2020.07.06
日本には、家庭で子どもを養育する制度が2つあります。「里親制度」と「特別養子縁組」です。
さまざまな理由により家庭を失い、社会的養護を必要とする子どもが、日本には約45,000人います。
そのうち、施設で養護されている子どもは81.7%、家庭で養護されている子どもは18.3%です。
子どもの養育は、施設養護よりも永続的な家庭養護の方が良いということは分かっています。
家庭養護の割合は、イギリスでは71.7%、ドイツでは50.4%、アメリカでは77.0%、オーストラリアでは93.5%、韓国では43.6%であり、日本の18.3%は世界の他の国と比較して非常に低いことが分かります。
日本で家庭養護が少ない理由として、情報不足や施設での人手不足、親権の強さや血縁へのこだわりがあります。
例えばアメリカでは、不妊治療の初診時に体外受精を含めた不妊治療、卵子提供や精子提供、代理出産、里親養子縁組について、説明を受けることが一般的です。
子どもを持つ手段として、全ての選択肢を情報提供しているのです。
ただし、この中には、日本においては医療を行うことが禁止されている項目もあります。こうした情報について、今は必要でない方が多いかもしれませんが、さまざまな方法があるのを知っておくことは、将来の選択肢の1つになるかもしれません。
里親制度とは、行政が行う福祉サービスの1つで、さまざまな理由により親と暮らせない子どもを18歳まで家庭で一時的に預かって育てる制度です。
児童養護施設や乳児院と同じ役割を一般家庭が担うもので、里親には里親手当と養育費が支給されます。親権は産みの親にあり、里親との関係は一時的なものになります。
養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があります。
「普通養子縁組」とは、明治31年(1898年)から日本にある制度で、家系を絶やさないなどの理由から、親子関係のない者同士を法律上の親子とする制度です。産みの親・育ての親ともに親子関係が存在し、戸籍の続柄は「養子・養女」となります。
「特別養子縁組」とは、昭和63年(1988年)に施行された、子どもの福祉を目的とした制度です。安定した養親養子関係、家庭環境を築くことで、子の健全な育成につなげることが目的です。養親になれる条件は、婚姻している夫婦で、どちらかが25歳以上です。産みの親との親子関係は消滅し、育ての親のみとの親子関係になります。戸籍の続柄は実子と同様に記載され、「長男・長女」となります。
2016年に児童福祉法が改正され、特別養子縁組を行う民間あっせん機関は許可が必要になり、国からの補助金が出るようになりました。
これにより、特別養子縁組がより、安全な制度になりました。
詳しくは厚生労働省のホームページを参照しましょう。特別養子縁組について知りたいときには、市町村の役所、児童相談所、民間のあっせん機関で問い合わせることができます。
『参考リンク先』
卵子提供とは、自分(妻)の卵子ではなく、第三者から卵子の提供を受け、妊娠を目指す方法です。
提供された卵子(ドナーエッグ)と夫の精子で体外受精を行い、それによりできた受精卵を妻の子宮に戻し、妊娠出産する方法です。
現在(2021年10月)、日本には卵子提供に関する法律はなく、日本産科婦人科学会では卵子や胚提供による治療を認めていません。
そのため、卵子提供を希望する人は、海外へ渡って治療を受けているのが現状です。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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