アンバサダー対談vol.4「助産師に聞いた、出産・分娩のリアル」
助産師に聞いた、出産・分娩のリアル
*アンバサダー対談インタビュー第四回目*
――今回は、濵脇先生の専門分野である出産や分娩に関してお伺いしたいと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
濵脇
お産の始まりっていつから?助産師さんのサポートはいつごろから?
濵脇
お産の始まりは基本的に2つのパターンがあります。
1つ目は、陣痛から起こる場合です。赤ちゃんを産むための準備が始まり、子宮が収縮して赤ちゃんが下に降りてくることで出産が始まります。
2つ目は、
破水から始まる場合です。おなかの中の赤ちゃんは薄い膜でつつまれていて、その膜の中は羊水で満たされています。この膜が破れることを
破水といい、
破水することで赤ちゃんが外に出てくる準備が進んでいきます。
破水時の刺激が陣痛の引き金になることもあります。
この2つがよくあるお産の始まりです。
(※必ずしもすべての人に当てはまるわけではありません。個別のケースによって異なることもあります)
――陣痛から始まる方と、破水から始まる方がいるのですね。陣痛が起こるタイミングに目安はありますか?
濵脇
ホルモンの変化によって起こるため、予定日に必ず陣痛が起こるということではありません。
陣痛の始まりは痛みが不規則です。痛みの波が来て、引いて、を繰り返して、段々とその痛みの間隔が短くなります。本陣痛の基準は、“規則的に”痛みの波がくるということですね。本陣痛が始まった時点から助産師のサポートが始まります。
陣痛があっても、帰宅することも?なぜいったん自宅に帰る?
濵脇
初産の場合、陣痛~出産するまで 12~16時間はかかるケースが多いです。
陣痛を感じて来院された際は、まずは診察をします。子宮の入口の開き具合や、成熟しているかどうか(子宮の入り口の柔らかさ、子宮がお産できる状態かどうかなど)を確認して、出産にどれくらい時間がかかるか予測を立てます。
そこで、出産まで時間がかかると判断した際は、いったん家に帰ってもらうことはあります。
病院は日常とは違う空間なので緊張する場所でもありますよね。
お産においてリラックスすることはすごく大事なことなので、家でくつろいだり、お風呂に入ってもらったりしてお母さんにゆっくりしてもらう意図もあります。
もちろん、陣痛が始まっていることも把握していますので、先ほどより陣痛が強くなってきていませんか?など、定期的に確認を取りながら様子を見ています。
――いったん家に帰る時はそのような理由なのですね。
濵脇
はい。
しかし、
破水をしている場合はそのまま入院いただく場合が多いです。
破水をすると、感染症になる恐れもあり、薬を使うなどの対応が必要な場合も出てくるため、陣痛が起こっていない場合でも病院に来ていただいています。
病院では、定期的にモニターをつけ、観察をするなどの対応をします。
助産師さんからみて、出産時の楽な体勢はあるのか?
――少し進んで、分娩に関して教えてください。分娩は痛みとの戦いですよね。
濵脇先生はいろいろな分娩介助をご経験されたと伺っておりますが、 “産みやすい体勢”はありますか?
濵脇
総合病院、クリニック、助産院などで勤務経験があり、いろいろな産み方も見てきました。
病院で出産する場合は、仰臥位(ぎょうがい/上を向いて寝ている状態)や、少し体を起こして半坐位になり、分娩台の上で産むことが多いですよね。助産院での出産の場合は分娩台がありません。助産師が自宅に訪問し、居間やソファーで出産することもあります。
出産=分娩台の上で産むイメージが強いかと思いますが、分娩台がなくても出産はできます。フリースタイル分娩では、自由に身体を動かし、横向きや四つん這いなど自分の産みやすい体勢を取って出産します。
――横向きや四つん這いだと産みやすいのですか?
濵脇
赤ちゃんって排便のそばの穴から出てくるわけですよ。
寝たまま排便ってやりにくいのはイメージできますか?
しゃがむような体勢は重力の力を借りられるので力が入れやすいです。動物と一緒で、あの姿勢は産みやすいとされています。
――たしかに、しゃがむような姿勢だと産みやすそうです。
濵脇
また、出産時の子宮は、赤ちゃんが中に入っているのですごく重たいです。
仰向けで寝た場合に、おなかの中にある腹部大動脈が圧迫されて血流が悪くなり、赤ちゃんにうまく血液や酸素が届かず、心音が落ちることがあります。
横向きや四つん這いは血流の良い姿勢とされていますので、心音が落ちてきた場合にはまず体を横向きにし、腹部大動脈の圧迫を取ってあげると心拍が戻ってきたりします。
――身体の向きも重要なのですね。
濵脇
はい。分娩台の上で出産される場合は、なかなか力が入りにくいので、できる範囲で楽な体勢を探してみてください。
なお、分娩台を使用すると、医療者側からは様子が見えやすいため、何かあった時も処置がしやすいというメリットもあります。
分娩台で出産される場合は側座位、横を向いたりすると血流にはよいです。
ちなみに、横向きや座位、四つん這いだと、いきむ力は必要なく産めます。
会陰のところに赤ちゃんの頭が押してくると、アウエルバッハ神経叢(しんけいそう)というのが刺激されて自然に腹圧がかかるようになっています。それにより押し出されるというメカニズムになっています。
――なるほど。いきまなくても、自然に出てくるイメージですね。
濵脇
出産のその自然のメカニズムを、妊婦自身がしてみたいと思う姿勢で分娩できることが
フリースタイル分娩のポイントですかね。分娩については仰臥位だけではなく、妊婦さんの状態に合わせた方法があるということはお伝えしたいです。
赤ちゃんのへその緒が絡まったときはどんな対応をしているの?出産後の処置はどこから医師へバトンタッチしている?
《 監修 》
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濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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