2020.01.31
精液検査とは、男性が行う検査で、マスターベーションで採取した精液を検査します。
不妊の約半分は何らかの男性因子が関わっているので、精液検査はとても大切な検査です。
専門的には泌尿器科になりますが、不妊治療を行っている病院やクリニックでも男性の精液検査はできます。
あらかじめ医療機関から渡された専用容器(滅菌されたもの)にマスターベーションで射精し、その容器を提出します。
最後の射精からすくなくとも2〜3日経った状態で検査します。逆に1週間以上射精しない状態で検査をすると死滅精子が多くなり、正確に分からないことがあります。
自宅で採精した際は、採精してから約2時間以内に提出しましょう。ただし、採精から提出までの時間は医療機関によって異なるので、通院先で確認しましょう。また、医療機関内に採精室が用意されている場合もあります。
医療機関では、採精された精液を顕微鏡で観察し、精子は存在するかどうか、また精子の状態を確認します。一般的に精液検査の結果は、数時間のうちに分かります。
精液検査では、以下のような項目を検査します。検査結果を精液所見といいます。
[検査の項目と数値](WHOガイドライン 2010年度)
上:頭の部分も尾の部分も正常な精子。
(画像提供:洞下由記先生)
精液所見は、同じ人でも体調などによって大きく異なることがあるので、WHO(世界保健機関)では、3回の検査の平均をとることが望ましいとされます。
まず、精液中に精子が存在するかどうかを確認することが重要です。
そのためにも1回は検査を行うことをお勧めします。
射精した精液中に精子が全く確認できない場合は「無精子症」と診断され、自然妊娠は望めないため、治療方針を検討する必要があります。
また、何度か検査しても数値が異常の場合や、既往歴がある場合は、不妊を専門とする泌尿器科でより詳しい検査をすることをお勧めします。こうした検査は、一部の産婦人科や不妊治療専門クリニックでも、男性不妊外来を設けて行っていることがあります。
また、検査した医療機関から専門医のいる病院を紹介してもらうこともできるでしょう。
男性不妊の生殖医療専門医は日本生殖医学会のホームページで確認できます。
生殖医療専門医(日本生殖医学会)*専攻「泌尿器科」を参照
何度か検査をしても、精子の数が少なかったり、精子の運動率が低かったりしたときは、自然妊娠を目指すことが難しいことがあります。
その場合は、人工授精を検討したり、場合によっては体外受精、顕微授精を考えたりすることになるでしょう。
精子の数や運動率を上げる薬として、漢方薬やビタミン剤があります。
しかし、効果は個人差が大きく、結果が出るまでに時間がかかることが多いものです。
また、精子を作る機能に影響がある精索静脈瘤が見つかった場合には、手術により精液所見が改善することがあります。
精子は作られているものの精子を運ぶルートに問題がある閉塞性無精子症の場合には、精巣から精子を回収して顕微授精をする方法があります。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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