2023.12.22
1. 白血病 とはこんな病気
2. 白血病 の原因と症状
3. 白血病 の検査でわかること
4. 白血病 の治療法
5. 白血病 のホームケア
白血病は、この血液を作る過程で異常が起こり、血球ががん化した細胞(白血病細胞)となって、無制限に増える(増殖)ことで起こる病気です 1) 。
白血病細胞は、増殖し続けるので、白血病になると正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が減ってしまいます 2) 。
治療しないと命にかかわる病気ですが、最近の治療方法の進歩で、治癒(ちゆ)が望める病気になってきています。
小児期に起こるがんの中で最も多いのが白血病です。
日本では、1年間におよそ1000人の小児が白血病にかかっています 2) 。
小児の白血病のおよそ70%は急性リンパ性白血病(ALL)で、およそ25%は急性骨髄性白血病(AML)です。
その他に慢性骨髄性白血病(CML)などがありますが、子どもではまれです 1,3) 。
原因と考えられる血液細胞の遺伝子の異常がいくつか見つかっていますが、遺伝する病気ではありません。
まれに、放射線治療や抗がん剤治療による二次がんとして白血病を発症することがあります 3) 。
白血病では、様々な症状がみられます。
赤血球が不足することにより、貧血、息切れ、動悸(ドキドキする)が起こります。
白血球が不足することにより、感染症にかかりやすくなり、発熱することが多くなります。
血小板が不足することにより、皮膚にあざができやすくなる、歯ぐきや鼻の粘膜から出血してなかなか止まらなくなるなどがみられます(表1) 3,4) 。
表1 白血病で不足する血液細胞とみられる症状 3,4)
血液細胞の種類 | 働き | 不足するとみられる症状 |
---|---|---|
赤血球 | からだ中に酸素を送り届け、二酸化炭素を肺に持ち帰る | 貧血:顔色が悪い、疲れやすくてだるそうにする、息切れ、動悸(ドキドキする) |
白血球 | 病原体(ウイルス、細菌、カビ)などと戦い感染症を防ぐ | 感染症にかかりやすくなり、発熱することが多くなる |
血小板 | けがなどの出血を止める | 皮膚にあざができやすくなる、歯ぐきや鼻の粘膜から出血してなかなか止まらなくなる |
このほか、骨髄の中に役に立たない白血病細胞がたまり、手足などの骨や関節が痛む4) 、肝臓や脾臓で白血病細胞が増殖してたまり、肝臓や脾臓が腫れる、脳や脊髄で白血病細胞が増殖してたまり、頭痛や吐き気、嘔吐(おうと)する、などの症状が出ることがあります 1) 。
検査は診断の目的だけでなく、白血病の種類の確認、骨髄以外の臓器への広がり、合併症の有無の確認、治療効果の確認のためにも行われます(表2) 1) 。
(1) 血液検査では、血液中の細胞(赤血球、白血球、血小板)の増減を調べます。
血液を顕微鏡で詳しく調べ、血液中の白血病細胞を見つけます。
(2) 骨髄検査では、骨髄穿刺 〔こつずいせんし:腰の骨(腸骨:ちょうこつ)に細い針を刺し、骨の中にある脊髄液を注射器で吸引して採取する〕 で採取した脊髄液を調べ、診断と白血病の分類に役立てます。
(3) 染色体検査・遺伝子検査では、染色体や遺伝子の構造や数の異常を調べ、白血病の分類、治療方針の決定などに役立てます。
(4) 超音波(エコー)検査・CT検査では、臓器の異常や合併症の有無、浸潤が疑われる部位を調べます。
表2 白血病で行われる主な検査 1)
検査の種類 | どんな検査? |
---|---|
血液検査 | 血液細胞の増減を調べる。赤血球数や血小板数は減少していることが多い。白血球数は増加している場合や減少している場合など様々 |
骨髄検査 | 腰の骨(腸骨)に針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引(骨髄穿刺:こつずいせんし)して採取し検査する。白血病の診断と分類を行う。治療効果の判定にも用いる。 |
染色体検査 遺伝子検査 |
染色体や遺伝子の構造や数の異常を調べる。白血病の分類、治療方針の決定などに役立てる。 |
超音波(エコー)検査 CT検査 |
臓器の異常や合併症の有無、浸潤が疑われる部位を調べる。 |
化学療法のほかには、貧血や血小板の減少に対する輸血や感染症に対する抗菌薬(抗生物質)治療のような補助療法が行われます。
さらに、特殊な治療方法として、治療が困難な場合や再発した場合に同種造血幹細胞移植(どうしゅぞうけつかんさいぼういしょく)が行われます 3) 。
表3 急性リンパ性白血病(ALL)と急性骨髄性白血病(AML)の基本的な治療方法4,5)
治療法 | どんな治療方法? |
---|---|
寛解導入療法 (かんかいどうにゅうりょうほう) |
抗がん剤により、白血病細胞の減少と症状の軽減を目的に行う。 |
強化療法 (きょうかりょうほう) |
寛解導入療法の終了直後から、抗がん剤にを用いて、さらに白血病細胞を減少させることを目的に行う。 |
維持療法 (いじりょうほう) |
強化療法に続いて、抗がん剤を用いて、白血病細胞の根絶と再発予防を目的に行う。 |
造血幹細胞移植 (ぞうけつかんさいぼういしょく) |
染色体検査で、予後の悪い染色体異常や遺伝子異常がある場合や、初期の治療反応が不良の場合には、同種造血幹細胞移植を行うことがある。 |
(1) 「風邪のような症状が治らない」「顔色が悪い」「いつもと様子が違う」などと感じたら、まず、病院や医院で医師に相談しましょう。
(2) 治療終了後も、体調の変化や再発、合併症の有無、成長に異常がないかなどの確認のため、定期的に通院して経過観察を行います。
(3) 治療終了後の生活の中の一般的な行動が再発に影響することはありません。
体力面で問題がない範囲で普通の生活に戻れます。
ただ、長い入院生活で筋力が落ちていることが多いので、通学や通園を再開する時には、短い時間から徐々に慣らしていくとよいでしょう。
(4) 治療後も免疫力が落ちていることが多いので、学校などで水ぼうそう(水痘)やはしか(麻疹)が流行した場合には主治医の先生にご相談ください。
(5) 姉妹や兄弟がいる場合、病気のお子さん以外にも配慮が必要になります。
どうしても病気のお子さんに注意が集中してしまいますが、それを見た姉妹や兄弟のお子さんは「病気の子は自分たちより大切にされている」などと、マイナスの感情を持ってしまうことがあります。
お子さんが理解できる年齢であれば、できるだけ病気のことを説明し、病気のお子さんががんばっていることを伝えると、マイナスの感情をやわらげることができます。
(6) 国立成育医療研究センターでは、小児がんのお子さんのご家族の相談窓口として「小児がん医療相談ホットライン」を設けています。
相談にあたるのは、経験豊富な看護師ですが、医師が対応することもあります。
診断や治療について詳しく知りたい、主治医から説明を受けたが内容が難しくて十分に理解できない、などの疑問をお持ちの際には一度相談されてはいかがでしょう。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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