「 排卵 」「受精」「着床」が妊娠するための3ステップ【助産師監修】

2021.07.21

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【監修】助産師:濵脇文子先生

妊娠には大きく分けて、『排卵』『受精』『着床』の3段階のプロセスがあります。

 

この全てがスムーズに進まないと、妊娠は成立しません。

ステップ1:卵子が卵巣から『排卵』

1.卵巣の中で卵胞が成熟する
2.卵巣から成熟した卵子が飛び出す
3.卵管が卵子をピックアップ、卵管膨大部へ移動する

 

卵巣は、周期的に成熟した卵子を送り出しています。
これが、排卵です。
排出された卵子は体内で約24時間生存することができます。
 
脳の視床下部からホルモンが分泌されて脳下垂体に作用し、FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体ホルモン)を分泌します。脳からのホルモンの刺激を受けて、卵巣の中に蓄えられている卵子が発育し始めます。
 

 
卵子が成熟していくと卵子が入っている卵胞も大きくなり、エストロゲン(卵胞ホルモン)が増加します。
エストロゲンが十分に増えると、卵胞が成熟したと脳が判断し、LHを大量に放出します(LHサージ)。

 

この刺激で卵胞が破裂し、排卵が起こります。排卵が起こると、卵巣から延びる卵管采が卵子をキャッチし、卵管の中に取り込みます。

 

卵管の中には繊毛と呼ばれる細い毛がたくさん生えていて、卵子を蠕動運動のようにゆっくりと受精を行う場所(卵管膨大部)に運びます。

 

ステップ2:排卵した卵子が卵管に吸い上げられ、性交により精子が女性の体内へ 卵管の中で精子と出会い『受精』

1.精子が子宮内に入る
2.精子が卵管に入る
3.精子と卵子が出会って受精

 

膣中に射精された精子は、子宮上部にある卵管の入り口を通り、卵管膨大部を目指します。
 
1回の射精で女性の膣内に送り込まれる精子の数は、数億個で、そのうち卵管にまでたどり着けるのは200個以下といわれています。

 

卵管卵管膨大部で受精が成立し、受精卵が完成して、新しい命が誕生します。

命の始まりは、このたったひとつの細胞(受精卵)からスタートします。
とても神秘的なことです。
 
約1週間から10日かけて、受精卵は、2個、4個、8個、16個と細胞分裂をしながら子宮にたどり着きます。

ステップ3:受精卵が成長して子宮内へ移動し子宮内膜に『着床』

1.受精卵は細胞分割を始め、分裂をしながら子宮へと向かう
2.受精卵が子宮内膜に潜りこみ妊娠が成立

 

受精卵は胚盤胞の状態で子宮内にやってきます。
着床時に透明帯という殻を破って子宮内膜に潜りこみます。
身体の血管から発育に必要な栄養や酸素を受け取るようになると、着床が成立します。

妊娠のセルフチェック

妊娠のセルフチェックは、受精卵が着床する月経21日目頃と次の月経予定日頃にかけて行うのが望ましいと考えられます。

 

以下のような症状がないか、身体を観察してみましょう。

1. 基礎体温の高温期が続く

通常の月経周期では基礎体温の変動があり、月経開始から排卵までの「低温期」と排卵後から次の月経周期までの「高温期」という2つの期間に分かれています。

 

妊娠が成立しなければ卵巣内の黄体は衰退し、排卵後にピークを迎えたエストロゲンやプロゲステロンの分泌は低下します。

 

それによって基礎体温が下がり、次の月経周期の低温期が始まります。

 

もし妊娠が成立していると、子宮内膜に着床した受精卵の絨毛組織からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌されます。

 

そして卵巣内の黄体は衰退することなく、hCGの刺激を受けながらエストロゲンやプロゲステロンを分泌し続けます。
そのため、月経予定日を過ぎても高温期が継続します。

2. 月経の遅れがある

妊娠が成立すると子宮内膜はその厚さを保ち続けるため、月経は起こらないとされています。

 

まれに、妊娠をしていても月経予定日前後に出血する場合があります。
ただ、経血量は少なく期間も短いことが多く、いつもの月経と異なることから妊娠に気づくというケースもあり得ます。

3. 着床出血があった

受精卵が着床する際に、少量の出血を伴う場合があります。

出血は鮮血や茶色っぽいもの、量もティースプーン大からティッシュに少量つく程度など、個人差があるとされています。
ただ、着床出血が起こる頻度は今のところ明らかになっていません。
受精卵が着床するタイミングは受精後7日目あたりとされています。
ですから、たとえば月経周期が28日で月経14日目に受精したとすれば、月経21日目、つまり次の月経予定日の1週間前辺りに出血がある計算になります。

その他の症状は?

ほかにも、身体のだるさ、頭痛、熱っぽさの自覚、強い眠気、胸や下腹部の張りや痛み、むかつきなどの気分不良といった症状を自覚する場合があります。

 

妊娠したかどうかが気になったとしても、妊娠検査薬が有効とされる時期や、病院での妊娠確定には、次の月経予定日が過ぎるのを待たなければなりません。
妊娠を望む方にとっては、それまでの日々がとても長く感じてしまうこともあるでしょう。
妊娠のセルフチェックを行うことで、その期間に妊娠の兆候を探ることができます。

 

つまり、妊娠のセルフチェックは、排卵から次の月経予定日までの期間を有意義な時間へと変えてくれるものなのです。ご自身の身体と対話する大切な時間と捉え、ぜひ丁寧に向き合ってみるようにしましょう。

 

 

 

『参考』
・『病気がみえる 産科(第2版)』/ MEDIC MEDIA

《 監修 》

  • 濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師

    大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
    助産師・保健師・看護師。
    産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
    はぐふるアンバサダー。
     
    妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
    また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
     
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