2023.03.22
乳がんの好発年齢は40歳代からですが、20歳代、30歳代でかかる人も少なくありません。
また、がんは再発予防も含めると、一度発症すると完治までに長い期間を要する病気です。
「若いからまだ大丈夫」と思わずに、乳がんがどんな病気なのか、妊娠にどのように影響するかなど、もしもの場合に備えて知っておきましょう。
なお、乳がんの診断や治療を行うのは婦人科ではなく、乳腺科や乳腺外科です。
疑わしい症状があった場合は、速やかに受診するようにしましょう。
この乳腺に発生する悪性腫瘍が乳がんです。
乳がんには、乳腺小葉を起源とする小葉がんと、乳管を起源とする乳管がんがあり、大半は乳管がんです。
乳がんは、初潮が早く閉経が遅い、初産年齢が高い、授乳経験が少ない、良性の乳腺疾患にかかったことがあるなどの場合にかかりやすい傾向があるとされます。
また、乳がんにかかったことがある家族がいること(家系内の男性の発症も含みます)や、肥満や過度の飲酒、運動不足などの生活習慣もリスクを高める要因になります。
また閉経後の女性では、運動による乳がんリスク減少の可能性が示されています。
これらは、日頃から乳房を見たり触ったりすることでも分かることから、乳がんは自分で発見することが可能ながんだとされています。
セルフチェックは月1回がおすすめです。
ただし、中には自分では見つけられなかったり自覚症状がなかったりするケースもあります。
セルフチェックだけに頼らず、ぜひ年に1回は乳がん検診を受けるようにしましょう。
乳がん検診で異常があった場合は、マンモグラフィーや超音波検査、病変の細胞を顕微鏡で調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)などを行って診断を確定させます。
乳房を部分切除した場合は、再発の危険性を減少させるために残った組織に放射線治療を行います。
さらに、乳がんの大半を占めるホルモン依存性の乳がんに対しては、ホルモン療法薬を比較的長期間投薬することで、女性ホルモンの分泌を抑えて再発を予防します。
注射によって一定期間月経を停止させる治療を行うこともあります。
腫瘍が大きかったり再発のリスクが高かったりする場合には、術前や術後に抗がん剤による化学療法を行います。
乳がんの治療が終わってからの妊娠・出産に関しては、赤ちゃんに異常が見られる頻度が乳がんになっていないお母さんと変わらないことが分かっています。
また、妊娠したからといって乳がんが再発しやすいということもありません。
💡一方、乳がんの治療中は、治療に使われる薬物が妊娠に影響を与える危険があるので注意が必要です。
また、月経を止める治療を行う場合もあります。
その間の妊娠は、催奇形性(さいきけいせい=胎児に奇形の起こる可能性)が高くなるので、妊娠は控えた方がよいとされています。
ホルモン療法は5~10年行うのが基本ですが、妊娠を希望している場合2年で終了を検討してもよいとされています。
ホルモン療法よりも期間は短いですが、抗がん薬は卵巣に強いダメージを与えるため、治療中は、ほとんどの場合、月経が止まってしまいます。
治療後も月経が再開しなかったり、再開しても卵巣の機能が以前より低下して不妊になったりする場合があります。
妊娠を希望する場合は、あらかじめ医師に相談して妊娠への影響を確認しておきましょう。
そのため、妊娠のタイミングを失ったり妊娠しにくくなったりして、赤ちゃんを産むことが難しくなることが指摘されてきました。
そこで、がんなどの病気になっても、将来出産できる可能性を温存するため、2021年に厚生労働省の「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」がスタートしました。
妊孕性を温存するには、受精卵、未受精卵子、卵巣組織、精子などを長期間凍結保存する方法がありますが、高額な自費診療になり、患者の経済的な負担が問題となっていました。
この事業では、妊孕性保存のための治療の一部を公的に助成し、同時に患者からの臨床情報を収集することで、妊孕性温存療法の研究を進めることを目的としています。
助成の対象者には条件があります。
もしも、乳がんになり将来の妊娠について不安を感じた場合は、本格的な治療を始める前に、この制度について自治体に問い合わせをしてみるといいでしょう。
乳がんの治療は妊娠に影響を与える恐れがありますが、がんになったから赤ちゃんを諦めなければならないと考えるのは早計です。
極めて早期なら約100%の方が治ります。
決して恐い病気ではありません。
早期発見のために、マンモグラフィーなどによる定期的な検診や、日常の自己検診が有用です。
今後の妊娠の可能性や妊孕性温存療法などについて、まずは主治医とよく話し合ってみましょう。
また、妊娠についてはがんの治療医だけでなく、生殖医療の専門医にも相談した方がいい場合もあります。
乳がんが妊娠に与える影響は患者によって異なります。自分が十分に納得できる治療でがんを克服しましょう。
《 監修 》
丸山 真理子(まるやま まりこ)産婦人科専門医
EASE女性のクリニック院長。
産婦人科専門医として子宮がん・乳がん検診のほかプレコンセプションケア、妊活、妊娠、子育てと全てのライフステージの女性診療に携わる。イーズファミリークリニック本八幡・病児・病後児保育室室長、EASE English Montessori School、日本女性財団プラットフォーム委員会委員長としても精力的に活動中。
▶HP https://ease-clinic.jp/ EASE女性のクリニック
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