2021.06.30
多くの場合で精子濃度のみが低下していることは少なく、同時に運動率や正常形態精子率も低下していることが多いです。
このような状態を、乏精子症(Oligozoospermia)・精子無力症(Asthenozoospermia)・奇形精子症(Teratozoospermia)の頭文字をとってOAT症候群(oligoasthenoteratozoospermia syndrome)といいます。
WHO(世界保健機関)では、以下の基準を定めています。
検査の結果にはばらつきもあるので、3回の検査の平均をとることも勧めています。
精子無力症・乏精子症・精子奇形症は、精子を作る機能(造精機能)に何らかの問題があって元気な精子が作られにくくなり、元気な精子の数が少なくなっていると考えられます。
その原因の1つとして、精巣の静脈が逆流して瘤(こぶ)のようなものができる精索静脈瘤があります。
また、ホルモン分泌異常(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)というケースもあります。
しかし、多くの場合は原因不明です。
それにより、その後、精液検査の結果が良くなる可能性があります。
ホルモン分泌異常の場合は、不足しているホルモンを補充するホルモン療法を行います。
原因が分からない場合、漢方薬やビタミン剤、サプリメントなどが処方されることがあります。
しかし、効果は人によって差があり、薬物療法やサプリメントを摂取しても精液検査の結果が良くなるかどうかは分かりません。
また、薬の服用を始めてから精子が作られるまでには時間がかかります。
そこで、精子無力症・乏精子症・精子奇形症を治すのに専念するのではなく、そうした治療と並行して、人工授精や体外受精、顕微授精にトライするのが現実的な方法といえます。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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