2020.03.09
採卵のときと同じように、手術着に着替えて処置室に入ります。
医師が超音波画面を見ながら、膣から子宮へとカテーテルを挿入します。
胚培養士から胚が入っていた培養液を受け取り、カテーテルを使って子宮の中に培養液と共に胚を流し入れます。この様子は超音波画面で確認することができます。
胚移植は通常5分ほどで終わりますが、子宮の向きや形によりカテーテルが挿入しにくい場合は時間がかかることがあります。
「胚移植をしたら外出を控えたり、横になったりした方がいいのかな?」と悩む人もいるようですが、主治医から特に指示がなければ普段通りの生活でかまいません。
日常生活を送っている分には、それで着床が妨げられるとは考えにくいでしょう。
以前には、胚の凍結技術が確立されていないこともあり、「たくさん受精卵を戻せば妊娠する」という迷信のような認識のもと、一度に3個も4個も胚移植していた時代がありました。
すると、三つ子や四つ子など多胎妊娠が起こり、大きな問題になりました。
三つ子や四つ子と想像するとかわいらしいと思うかもしれませんが、実際の妊娠・出産、そして育児は、かなり過酷なものとなります。
多胎妊娠では早産は必須で、長期の入院管理が必要になり、母児ともにハイリスクな妊娠なのです。
そのため現在は、胚移植では基本的に1個の胚を戻すことになっています。これを「単一胚移植」といいます。その理由として、1個移植での妊娠率は、2個移植したときの妊娠率と、ほぼ変わらないことがあります。
また、余った胚を凍結して保存し、後で融解して移植するための凍結胚融解の技術が向上したこともあります。現在の技術では凍結して融解した場合、9割以上の確率で元の状態に戻ります。
胚移植は、体外受精・顕微授精などと並んでART(生殖補助技術)の治療です。
国が定める特定治療支援事業の対象なので、胚移植をした場合には助成金の申請が可能です。
ただし、年齢や収入、回数などの条件があるので気をつけましょう。
また、自治体で独自の助成制度を設けている場合もあるので、治療をする場合は事前に確認しましょう。
『参考資料』
厚生労働省:不妊に悩む方への特定治療支援事業
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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