2023.05.15
だるかったり疲れやすかったりする、立ちくらみがする、顔色が悪い……そんな症状をなんとなくやり過ごして放置していませんか?
貧血を放置していると体の不調が続くだけではなく、妊娠率や妊娠後に母体やおなかの赤ちゃんによくない影響を与える恐れがあります。
ぜひ、妊活中から貧血の改善に取り組みましょう。
ヘモグロビンは、呼吸によって得た酸素を体のすみずみまで運ぶ役割を担っています。
ヘモグロビンを造るために不可欠な鉄分が不足すると、血中のヘモグロビン濃度が下がり、体中に十分な酸素を運搬することができなくなります。
その結果、さまざまな不調が現れます。
これは、貯蔵鉄(ちょぞうてつ)といわれる体内にストックしてある鉄が不足することで、貧血の一歩手前の状態です。
かくれ貧血は、体内に鉄を貯蔵したり鉄の量を調整するフェリチンの値を調べたりすることで診断されます。
日本の女性は必要量の6割ほどしか鉄分を摂取しておらず、診断されていない「かくれ貧血」は相当数います。
経血量が多くなる病気として、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内ポリープなどがあります。
また月経が多くなくても、定期的に月経があれば鉄分が消耗されます。
近年、若い女性の朝食抜きや無理なダイエット、バランスの悪い食事など食生活の乱れによる鉄欠乏性貧血や鉄欠乏症が増加しています。
その結果、立ちくらみやめまい、息切れ、疲れやすい、顔色が青白いなどの症状が現れます。
また、鉄はコラーゲンの生成にも関係しているため、鉄不足によって爪が割れやすくなる、肌がかさつく、髪の毛が抜けやすいなどの症状が出ることもあります。
妊娠や出産、授乳中は鉄の需要が急激に高まります。
妊娠を考える女性は症状が無くても、新しい命を育むために鉄(フェリチン)を十分に蓄えておきその需要に備える必要があります。
貧血の程度が軽い場合は、ほとんど自覚症状がありませんが、ひどくなると息切れやめまいなどの症状が出てきます。
さらに重度になると切迫早産や微弱分娩、分娩時の出血量の増加などを起こしたり、赤ちゃんに発育遅延が生じたりするリスクが高くなります。
妊婦健診時の血液検査で鉄欠乏性貧血が分かったら、医師の指示に従って治療を行います。
生まれてきた後母乳で赤ちゃんを育てる場合、母乳中には鉄分が不足していることが分かっています。
赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいる間に鉄を貯えておき、生まれてきた後に消費します。
生まれた後の赤ちゃんのためにも、妊娠中のお母さんの鉄が十分である必要があり、妊活中から鉄分の補給は必要不可欠です。
薬は内服薬と注射がありますが、通常は鉄剤の内服から始めます。
鉄剤が体に合わなかったり期待した効果が出なかったりした場合は鉄剤の注射を行います。
貧血の改善には、鉄を毎日の食事から摂ることも重要です。
鉄にはホウレン草や小松菜、大豆などの植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄と、肉類やマグロ、カツオ、あさりなどの動物性食品に多く含まれるヘム鉄があります。
ヘム鉄の方が体への吸収率がよいですが、非ヘム鉄もビタミンCやクエン酸と一緒に摂ったり肉や魚、牛乳などと一緒に摂ったりすることで吸収率がアップします。
反対に、コーヒーや紅茶、緑茶などタンニンを含むものは、非ヘム鉄の吸収を妨げる作用があるので注意が必要です。
また、鉄が多い食品ばかり摂っていると栄養が偏ってしまいます。
鉄の摂取を意識しながら栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
《 監修 》
丸山 真理子(まるやま まりこ)産婦人科専門医
EASE女性のクリニック院長。
産婦人科専門医として子宮がん・乳がん検診のほかプレコンセプションケア、妊活、妊娠、子育てと全てのライフステージの女性診療に携わる。イーズファミリークリニック本八幡・病児・病後児保育室室長、EASE English Montessori School、日本女性財団プラットフォーム委員会委員長としても精力的に活動中。
▶HP https://ease-clinic.jp/ EASE女性のクリニック
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