【医師監修】不妊治療における「 先進医療 」とは? 内容や相場のまとめ(2024年版)

2024.10.18

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監修:レディースクリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓先生

不妊治療の中には「先進医療」と呼ばれる高度な治療があり、必要に応じて保険診療と組み合わせて受けることで、妊娠の可能性を高めることが期待できます。

 

今回はそんな先進医療について、具体的な内容や費用、選択する際の注意点などをご紹介します。
※2024年9月時点での最新情報をまとめています。

不妊治療における「先進医療」とは?

先進医療とは、厚生労働省が定める「高度な医療技術を用いた治療法」のうち、一定水準の有効性と安全性が認められたものです。

 

先進医療に分類されている治療はすべて自由診療なので、治療費は全額自己負担となります。
ただし、先進医療は保険診療との併用が可能です。
通常、自由診療と保険診療を併用する「混合診療」は認められていませんが、先進医療は例外となります。
つまり、保険診療と先進医療を併用した場合、患者が負担する治療費は「保険診療の3割+先進医療の10割」です。
なお、保険診療+先進医療に「先進医療でない自由診療」を組み合わせた場合は、保険診療を含めたすべての治療費が10割負担となってしまうため、注意してください。

先進医療の具体的な内容

先進医療は、科学的根拠に基づく評価に応じて、「先進医療A」と「先進医療B」の2つに分けられています。

 

先進医療Aには、より評価が高く、今後保険診療に移行する可能性が高い治療が分類されます。
先進医療Bは、Aに比べると評価や保険適用になる可能性が低い治療です。

先進医療AとB、それぞれの具体的な治療の内容と相場を見ていきましょう。
※相場はあくまでも目安です。クリニックによって費用が異なるため、必ず事前に確認してください。

<先進医療A>
・ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI法)

DNA損傷が少ない成熟した精子には、ヒアルロン酸と結合する性質があります。
この性質を活かし、ヒアルロン酸を使って精子を選別することで、顕微授精の成功率の向上を目指す技術です。
相場:30,000円前後

 

・タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

胚の成育状態を培養器から出さずに観察する技術です。
培養器から出すことで胚にストレスを与えるリスクを除去できます。
相場:30,000円前後

 

・子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE法)

子宮内の常在細菌の種類や量、子宮内膜炎の原因になる細菌の有無を調べる検査です。
子宮内フローラを改善し、妊娠しやすい体をつくることを目指して行います。
相場:45,000〜90,000円

 

・子宮内膜受容能検査(ERA法)

胚の適切な移植タイミングを見極めるため、子宮内膜の状態を調べる検査です。
相場:150,000円前後

 

・子宮内膜受容能検査(ERPeak法)

検査の手法は異なりますが、ERA法と同じく子宮内膜の状態を調べます。
ERPeakのほうがより精度が高く、再検査が必要になる確率も低いとされています。
相場:130,000円前後

 

・子宮内膜刺激法(SEET法)

受精卵の培養の際に得られる「胚培養液」を胚移植の数日前に子宮に注入し、より着床しやすい状態をつくる技術です。
相場:30,000円前後

 

・子宮内膜擦過術(内膜スクラッチ法)

胚移植に先立って子宮内膜に小さな傷をつけます。
すると、傷を修復するために「サイトカイン」という物質が分泌され、これが着床率の向上に寄与します。
相場:10,000円前後

 

・強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別法(IMSI法)

通常の顕微授精に用いられる顕微鏡よりも高倍率の強拡大顕微鏡を使い、より精密に質のいい精子を選別する技術です。
相場:20,000円前後(個数によって金額が変わるクリニックも多数)

 

・子宮内フローラ検査

腟や子宮内の環境を整える「ラクトバチルス属菌」の割合を調べる検査です。
相場:40,000〜50,000円

 

・二段階胚移植

良好な状態の胚を移植しても妊娠しなかった方に対して用いられる技術で、同じ月経周期内に胚を2回移植します。
具体的には、最初に初期胚(採卵から2〜3日培養した胚)を移植し、子宮内膜を着床しやすい状態にしてから、追って胚盤胞(採卵から5〜6日培養した胚)を移植します。
ただし、多胎児になるリスクもあります。
相場:新鮮胚の場合は75,000円前後、凍結融解胚の場合は120,000円前後

 

 

<先進医療B>
・不妊症患者に対するタクロリムス投与療法

免疫の異常が原因で不妊症を発症している場合に選択される治療方法で、「タクロリムス」という免疫抑制の薬を投与します。
費用:一日2mgの投与で17,920 円、5mgの投与で 35,840 円。

先進医療Bとして審議中の治療法

胚の染色体や遺伝子の以上を着床前に診断する「着床胚異数性検査」は、先進医療Bへの分類が検討されています。
このように、先進医療A、Bの内容は今後も変更される可能性があるため、こまめに情報をチェックしてください。

不妊治療の先進医療に関するよくあるQ&A

Q1 先進医療を受けるにはどんな手続きが必要?

手続きは不要です。

医師が必要と判断し、患者が内容と費用に合意できれば治療を受けられます。

Q2 先進医療はどこの病院でも受けられる?

病院によって扱っている先進医療の種類に違いがあります。

治療ごとの対応施設は厚生労働省のHPで確認できます。

 

Q3 先進医療に対する助成金はある?

多くの自治体で助成金の支給を行っています。

条件は各自治体によって異なるため、お住まいの地域の窓口に問い合わせてください。

《 監修 》

  • 叶谷 愛弓(かなたに あゆみ)産婦人科医

    レディースクリニックなみなみ 院長/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
    こども病院や総合周産期センター、大学病院など複数の病院での勤務を経て、レディースクリニックなみなみの院長に就任。女性が自身の体調や人生の「なみ」を受け入れるためのサポートを行う、「女性の味方」になるクリニックを目指している。
     
     
    HP:https://naminamicl.jp/
     

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