレルギーとして起こると思われることが多いのですが、アレルギー以外の原因によっても起こります1,3) 。また、じんましんは、乳幼児から成人まで幅広い年齢でみられる病気です。
じんましんは、皮膚にあるマスト細胞(肥満細胞ともいいます)から、何らかの原因でヒスタミンなどの化学物質が放出され、その化学物質の働きで皮疹やかゆみが起こります。
ヒスタミンなどが放出される原因は、アレルギーによるものが多いのですが、実際にはアレルゲンが何か(アレルギーの原因となる物質は何か)を特定することは難しいといわれています。
じんましんには、アレルギー以外が原因となる場合もあります。
特発性(とくはつせい)といって明らかな原因がわからず症状が出る場合や、過敏性・物理的刺激など何らかの刺激により症状がでる場合や、血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)と呼ばれる通常のじんましんよりも皮膚の深い場所にできるじんましん、別の病気の症状として出るじんましんもあります(表1)2,3,4) 。
表1:じんましんの種類
【アレルギーがじんましんの原因となる場合】
食物(卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、魚類、エビ・カニ類など)、薬(アスピリンなどの痛み止め・解熱剤、抗菌薬)、植物・昆虫、化学物質・食品添加物、化粧品など(接触性じんましん)、ゴム(ラテックスアレルギー)、ピアス・イヤリングなど(金属アレルギー)、汗(コリン性じんましん、汗アレルギー)などがあります(表2)1,5) 。
【アレルギー以外がじんましんの原因となる場合】
衣服などによる皮膚の摩擦、ひっかかれた時の刺激(機械性じんましん)、冷たい水や風(寒冷じんましん)、入浴後や暖房機で温まる(温熱じんましん)、日光・特に紫外線(日光じんましん、光過敏症)、感染症などがあります(表2)1,5) 。
【血管性浮腫の原因】
血管性浮腫の原因は、食物、ハウスダスト、薬などですが、まれに遺伝が関係していることもあります2,5) 。
これらのうち、食物や薬が原因となる場合は、📖アナフィラキシーのような危険な症状を起こすことがあるため3) 、注意が必要です。
表2:じんましんの主な原因
【じんましんの症状】
じんましんでみられる皮疹は、赤く盛り上がるのが特徴で、膨疹(ぼうしん)と呼ばれています。
膨疹の大きさは、1~2mmほどのものから、手足全体に広がるものまで様々です。
かゆみを伴うことが多いのも特徴です1,2) 。
通常は、2~3日で跡が残らずに治りますが、治るまでに1カ月以上かかることもあります。治るのに1カ月以上かかるじんましんを慢性じんましん、1カ月以内に治るじんましんを急性じんましんと呼んでいます(表1)4) 。
【血管性浮腫の症状】
血管性浮腫は、じんましんより皮膚の深い部分で起こるため、皮疹の赤みと盛り上がりが少ないのが特徴です。
顔、まぶた、くちびるによく出ますが、腸や手足に出ることもあります。
治るまでに数日かかることが多いのですが、跡は残らずによくなることがほとんどです2,5) 。
蕁麻疹も血管性浮腫も病態は類似しており合併することもあります。2)
じんましんの診断では、問診で「いつから」「どこに」「どんな時に」「どの程度の」「どんな症状が」などを確かめます。診察を受ける前には、これらのことをメモしておいたり、皮膚の様子を写真に撮ったりしておくとよいでしょう(表3)6)
表3:問診でのポイント
じんましんの検査では、血液検査、皮膚検査、誘発検査、負荷試験、皮膚生検(皮膚の一部を採取して行う)があります。このような検査により、原因や悪化にかかわる因子を探します6) 。
各種の検査を行っても原因がわからないことも多く、症状が軽度であれば経過をみるだけでよいです。
血液検査ではアレルゲンに対する抗体の量の測定、皮膚検査では原因と思われるアレルゲンエキスを皮膚にのせ皮膚のアレルギー反応をみるプリックテスト、誘発検査では手を冷水やお湯につけてみてじんましんが出るかどうか、食物経口負荷試験(しょくもつけいこうふかしけん)では原因となりそうな食物を食べてみて症状が出るかどうか、それぞれ行われます6) 。
じんましんの原因がアレルギーである場合には、アレルギーの原因となる因子を避けることが治療の原則になります。
例えば、原因になる食物が分っている場合には、原因になる食物の摂取を症状が出ないぎりぎりの量に制限します。
制限する食物の特定やどの程度食物を制限すればよいかは、主治医の指導のもと行ってください。
薬が原因の場合には、主治医の判断で止めてよいとされれば中止や休止にしますが、休止の期間などについては主治医の指導を受けてください1,7,8) 。
このほか、高温が原因の場合にはお風呂の温度を下げるなど生活面でも工夫してみましょう。
病院やクリニックでの薬による治療では、軽症の場合には、📖抗ヒスタミン薬の飲み薬や📖抗ヒスタミン薬の塗り薬が処方されます。
アナフィラキシーが起こった場合には、時間をおかずにアドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン🄬)を注射します1.3) 。
家庭や保育所、幼稚園、学校での対応は、食物アレルギーと同様です。
食物アレルギーの記事を(食物アレルギーのページをリンク)ご覧ください。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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