2020.03.02
子宮の中まで元気な精子を送り込むことで、精子と卵子を出会いやすくします。
「人工」という言葉に人為的なイメージを持つかもしれませんが、医療が少し手を貸すだけで、妊娠のプロセスは自然妊娠と同じです。
そのため、以下のようなケースに適しています。
ただし、妊娠するには、女性の卵管が通っていることが前提となります。
排卵日が近づくとホルモンの影響で頸管粘液(おりもの)の分泌量が増えるのですが、その分泌量が少ないケース。その場合、精子を子宮に届けることが難しくなります。
フーナーテストを行って、頸管粘液の中に存在する元気な精子の数が少なかった場合。
元気な精子の量がやや少ない男性不妊の場合。
なお、精子の量が極端に少なくて人工授精でも妊娠の可能性が低い場合は、体外受精が提案されます。
勃起がうまくいかない勃起不全(ED)、膣内での射精がうまくいかない射精障害など、性交渉がうまくいかない場合は自然妊娠が難しく、人工授精が選択肢になります。
超音波検査で卵胞の大きさを測って、排卵日を推測します。
また、血液検査で排卵直前に上昇するLH(黄体化ホルモン)を測る場合もあります。
排卵日に合わせて病院を受診し、人工授精を行います。
男性は、自宅か病院で、あらかじめ渡された容器にマスターベーションで射精し、病院に提出します。精液は洗浄・濃縮され、元気な精子を集めます。
内診台で、医師がやわらかいカテーテルという器具を膣から子宮へと挿入し、洗浄・濃縮した精子を注入します。
人工授精にかかる時間は5〜10分ほどで、入院や麻酔の必要はありません。しばらく休んでから帰宅できます。
排卵の直前(人工授精を行う1〜2日前が目安)には、排卵を促すhCG注射を打つことが多く、場合によっては低温期に排卵誘発剤を使うこともあります。
また、卵胞の大きさをチェックするため何度か超音波検査を行うので、タイミング法のときよりも通院回数は少し増えます。
精液を洗浄することで、こうした物質を取り除くとともに、奇形精子や未熟な精子を取り除き、成熟した精子や運動率の高い元気な精子を集めるのです。
こうすることで受精する確率や妊娠する可能性が高まります。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
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