2020.01.31
転院の理由としては、以下のようなことが考えられます。
不妊治療が長引いてくると、「このままでいいのだろうか?」「他の治療法もあるのでは?」と迷いが出てくることもあるものです。
転院しようかどうしようか、何カ月も悩んでいる間にも女性は年齢を重ねています。
また、何カ月も悩んでから「転院しようとクリニックを予約したら、初診が数カ月待ちだった」ということがあるかもしれません。
妊娠を望む女性にとって「時間はとても貴重」だということを忘れないようにしましょう。
不妊治療の主体は夫婦(カップル)であり、治療をするのもやめるのも、そして転院するのも、二人の意志決定によるものです。
「今の病院ではやっていない、他の治療法にトライしてみたい」「先生との相性が良くないのか、通院でストレスを感じてしまう」といった理由でも転院してかまわないのです。
ただし、治療の途中で突然、通院をやめることは避けたほうがいいでしょう。
理由があって治療をしているはずなので、治療を中断することで何らかの不利益が生じることも考えられます。
その際には、いったん治療をやめたい旨を、現在の主治医に伝えましょう。
その対策が次の病院選びのポイントになるでしょう。
病院を選ぶ基準は人それぞれで、何を求めているかによって基準も変わるものです。
体外受精に進むのなら、転院先の体外受精の方法について調べたり、説明会に行ってみたりするといいでしょう。いくつか候補があれば、内容について比べることもできます。
体外受精の件数で、どれだけ不妊治療を専門に扱っているかが分かります。
不妊治療専門クリニックの優れた点は、慣れているためシステムが整っていたり、治療にプラスしてカウンセリングや補助医療が充実していたりするところです。
逆に欠点は、費用が少し高めであったり、一人一人にかける時間が少なかったりする施設もあるようです。
その施設での妊娠率について調べるか、聞いてみましょう。特に「自分の年齢の場合はどうか」を聞くといいでしょう。施設によっては、患者の年齢制限を設けている場合もあります。高年齢の患者が多いと妊娠率が下がるからと考えられますが、それも施設の一つの姿勢とも受け取れます。
例えば、体外受精であれば、AクリニックとBクリニックでは「卵巣刺激法が違う」といったことがあるでしょう。「この方法をやりたい」と患者が希望しても「うちはこの方法しかやりません」という施設もありますし、状況によって柔軟に判断する施設もあります。
体外受精に関しては、多くの施設で説明会を行っているので参加してみるといいでしょう。
今までの治療法とどのような点が違うのか確認できますし、医師や胚培養士などから話を聞く機会にもなります。
疑問があれば質問して、不明点を解消し、納得した上で治療を進めたいものです。
実際のところ、どの治療法が自分に合っているのかは、やってみないと分からないものです。だからこそ、自分が納得して治療を受けることが大事なのです。
医師との相性が良くなかったのなら、今度はどんな医師やスタッフがいるのか、ホームページなどで調べてみましょう。
治療方針や不妊治療に対する医師の考え方などがつかめるでしょうし、施設の設備や雰囲気なども伝わってくるでしょう。
とはいえ医師との相性は、実際に会ってみないと分からないものです。「ここでなければダメだ」と決めつけるのではなく、「とにかく一度行って相談しよう」という姿勢で受診してみてはどうでしょうか。
転院を考えたほうがいいケースとしては、説明なく同じ治療を繰り返すときや次の治療について医師から提案がないときなど、これからの治療について不安を感じるときです。
そんなときは、「今後の治療は、どうしていくのがいいですか?」と医師に聞いてみましょう。
治療の主体は自分たちですから、こちらから治療について聞いたり、希望を伝えたりしていいのです。
女性にとって妊娠・出産は「時間との戦い」です。
「聞きにくいから、忙しい先生やスタッフに悪いから」と遠慮して、貴重な時間を費やすことのないように、主体性を持って治療に取り組みましょう。
体外受精は高度な医療であり、お金も時間もかかりますから、妊娠への期待が高まるものです。
しかし、1回目の治療で妊娠する人のほうが少数です。
今回、初めて体外受精をしたことで分かった情報もあるはずです。
例えば、採卵までの卵巣刺激法は合っていたのかどうか、受精したかどうか、受精卵は順調に分割したか、何日目で胚盤胞になったか……。こうした情報は、体外受精にトライしたから分かったことです。
医師は通常、これらの結果を次の治療に生かすものです。
ですから、「1回目で妊娠しなかったから、この治療が自分に合っていない」ということではないのです。
1回目の結果を踏まえて、もう1回トライしてみてはどうでしょうか。
そうでないと、転院先でも同じようなことを繰り返す可能性があります。
紹介状があればこれまでの検査や治療の様子が分かり、転院先での効果的な治療につながるので、紹介状を持って転院したほうがいいでしょう。
しかし、医師に転院のための紹介状を頼みにくいこともあるでしょう。紹介状はなくても受診は可能です。ただし、転院先で、すでに行った検査を再度行うなどはあるかもしれません。
転院した場合、最初から検査をやり直す施設もありますが、以前の病院での検査結果を踏まえて必要な検査だけを行う施設もあります。
そのためにも、これまでの検査結果は保存しておきましょう。
再度検査をするかどうかの基準は施設によって違うので、受診の際に確認しましょう。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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