子どもの『 そばアレルギー 』について注意すべきことは?【執筆・監修:アレルギー専門医】

2024.07.22

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【執筆・監修】小島 令嗣(こじま れいじ) アレルギー専門医

皆さんはそば派でしょうか、うどん派でしょうか。

そばはアレルギーが怖いな、子どもに食べさせるのは不安、と感じる方も多いかもしれません。
今回の記事は、そばアレルギーの特徴や気をつけることをご紹介します。

そばアレルギーはよくあるアレルギー?

そばアレルギーに限定した研究は限られていますが、食物アレルギーに関する調査や研究では、“ そば ”は、原因食物としてあげられている食材の一つです。

そばアレルギーは幼児期の発症が多いとされています。


消費者庁の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査(2017年)によると、アレルギーの原因食物としての順位は9位である一方で、ショック発生率(ショック:血圧が低下し、意識がもうろうとする状態のこと)は高く、同調査では4位でした。
 
1998年に報告された小学生92,680人を対象としたそばアレルギーの調査では、そばアレルギーの割合は194人(0.22%)でした。
同調査において、卵と牛乳のアレルギーの割合はそれぞれ0.97%、0.50%でした。
この調査により、そばアレルギーは決して稀な疾患ではないことが明らかになりました。

そばアレルギーの特徴は?

そばアレルギーは、他の食物アレルギーと同様に皮膚、呼吸器、消化器の症状が出て、ショックなども起こします。

 
卵や牛乳のアレルギーと比べて、📖アナフィラキシー(複数の臓器にまたがるアレルギー症状)を起こしやすいのが特徴です。
また、そばアレルギーを発症すると耐性を獲得(食べても症状が出なくなること)することは少ないといわれていますが、一定数は耐性を獲得します。

そばアレルギーの検査は?

そばアレルギーの検査は、血液検査(IgE抗体検査)、皮膚検査(プリックテスト)、食物負荷試験があります。

 
そばアレルギーの診断の場合、血液検査よりも皮膚検査の方が診断精度は高いです。
最終的に食物負荷試験を行う必要がある場合もあります。
 
そばアレルギーを心配して、血液検査の結果のみでそばの除去をしている方もいらっしゃいますが、血液検査は診断精度が高くないため、そばを未摂取のまま「過剰な除去」となっていることがあります。
血液検査の結果だけで除去をしている場合は、お子さんが「現段階で食べられるか」自己判断せず、アレルギーを専門とする医師に相談した方がよいでしょう。

そばアレルギーは、そばが食べられるようになるのか?

国立相模原病院の研究報告(参考文献4)では、そばアレルギー疑いで食物負荷試験を受けた子ども419人を対象とした研究結果が報告されています。

 
血液検査のみでそばを除去していた子ども369人のうち、食物負荷試験で症状が出た子どもは30人(8.1%)でした。
また、以前にそばを食べて症状が出た子ども50人のうち、食物負荷試験で症状が出た子どもは14人(28.0%)でした。
 
つまり、血液検査のみで除去している子どもの9割以上が、結果的に過剰な除去をしていました。
ただ、食物負荷試験で症状が出た子ども44人のうち、24人(54.5%)にアナフィラキシー症状がありました。そばアレルギーでは強い症状が出やすいことが分かります。

 

一方で、以前アナフィラキシー症状があった子どもでは、12人中8人(66.7%)が食物負荷試験で無症状でした。よって、そばアレルギーであっても、一定数の子どもは食べられるようになることが確認されました。

そばアレルギーで気をつけることは?

そばアレルギーで気をつけることは、検査のところでお話ししたように「過剰な除去」になっていないかということと、意外な場面にある「そば」の存在です。

 
代表的なそばである「二八そば」は、そば粉8に対してつなぎとして小麦粉が2含まれています。
そのため、そばアレルギーがなくても小麦アレルギーがあると二八そばで反応が出ます。
 

💡そばアレルギーがある場合は、食品の原材料表示を確認する以外に、そば殻枕、そば打ち体験、そばも提供するうどん屋などにも注意をしてください。

そばアレルギーがあると、そば殻枕を使用することや、そば打ち体験の近くにいることでそば粉を吸入し、喘息症状が出ることがあります。
また、「うどん屋」であっても同じ釜で「うどん」と「そば」を湯がくことがあり、そばが混入することがありますので注意が必要です。

『参考資料』

1) 一般社団法人日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン2021. 協和企画, 2021
2) 今井孝成ら. 消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」平成29(2017)年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告. アレルギー 2020;69(8):701-705
3) 高橋由利子. 横浜市の小学生9万人を対象としたそばアレルギー罹患率調査. アレルギー 1998;47(1):26-33
4) Yanagida N et al.Reactions of Buckwheat-Hypersensitive Patients during Oral Food Challenge Are Rare, but Often Anaphylactic. Int Arch Allergy Immunol 2017;172:116-122

《執筆・監修》

  • 小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医

    防衛医科大学校卒業。
    山梨大学大学院 総合研究部医学域
    小児科専門医・アレルギー専門医・社会医学系指導医
    専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健
     
     

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