2020.05.25
卵巣にできたり、腹腔内にできたり、子宮筋層内にできたりします。
子宮内膜はホルモンによって増殖し月経によって剥がれ落ちますが、子宮内膜症では子宮以外でも月経が起こっている状態になり、月経痛、性交痛、排便痛などを起こします。
特に症状を感じない人もいます。
子宮内膜症が卵巣にできると「チョコレート囊腫(のうほう)」という卵巣嚢腫になります。
また、腹腔内にできると癒着を起こし、卵管のピックアップ障害が起こることがあります。
子宮の筋層内にできることを子宮腺筋症といい、月経痛や過多月経の原因になります。
現在の日本では、晩婚化や子どもを産む機会が少なくなったことから、子宮内膜症を患う人が増えています。
子宮内膜症は妊娠しにくい要因の1つとなっています。
卵巣嚢腫や子宮腺筋症は超音波検査やMRI検査で診断します。
腹腔内の子宮内膜症は、腹腔鏡の手術などで偶然発見されることがあります。
また、採血でCA125という腫瘍マーカーを測定すると、上昇していることがあります。
子宮内膜症は月経が起こると増悪するので、妊娠出産で月経が止まると改善します。
すぐに挙児希望がない場合は、低容量ピルをしっかり使用することで、子宮内膜症が改善し、将来の妊娠にはプラスに働きます。
月経痛などの症状が強いときには、GnRHアナログなどの薬物療法で月経を止める治療が選択されます。
低容量ピルやGnRHアナログ治療は自分の排卵を止めるので、この間の妊娠は望めません。
チョコレート嚢腫が大きくなってしまった場合は、腹腔鏡手術で嚢腫を取る手術があります。
卵巣嚢腫は大きくなると悪性化することがあるので、大きな卵巣嚢腫は手術することが勧められます。
妊娠に向けて、内膜症がないことで環境は良くなりますが、手術することで一部の正常卵巣も取られるので、卵胞数は少し低下します。
子宮内膜症の進行の度合いや個々の状況により治療は変わります。
妊娠を急ぐ場合には、体外受精も選択肢の1つです。
子宮内膜症の最大の治療法は妊娠することで、それにより症状の改善が期待できるため、妊娠を優先させる選択もあるのです。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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