2024.04.09
通常、妊婦健診で行われている超音波検査は、対象物を平面で捉える2Dエコーです。
超音波写真では骨のように硬いものは白く、脂肪などは灰色に、羊水などの液体は黒く映ります。
写真右の中央にある白く縁取られた楕円が胎嚢で、写真左がその拡大図です。
胎嚢の中にほぼ正円の卵黄嚢(らんおうのう)がありここから赤ちゃんに栄養を送ります。
卵黄嚢に接する3.5mmの塊が胎児(胎芽)です。
写真では分かりませんが、胎芽の中央が点滅して胎児心拍が確認できます。
胎芽の大きさは10.2mmで、1週間で約3倍に成長しています。
前回はただの塊でしたが、10mmを超えると頭などの区別がつくようになってきます。
胎芽は頭や手足が判別できるようになり、胎児といっても差し支えないでしょう。
頭からお尻までの長さ(頭殿長)の計測が21.2mmで、この頃の頭殿長を基準にして出産予定日を修正します。
頭殿長は2週間前の2倍以上になっています。
顔の輪郭が分かりますし、角度を変えれば脊柱がまっすぐ並んでいることも確認できます。
NT(Nuchal Translucency=首の後ろのむくみ)を確認する場合は、この時期が適切です。
ただし、NTを確認するかどうかは施設によって異なります。
これまでは経腟超音波で見ていましたが、この頃からは経腹超音波を使った検査になります。背骨が発達し、筋肉もついてくる時期です。
手や足を動かしているのが見えることもあります。
性別が分かることもありますが、妊娠20週くらいまでははっきりしないことが多いです。
早い人だと胎動を感じられる頃です。
推定体重を計算するために頭の横幅(BPD=児頭大横径)と太ももの骨の長さ(FL=大腿骨長)を計測しています。
心臓を中心とした胎児スクリーニング検査はこのくらいの時期に行い、先天的な異常がないか確認します。
水頭症(すいとうしょう)や四肢短縮(ししたんしゅく)などがあれば発見が可能な時期です。
右側に頭、左側に体が映っています。
大動脈の走行が確認でき、胃の発達を示す胃泡(いほう)も見ることができます。
赤ちゃんの動きが活発になり、胎動を強く感じるようになります。
頭の横幅(BPD=児頭大横径)と太ももの骨の長さ(FL=大腿骨長)を計測しています。
右の写真は赤ちゃんの頭を上から見たものです。
視覚が発達してくるのでおなかの中でも明暗を感じるようなり、まばたきも始まります。
腹囲(AC=腹部周囲長)を計測しています。
この数値と頭の横幅(BPD=児頭大横径)、太ももの骨の長さ(FL=大腿骨長)の数値から推定体重を計算しています。
ほとんどの臓器が出来上がり、爪や髪も生えてきます。
頭の横幅(BPD=児頭大横径)と太ももの骨の長さ(FL=大腿骨長)を計測しています。
赤ちゃんは体が大きくなり頭位(頭を下にした姿勢)の赤ちゃんが多くなります。
聴覚が完成し、外の世界の音や声がしっかり聞こえるようになります。
腹囲(AC=腹部周囲長)を計測し、推定体重を計算しています。
この頃の赤ちゃんは、皮下脂肪が増えて全体にふっくらしてきます。
脂肪は超音波では灰色に映るため、赤ちゃんの顔は以前よりぼんやりとした感じに見えます。
頭の横幅(BPD=児頭大横径)と太ももの骨の長さ(FL=大腿骨長)を計測しています。子宮内では羊水の量が減ってきます。
赤ちゃんは腕や足を体にくっつけるような姿勢をして、頭を下にしてお母さんの骨盤の方に下降していきます。
最近は2Dエコーだけでなく、3Dエコーや4Dエコーもある産院も増えています。
3Dはおなかの赤ちゃんを立体的に見ることができ、4Dになるとさらに動く画像として鮮明に見ることができます。
ただし、赤ちゃんの骨や内臓の発育を確認するために適しているのは2Dエコーです。
2Dは慣れないと見方が難しいですが、写真で分からないことや疑問点があったら、医師に教えてもらうといいでしょう。
超音波写真は、ほとんどの産院で検査後にもらうことができます。
おなかの赤ちゃんの様子が見えることは、お母さんだけでなく、パートナーや家族にとってもうれしいものです。
超音波写真を共有して、一緒に赤ちゃんの成長を見守るツールとして活用できるといいですね。
《 監修 》
井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医
よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。
▶HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科