2024.06.04
晩婚化などの影響で高齢出産が増加している昨今は、2人目不妊に悩んでいるカップルも増えており、日本全体で大きな問題となっています。
そこで今回は、そんな2人目不妊の原因や、クリニックの選び方を含めた治療への取り組み方についてご紹介します。
2人目不妊の主な原因には、「加齢」「性交渉の減少」「産後の母体の変化」「第一子出産の影響」の4つが挙げられます。
2人目不妊の原因として最もよく見られるのが、加齢です。
第一子の妊娠・出産時に比べて年齢を重ねたことで、気づかないうちに以前よりも妊娠しにくい体(受精や、受精卵の着床確率が低下する)になっているのです。
特に近年は第一子の出産年齢が上昇傾向にあり、第二子の妊娠を望む頃には、卵子の老化が進んでいるケースが多くなっています。
年号 | 平均年齢(歳) |
1975年(昭和50年) | 25.7 |
1985年(昭和60年) | 26.7 |
1995年(平成7年) | 27.5 |
2005年(平成17年) | 29.1 |
2015年(平成27年) | 30.7 |
2017年(平成29年) | 30.7 |
2018年(平成30年) | 30.7 |
2019年(令和元年) | 30.7 |
2020年(令和2年) | 30.7 |
2021年(令和3年) | 30.9 |
2022年(令和4年) | 30.9 |
出典:厚生労働省「人口動態統計月報年計」
なお、加齢による変化は女性にだけ起こるわけではありません。
男性の場合も、精子の質(運動率や正常形態率)が加齢によって低下し、妊娠率に影響を及ぼします。
第一子の出産による体の変化で性交渉に苦痛を感じる、育児に追われてなかなか機会をもてないなどの理由から、出産後に性交渉の回数が減少するカップルは珍しくありません。
そうなれば、自然と妊娠の可能性は低下してしまいます。
出産後に体重が増加して肥満体型になったり、反対に無理なダイエットをしてホルモンバランスが乱れたりすると、不妊の原因になります。
第一子の出産時に多量の出血があった、帝王切開の傷がうまくふさがらなかった(帝王切開瘢痕症候群)などのケースは、その後の妊娠に悪影響を与える可能性があります。
2人目不妊の治療開始時期の目安は、年齢や体の状態によって異なります。
女性が35歳未満ならタイミング法を開始して1年間、35歳以上なら半年間妊娠しなければ、治療をスタートするのがおすすめです。
ただし、子宮筋腫や子宮内膜症をはじめとした何らかの婦人科系の疾患を抱えている方は、年齢を問わず早めに治療を検討するといいでしょう。
また、第一子への授乳期間中は排卵が起こりにくいため、授乳を終えてから治療を始めてください。
2人目不妊の治療は、スタートが遅れるケースも珍しくありません。
1人目を自然妊娠している場合、「2人目も(治療を受けずに)妊娠できるはず」と考えているカップルが多いためです。
しかし、治療を受けるか悩んでいる間にも体の老化は進み、妊娠率はどんどん下がってしまいますから、まずは検査(女性はホルモン検査や子宮卵管造影検査など、男性は精液検査)だけでも早めに受けることをおすすめします。
治療を受けるにあたっては、2人目不妊の患者を積極的に受け入れているクリニックを選びましょう。
「不妊に悩んでいる」という点は同じでも、1人目を出産している方と子どもがいない方とでは境遇が大きく異なり、子連れでクリニックに通うと周囲からの視線が気になることもあります。
そもそも、子連れでの通院を受け入れていないクリニックは多くあるので、受診の際は注意が必要です。
一方で、託児所や子どもが遊べるスペースを併設しているなど、2人目不妊の方に手厚いサポートを用意しているクリニックもあります。
受診前に、子連れの可否やクリニックの雰囲気などを、電話やホームページで確認しておくと安心です。
子育てや家事、仕事をしながらの不妊治療はとても大変なので、自身ですべて担おうとせず、外部のサービスを積極的に活用することをおすすめします。
例えば、行政による子育て支援サービス「ファミリーサポート」を利用すれば、通院中に子どもを預かってもらうことも可能。
民間のベビーシッターサービスよりは安価な場合が多いです。
また、母親だけに治療や育児の負担が集中しないよう、パートナーはもちろん、両親などの身近な人を巻き込んで、みんなでよく相談することも重要。
クリニックによってはカウンセラーが在籍しているので、専門家に悩みを相談してみるのもいいでしょう。
生活習慣を改善し(栄養バランスに配慮した食事を摂ること、適度な運動をすること、体を冷やさないようにすること、なるべくストレスを溜めないようにすること、十分な睡眠をとること など)、妊娠しやすい体づくりに取り組むことは重要です。
また、基礎体温の記録も習慣にして、体の状態をきちんと把握できるようにしましょう。
ただし、自身の努力だけではどうにもならない原因があることも多いので、年齢と妊活の期間に応じて適切なタイミングで医療機関を受診してください。
《 監修 》
松村 圭子(まつむら けいこ)産婦人科医
成城松村クリニック 院長/日本産科婦人科学会 専門医
2010年に成城松村クリニックを開業。「女性が気兼ねなく相談できる“生涯のかかりつけクリニック”」を目指し、患者に寄り添う診療を提供する。
WEBコンテンツや書籍の監修実績も多数。『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)をはじめ、著書も数多く出版している。
URL:https://www.seijo-keikoclub.com/