2024.04.01
不妊治療を受けて子どもを授かりたいけれど、高額な費用は用意できない。
そんな多くのカップルの悩みを解消すべく、2022年4月より、先進医療など一部を除く不妊治療が保険適用になりました。
これまで経済的な問題で不妊治療を諦めていた方々も、選択肢が大きく広がる可能性があります。
今回は、そんな保険制度の変更をふまえ、不妊治療にかかる費用についてご紹介します。
具体的には、以下のすべての治療に保険が適用されます。
病院やクリニックでこれらの不妊治療を受けた場合、窓口で支払う自己負担額は治療費の3割に。
これまで費用の問題で治療を選択できずにいた方々も、受診のハードルが大きく下がることでしょう。
なお、以下に具体的な金額の目安を治療別にご紹介しているので、ぜひ受診にあたっての参考にしてください。
診療内容 | 3割負担の場合の自己負担額(2024年4月現在) | ||
一般不妊治療 | タイミング法 | 一般不妊治療管理料 | 750円 |
人工授精 | 人工授精 | 5,460円 | |
生殖補助医療 | 生殖補助医療管理料 | 750円〜 | |
採卵 | 採卵術 | 9,600円〜 | |
抗ミュラー管ホルモン | 1,800円 | ||
採精 | Y染色体微小欠失検査 | 11,310円 | |
精巣内精子採取術 | 37,200円〜 | ||
体外受精 | 体外受精 | 12,600円 | |
顕微授精 | 顕微授精 | 14,400円〜 | |
受精卵・胚培養 | 受精卵・胚培養管理料 | 13,500円〜 | |
胚凍結保存 | 胚凍結保存管理料 | 15,000円〜 | |
胚凍結保存維持管理料 | 10,500円 | ||
胚移植 | 新鮮胚移植 | 22,500円 | |
凍結・融解胚移植 | 36,000円 |
具体的な金額の違いについて、人工授精と体外受精(採卵と移植)を例に挙げながら詳しく見てみましょう。(2024年4月現在)
保険適用前の人工授精では、診察と検査、処方される薬の費用で約30,000円、人工授精の施術1回で約20,000円と、合計で50,000円前後となるのがおおよその目安でした。
しかし保険適用後は、診察と検査、薬にかかる費用が10,000円弱、人工授精の施術1回が6,000円弱にまで減少。
ここに1,000円弱の一般不妊管理料がかかり、合計で20,000円弱となります。
つまり、負担は30,000円前後も軽減されるのです。
体外受精は人工授精に比べて高度な治療が必要になり、さらに必要なステップも増えるため、合計金額も大幅にアップします。
体の状態などによって治療の細かな内容は変わりますが、保険適用前は、採卵と移植で70万円以上かかるケースが少なくありませんでした。
しかし保険適用後は、同様の治療内容でも20万円弱に抑えることも可能になります。
これだけ大幅に負担が軽減されれば、これまで治療に踏み切れなかった方が選択できたり、チャレンジできる回数が変わってきたりする可能性が高まるでしょう。
不妊の要因となる異常の有無をチェックするスクリーニング検査以外は、基本的に保険適用となりました。
これまでは自費治療だったED治療や無精子症に対する染色体検査、さらには治療費が比較的高額な精巣内精子回収術などにも保険が適用されます。
治療開始時の女性の年齢が43歳未満でないと、保険は適用されません。
また、体外受精・顕微授精については、初めて治療を開始した時点で女性の年齢が40歳未満であれば1子ごとに通算6回、40歳以上43歳未満であれば1子ごとに通算3回までという回数制限も設けられています。
保険診療と自費診療を組み合わせる「混合診療」はできません。保険適用外の薬剤を1種類でも使用した場合、そのほかの治療もすべて自費で受けることになります。
そのため、使用できる薬剤や医療材料がどうしても限定的になるでしょう。
ただし、子宮内膜受容能検査や子宮内膜擦過術、タイムラプス培養をはじめとした国が定める「先進医療」に分類される治療(保険適用外)については、その分の費用を自身で負担すれば保険診療と並行して受けることが可能です。
また、先進医療の費用は自治体による助成を受けられる可能性もあるため、選択するにあたってはぜひ確認してみてください。
必ず「男女そろって」受診し、医師からの説明を受ける必要があります。
女性だけが通院し、男性が一度も受診しないパターンは、基本的に保険が適用されません。
高額療養費制度とは、医療費の家計負担に配慮し、1ヶ月あたりの医療機関や薬局の窓口で支払う医療費に上限を設ける制度です。
上限額を超えた分の費用は、加入している健康保険組合が支払ってくれます。
高額療養費制度保険診療にのみ適用されるため、これまで不妊治療は対象外でした。
なお、「上限額=当人が負担する金額」は収入に応じて異なります。
以下の表とご自身の収入と照らし合わせて、上限額を確認しておいてください。
高額療養費制度の上限額(69歳以下) | |
収入 | 1か月の上限額(世帯ごと) |
年収約1,160万円〜 | 252,600円+(総医療費ー 842,000円)×1% |
年収約770〜1,160万円 | 167,400円+(総医療費ー 558,000円)×1% |
年収約370〜770万円 | 80,100円+(総医療費ー267,000円)×1% |
年収約370万円以下 | 57,600円 |
住民税非課税世帯 | 35,400円 |
(2024年4月現在)
ただし、医療機関で事実婚に関する確認がある場合があるので、書類の提出など、指示に従って対応してください。
また、助成金の利用実績も保険適用の可否には関係ないのでご安心ください。
なお、再開を見据えて一時的に治療を中断する場合は、胚の保存にも保険を適用できることがあります。
詳しくは医療機関にご相談ください。
《 監修 》
清水 なほみ(しみず なほみ) 産婦人科医
医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック 院長。
日本不妊カウンセリング学会 認定カウンセラー。すべての女性が「自分らしい輝きを取り戻す」場として、横浜に婦人科クリニックを開業。
婦人科医としての診療のみにとどまらず、漢方やコーチングなどの代替医療も総合的に活用し、患者さんの健康をサポートしている。
HP▶【http://www.vivalita.com/】
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