【Vol.03医師監修】子どもの 食物アレルギー 〜学校・幼・保育園面談で伝えること〜

2024.09.17

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【監修】神奈川県立こども医療センター医師 高増哲也

子どもにアレルギーがある場合、親の目を離れる学校や幼稚園・保育園での時間が気になりますよね。
 
子どもが安全に学校生活を楽しめるように、学校・幼稚園・保育園面談でどう伝えればいいのかを、神奈川県立こども医療センター医師 高増哲也先生に伺いました。

食物アレルギーとは?

人間にとって本来は敵ではない食物に対して、体を守る仕組みである免疫が働き、症状が起こることを食物アレルギーといいます。

これまでは原因となる食べ物を見つけて除去する考え方が主流でしたが、専門病院などでは、家庭の中で安全に食べられる条件の範囲内で摂取し体を慣らしていくという方法も広がっています。
この場合、摂取量などの微調整が必要ですので、医師の指導のもと基本は家庭内で行います。
 

学校・幼・保育園での食物アレルギーの対応は?

家庭ではアレルギーが起こる食物を微量食べられていても、保護者のいない学校や幼・保育園では安全が確保できないため、アレルギーの原因である食物を完全除去する対応が大原則となります。

学校など集団生活の場面では、個人ではなく組織で対応することが大事です。

食物アレルギーと診断された場合、通学前に準備することは?

まずはかかりつけ医に、ガイドラインに基づく生活管理指導表に記入してもらいましょう。

それを学校や幼・保育園に提出し面談を行います。
 

学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)令和元年度改訂:公益財団法人日本学校保健会
https://www.gakkohoken.jp/books/archives/232
※この生活管理指導表は医師が作成するものです。

 
生活管理指導表の中には「より厳しい除去が必要なもの」という項目があります。
その中には、
鶏卵:卵殻カルシウム
牛乳:乳糖・乳清焼成カルシウム
小麦:醤油・酢・味噌
大豆:大豆油・醤油・味噌
などがあります。
 
通常、卵殻カルシウムや乳糖でアレルギー反応は起こらないので、よほど重度でない限りチェックされることは少ないです。

但しこれらの項目は、製造の過程でコンタミ※が起こっている可能性があります。
そのため、微量であってもアレルギー反応が出る可能性がある場合に限り医師はチェックします。

 

※食品を製造・加工する際に微生物や異物、特定原材料などが意図せず混入することをコンタミネーション(コンタミ)といいます。

 

生活管理指導表は診断書ではありません。
学校で「この通りに対応する」という詳細を記入したものではなく、学校生活での留意点や配慮・管理が必要な点を示したものです。
具体的な対応については学校などに確認となります。

学校、幼・保育園面談で確認することは?

1.提出した生活管理指導表に基づき、除去すべき食物を伝えます。
2.誤食があった時や症状が出た時に、連絡してもらう方法を伝えます。
3.どこまで対応してくれるのか確認します。

 
できるだけ複雑・過剰な対応をしない方が安全を確保しやすいので、学校、幼・保育園全体での対処法の認識(リスクマネジメント)を確認しましょう。

子どもに自分のアレルギーを理解させることも大切

子ども本人に食物アレルギーを認識させておくことは大切なことです。

いつ話をするのか、どう話せばいいのか迷うことも多いと思います。

認識させるタイミングは何歳からというのは難しく、子どもの発達段階によって異なりますので、医師や看護師と相談しながら行ってください。
子どもには、まずアレルギーがあること、それを食べるとどういう症状が起こるかについて伝え、気をつけなければいけないと認識させることが基本です。

そしてその食物を食べないように注意する必要があることを教えます。
 
さらに一歩進める場合は、安全な条件の範囲内で食べることで、その食物に慣れさせることができることも伝えます。
その場合、家庭内だけで行うよう注意することも大事です。
さらに安全な範囲内で食べて慣れさせていく場合でも、無理に食べなくてもよいということをきちんと説明しましょう。
食べたくないのに無理に「食べないと治らないでしょ」と食べることを強要してはいけません。

高増Dr.コメント

例えば、小学校低学年の時に食べたくないと思っていても、学年が上がるにつれて「克服したい」という思いが出てくる子も多いです。
その場合に日常の食事をどうするかなどがあるので、どういう気持ちなのかを理解することが大事になります。
病院での診察の場面では、医師と親との会話が中心になり、子どもは他人ごとのように思ってしまうシチュエーションになりがち。できる限り子どもにも話しかけるようにしています。
保護者の方からもできるだけ診察時に子どもに話を振っていただいて、子どもが自分自身のことを理解していけるようになるといいですね。
食べることは毎日の楽しみのど真ん中!また社会のつながりを深めることでもあります。子どもが食べる楽しみを失わないように、周りの大人でフォローしていきたいですね。

 
 

《 監修 》

  • 高増 哲也(たかます てつや) アレルギー専門医

    神奈川県立こども医療センター 地域保健推進部長、アレルギー科医長、アレルギーセンター副センター長、栄養サポートチーム座長などを兼務し、特にこどものアレルギーの専門医として活躍中。
    アレルギー児サマーキャンプを主催し、医療スタッフやボランティア学生と一緒に、アレルギーを気にせず思いきりのびのび生活し、楽しみながらたくさんのことを学べる機会を提供しています。

    ■アレルギー児サマーキャンプ【https://allergycamp.com/
    ■神奈川県立こども医療センター 栄養サポートチーム【https://kcmc-nst.com/nst/
     
     
    取材協力:リリナグ株式会社
     

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