2025.02.14
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少なくない妊婦さんが、じっとしていられない、眠れないなどの症状に悩まされていたのです。
まれに、腕や上半身にも症状が現れることもあります。
これらの症状は、座っていたり横になっていたりするとき(安静時)に現れるのが特徴で、脚を動かすと一時的に改善します。
しかし、動かないでいるとまた不快感が戻ってくるため、患者さんは、じっとしたり動いたりを繰り返すことになります。
この病気は、夕方から深夜にかけて症状が起こることがほとんどで、寝付けない、夜中に目が覚める、眠りが浅い、日中に眠いなど睡眠障害の原因になりやすく、日常生活にも影響が出る恐れがあります。
一般的に、むずむず脚症候群の診断は問診や自覚症状に関する質問票を用いて行います。
場合によっては、血液検査をしたり睡眠時の四肢の動きを検査したりすることもあります。
診断の際に、必須の基準となるのは次の4点です。
かつては、運動不足のせいだとか、気にし過ぎるのがよくないとか言われていたこともあり、日常生活をきちんとすれば治ると指導されていたこともあったようです。
その後の研究で、脳の神経伝達物質であるドーパミン(ドパミン)がうまく働かないこと、ドーパミンをつくるのに必要な鉄分の不足などが原因ではないかと考えられるようになりました。
また、喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣や肥満、加齢、遺伝なども影響しているといわれています。
他の病気に関連して起こるケースもあり、鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)や慢性腎不全(まんせいじんふぜん)、慢性関節(まんせいかんせつ)リウマチ、パーキンソン病などの病気の場合は発症しやすいとされています。
妊娠は病気ではありませんが原因の1つとされており、妊娠していない人に比べると2~3倍の発症率だというデータもあります。
一般に妊婦さんは鉄欠乏性貧血になりやすく、妊娠中のむずむず脚症候群の発症には赤血球をつくるための鉄分不足が関連しているのではないかと考えられています。
他にはやはり赤血球をつくるのに大切なビタミンDの欠乏も関与していると考えられています。
しかし、妊娠中ですので、精神に影響を与える薬は可能な限り避けたいところです。
そこで、日常診療でむずむず脚症候群が疑われる妊婦さんが受診された場合、とりあえず貧血の検査や腎機能の検査をした上で鉄剤の処方をすることが多いです。
実際、鉄剤やビタミン剤の投与で改善するケースも少なくありません。
妊娠中は、ただでさえ眠気やだるさを感じやすくなっています。
そこにむずむず脚症候群の症状が加わると、睡眠不足から体調が悪くなったりストレスがたまったりすることがあるので、放置しないことが大事です。
症状が軽い場合は、次のように生活習慣を見直したり運動したりすることで症状を軽減することができるので、取り組んでみましょう。
生活習慣を見直しても不快な症状が続く場合は他の病気が隠れていることを疑います。
ちょっと眠れないだけと簡単に思わずに、まずはかかりつけの産婦人科に相談してください。
ケースによっては他科の病院を受診していただくこともあるかもしれません。
なお、妊娠前からむずむず脚症候群を発症して治療を受けている場合は、妊娠後にドーパミン作動薬が処方されることがないように、妊娠の可能性についてあらかじめ医師に伝えておきましょう。
《 監修 》
井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医
よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。
▶HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科