2020.03.09
そのため、複数の胚がある場合は移植せずに、余った胚は凍結して保存します。
妊娠しなかった場合には、次の治療として、適切な時期に胚を融解して子宮に戻していきます。
妊娠した場合は、凍結胚はそのまま凍結保存して、2人目以降の治療に用いることができます。
また、採卵に向けて排卵誘発剤を用いますが、その副作用で卵巣が腫れて、採卵した周期に胚移植ができないケースがあります。
その場合、胚移植は行わずにすべての胚をいったん凍結保存し、体の状態が回復したら、1個ずつ凍結胚移植を行います。
最近では、クリニックの治療方針として、最初から全ての胚を凍結する場合もあります。
しかし、現在では凍結胚融解の技術が向上し、凍結して融解した場合、9割以上の確率で元の状態に戻ります。
凍結胚移植は、以前に採卵し凍結しておいた胚を融解して、適切な時期に移植します。
凍結胚移植には、2つの方法があります。
■自然周期での胚移植
自然の月経周期を利用して移植します。
排卵数日前から採血や超音波で排卵日を厳密に確認し、時期を合わせて凍結胚を融解して、移植する方法です。
凍結胚が初期胚であれば排卵後2〜3日目に、凍結胚が胚盤胞であれば排卵後5〜6日目に移植します。
■ホルモン補充(HR)周期での胚移植
薬を使って子宮内膜を厚くして、人工的に排卵後の状態を作って、胚移植する方法です。
月経開始からホルモン剤を服用し、子宮内膜を厚くしていきます。自分の排卵は抑制されます。
十分に厚くなったら、黄体ホルモンを投与します。
凍結胚が初期胚であれば黄体ホルモン投与後2〜3日目に、凍結胚が胚盤胞であれば黄体ホルモン投与後5〜6日目に移植します。
妊娠反応が出た後も、妊娠7〜9週までホルモン補充は継続します。
胚(受精卵)は凍結保護剤を使って細胞が壊れないように処置され、マイナス196度の液体窒素のタンクの中で保管されます。
技術的には、半永久的に保存できるといえます。
しかし、不妊治療で胚凍結をするのは妊娠・出産が目的ですから、それに適応した年齢までの凍結保存が基本となります。
また、出産してからの育児期間や子どもが成人するまでの期間を考慮し、凍結保存の期間も含めて、不妊治療をどうするか考える必要があるでしょう。
凍結胚の保存期間中は凍結保存料金がかかります。それぞれの病院で凍結更新の方法が決められていますので確認しましょう。
凍結胚移植は、体外受精・顕微授精などと共にART(生殖補助技術)の治療で、国が定める特定治療支援事業の対象になっています。
治療をした場合には、助成金の申請が可能です。
ただし、年齢や収入、回数などの条件があります。
また、自治体で独自の助成制度を設けている場合もあるので、治療をする場合は事前に確認しましょう。
[参考リンク]
厚生労働省:不妊に悩む方への特定治療支援事業
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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