【Vol.04管理栄養士監修】子どもの 食物アレルギー 〜学校・幼・保育園面談で伝えること〜

2024.10.08

3

監修:管理栄養士、一般社団法人 日本小児臨床アレルギー学会認定 小児アレルギーエデュケーター 長谷川実穂

今回は学校や幼・保育園面談で子どものアレルギーについてどう伝えればいいのか、15年以上にわたり子どもの食物アレルギーの臨床に関わってきた管理栄養士であり、小児アレルギーエデュケーターでもある長谷川実穂さんにお話を伺いました。

面談の際、伝えた方がいいこととは?

2008年より「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」、2011年より「保育所におけるアレルギー疾患対応ガイドライン」がつくられ、2015年には文部科学省が給食対応に特化した「学校給食における食物アレルギー対応指針」を発行し、学校、園の教職員は食物アレルギーの対応を勉強しています。

 
しかし食物アレルギーがある子どもに関わったことがある先生とない先生とでは経験の差が大きく、保護者の方から今の状況と進めている治療について、より詳しく説明することが大切です。
 

子どものアレルギーについて説明するポイントは下記の3つ。

・何歳ごろからアレルギーを発症したのか
・最初に症状が起こったのはいつか、またどのような症状と状態だったのか
・今の治療と子どもの状況


学校や園では、アレルギーがある食物の使用は原則給食で完全除去の対応をします。
ですが、お子さんが治療のために家庭で少量のアレルギー食物を食べている場合は、そのこともきちんと説明しておきましょう。

事前準備について

食物アレルギーのお子さんを入学・入園させる時、アレルギーに関する書類や、学校や園との事前の面談など準備がたくさんあり、短時間で準備できるものばかりではありません。

直前に慌てないように、入学や入園ということを踏まえた上で、少し長期的観点を持って準備をするということが、とても大事になってきます。
学校や園側にとっては、子どものためにどこまでシビアな管理をしなければならないのかが一番気になる点でもあります。

中には血液検査や皮膚検査の結果だけをもとに食物除去をされている家庭もありますが、検査の結果だけでは、必ずしもアレルギー症状がでるとは判断ができません。
 
本来食べられる食物まで除去してしまっては、成長期の子どもに必要な栄養が不足する可能性がありますし、生活が不必要に制限されます。
医師の正しい診断と正しい情報に基づいた除去を心がけ、ぜひきちんと定期的に医療機関を受診して、「今、子どもはこういう状況です」と説明できるように準備しておくことが必要です。

2015年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」という法律により、アレルギーについては日本全国で同じレベルの治療が受けられるよう推進されています。
しかしまだまだ医療機関によって受けられる診療が違うのも現実です。

 

ひたすら除去だけをしていくよりも、子どもの成長に伴って変化していく状況をきちんと把握してくれる医療機関に定期的に診てもらうこと、生活管理指導表を保護者の説明だけをもとに書くのではなく、ちゃんとした診療の状況を書いてくれる先生と相談し進めましょう。

医療機関選びと定期的な受診で子どもの状況を把握しておくという準備が、ゆくゆくは子どもを預ける学校や園での安全な生活につながっていきます。

長谷川さんコメント

家庭の判断だけで、または医療機関でも血液検査などの結果だけで食物の除去を行っている場合、本当のお子さんの状態を把握できていないことも多くあります。

しかしアレルギーの専門施設ですと、特に卵・牛乳・小麦に関しては改善していく経過をみてもらえるお子さんが圧倒的に多いです。
ですから半年〜1年に1度は、食物(経口)負荷試験が受けられる医療機関を受診することをお勧めします

かかりつけの医療機関で食物負荷試験が受けられない時は、紹介状を書いていただいて専門病院で試験を受けることもできます。
かかりつけの先生はお子さんが小さい頃から受診しているので信頼関係が大きいと思いますが、食物アレルギーという疾患は非常に特徴のある医療になります。
ですので、「食物負荷試験を受けてみたいです」とかかりつけの先生にぜひ相談してみてください。
 
保護者の方も自分が除去を頑張ればなんとかなる、と一生懸命努力される様子も拝見しますが、お子さんの成長に伴い、保護者の方だけが頑張ればいいという状況ではなくなってくることもあります。
周りの協力を得ながら、お子さんがいかに社会の中で安全に過ごせるかということが一番大切です。
そのためにもきちんと診断を受けていただくことがとても重要だと長年の経験で感じています。

学校や園に確認しておくこと

学校や園が過去にどういう食物アレルギーの子どもを対応したことがあるのかを確認しておきましょう。

学校や園では緊急事対応で使うエピペン®︎という自己注射薬の講習がほぼ義務化されています。
しかし実際にエピペン®︎を自分で扱ったことがない、または食物アレルギーの子どもを自分のクラスで受け持ったことがない先生は、対応したことのある先生とは理解や認識がやや違う場合もあります。
先生がどのぐらい理解をされているのか、学校や園としても組織としてどんな取り組みをしてくださっているのかを確認しておくことは子どものために大切になってきます。
 
ですが、あまり細かく聞くことはモンスターペアレントと言われるのでは、と危惧する方もいらっしゃいます。
そんな時は医療機関の力を借りましょう。
事実に基づいて、「病院のお医者さんにこういう風に言われています」「これを確認するように言われました」という伝え方をすれば、双方にストレスなく、安全を確保しやすくなります。

工作などでアレルギー食材の容器などを触る場合は?

食べ物を摂取することとは違い、全身性の強い症状が出ることは少ないですが、触った箇所に局所的な症状が出る可能性(接触症状)は十分ありますので、事前に医師に相談する方がいいでしょう。

また、「触ると症状が出るほど重症」と思われている方もいますが、実は少し誤解もあります。
重症といわれる食物アレルギー症状は主に、食べた後お腹の中に入ったものが消化吸収されて血液に運ばれ、全身を巡ることで反応が起こります。
血液を介することによってどこでどういう反応が起こるかわからないというのが食べて発症する食物アレルギー症状の難しいところです。
触れて出る症状は触れた部分の局所的なものが多く、食べてアレルギー症状が出なくなって克服間近のお子さんでも、触るとその部分だけ赤くはれてしまうということはあります。
むしろ触ってしまった時にどういう対応をすればいいかを主治医の先生と相談して整理しておくことが重要になるでしょう。

 

例えば、牛乳パックの工作で「休みますか?見学しますか?」という選択を迫られるのは、子どもにとってはとても辛いことです。
その場合にも、「豆乳パックやジュースパックの代用をすればできるのでは」など、アイデアや情報をたくさん持って提案できることが、楽しい学校や園生活につながっていきます。

 

 

《 監修 》

  • 長谷川実穂(はせがわみほ)管理栄養士

    小児アレルギーエデュケーター(PAE:Pediatric Allergy Educator)
    厚生労働科学研究班による『食物アレルギーの栄養指導の手引き2008/2011』検討委員、文部科学省『学校給食における食物アレルギー対応指針』作成委員など食物アレルギーとこどもに関わる分野で活躍中。
    食物アレルギーのお子さんとご家族が、日々の生活の中でできるだけ不便なく、やりたいことができるよう一緒に考え、寄り添っています。
     
     
    取材協力:リリナグ株式会社
     

    【本サイトの記事について】
    本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます. Unauthorized copying prohibited.

この記事は役に立ちましたか?

ありがとうございます!フィードバックが送信されました。