2024.07.29
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――乳幼児の子育てをしていらっしゃるパパママは慣れない中、いろんな環境で赤ちゃんのお世話をしている方も多いと思います。
最初は子どもを産んだ喜びで日常を乗り切っていても、途中でガクッとメンタルが落ち込んでしまうことがあると伺いました。
今回は産後のメンタルケアに関してのお話を伺えればと思っています。
――助産師の経験やヴィタリテハウス(産前産後ケアセンター)でのご活躍を通じて、様々な方々と接していらっしゃると思うのですが、メンタルの不調を感じ取るタイミングなどはあるのでしょうか?
産後はホルモンのバランスが急激に変動し、笑っていたと思ったら突然泣き出すなど、一気に気分が落ち込むことがあります。
このホルモンの影響が結構フューチャーされていましたが、これだけが原因になるというわけではありません。
身体的な疲労が大きな要因となります。
産後うつはホルモンの影響だけで急に発症するのではなく、疲労が蓄積された状態から徐々に現れます。
前提として、産後は身体的に非常に疲れていて、ほとんどの方が睡眠不足になります。
妊娠中は自分の体に子どもが収まっているので、身一つで、おなかが大きいながらも仕事や家事をこなしていたかもしれません。
それを、産後は子どもがいる状態(おなかから出てきた状態)で、“万全でない体調の中、自分の生活をしながら子どものお世話をする”という生活にシフトしていく必要があります。
――大きな変化ですね。
――疲労に、睡眠不足、慣れない子育てですからね。
最初のフェーズの、痛みや悲しみなど、ネガティブな感情や身体の不調を表現できることは健全なことです。笑っていなかったらみんな鬱だというわけではありませんが、心の疲労が進むと表情に表れてきます。
人によっては、ずっとヘドロの海にいるような感じと表現する方もいます。
なので、そうなる前に、家族ができることは「本当に休ませる」です。
休息やリラックスができる環境を整えます。
自分が面倒を見なければ…と切羽詰まってしまっていた場合、無理矢理にでも寝るとか休むという環境をぜひ作ってほしいですね。
これが非常に重要です。
――周りにいる人に体調を伝えるのも重要になりそうですね。
――本当のことを書かないですか?
――お母さんが育児の中心となるケースが多いので、お母さん目線の話をさせていただくのですが、
家で旦那さんが赤ちゃんをみているから休んでおいでとサポートしてくれるケースもあるかと思います。
でも、結局気になって寝れなかったという方もいらっしゃいます。
そのような場合はどうすればよいのでしょうか?
ケアセンターでもよくありますよ。
夜預かってくださいと頼んできても、やはり気になって眠れず見に来るお母さんもいます。
その場合、私たちはお母さんが疲れないようにしたいので、気になって眠れないなら一緒にいていいけど、オムツ交換とか、着替えの準備とかも私たちがやるから、赤ちゃんと一緒にいても本当におっぱいあげるだけとかにしましょうねってお話をします。
海外のお話をすると、諸外国、特に欧米は大人中心の社会なんですよ。
西洋の文化では、例えば、夜にパーティーに行くために子どもを預けたりすることがあります。
しかし、これは子どもに対する愛情がないという意味ではなく、子どもも大切だけれども、自分たちの大人の時間も大切にするという考え方があるということです。
日本では子育てが優先される傾向があります。
――そのような文化の違いがあるのですね。
私はそう思ってしまう人に伝えたいのは、「子どものために預けてみませんか」ということですね。
預けて体力を回復している間に、子どもが他の人々と触れ合うことは、発達や人間性の形成にとっても財産になると思います。
ママたちもそういう風に感じてもらえるとよいですね。
――なるほど。ありがとうございます。
――いえ、とても参考になります。最後に、赤ちゃんを預けるのは不安、離れるのが不安と感じ、困ってしまっている方に対して先生からアドバイスなどがあればお願いします。
手放せないと感じたり、離れられないと感じたり、そういう自分がダメという話ではないです。
どんなに頼ってほしいと周りがいっても、本人が納得しないと頼ることは難しいですよね。
でも、そんな時、本当に体調が悪い状態だからこそ、一度“預ける”を挑戦してみる。
ちょっと預けてみる。5分後やっぱり信用できないから赤ちゃんを返してもらう。
でもやっぱり体調が悪いので今度は10分預けてみる。
10分経ったらすぐに赤ちゃんを返してもらう、といったように挑戦を繰り返していると、途中で気付けることがあると思うんですよ。
預けてみたら、少し腰が楽になったとか、離れているとやさしい気持ちで子どもにも接していくことができるとか。人って頼っていいんだっていうのを体で学習していくイメージです。
ダメって思ったら、すぐやめればいいんですよ。
そうやって、今までの自分のやり方とか、価値観をちょこっとずつ手放していくと、実は案外休息の時間が取れるようになってきたりします。
――少しずつ挑戦するのですね。
――体が少しずつ慣れていくんですね。
ありがとうございます。大変参考になりました。
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《 監修 》
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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