【不妊治療】体外受精でおこなう 卵巣刺激法 とは?どんな種類があるの?【医師監修】

2021.03.01

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体外受精の卵巣刺激法とは?【医師監修】洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医

体外受精(IVF:In vitro fertilization)では、1回の採卵で複数の成熟した卵子を採卵するために、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激して卵子を育てます。

これを「卵巣刺激」といいます。

 

通常の月経周期であれば、1回に排卵される卵子は基本的に1個です。
体外受精では卵子を複数個採卵するために、排卵誘発剤を使って発育する卵子の数を増やします。

卵巣刺激法には、さまざまな方法があります。
その人の体の状態や治療方針によって、その周期にどの刺激法を行うかが決まります。

卵巣刺激法で使う排卵誘発剤とは?

排卵誘発剤には、内服(飲み薬)と注射があります。

 

【飲み薬タイプの排卵誘発剤】

飲み薬の代表はクロミフェンという薬です。
脳に働いて、自分のホルモンバランスを強化することで発育卵胞数を増やします。
比較的、マイルドな効き目です。

 

【注射タイプの排卵誘発剤】

注射はFSH製剤と呼ばれる薬が使われます。
直接卵巣を刺激するので効き目が強いのが特徴です。
注射にはいくつかの種類があり、どれくらいの量を投与するかは、人によって異なります。
また、卵胞の成長具合を確認しながら、投与する量を調整します。

たくさん卵胞を発育させるために、排卵誘発剤の注射を毎日打つことがあります。
毎日の通院が難しい場合には、かかりつけの病院や職場近くの病院で注射を行うことも可能です。

 

また、施設によっては、自宅で自分で注射を打てるように自己注射の方法を教えてくれる場合もあります。
費用はやや高く、薬の種類は限られますが、排卵誘発剤の自己注射用のセットもあります。
ただし、自己注射を選んだ場合でも、2〜3日に1回は通院し、超音波検査や採血を行って卵胞チェックをし、注射の微調整をする必要があります。

 

卵巣刺激法には、どんな種類があるの?

体外受精卵巣刺激法には、高刺激法といわれるショート法、ロング法、アンタゴニスト法のほか、マイルドな刺激の低刺激法、そして排卵誘発剤を使わない自然周期法などがあります。

ショート法とは?

採卵する周期の月経が始まったら、月経開始3日目頃から💉排卵誘発剤の注射を毎日打ちます。
卵胞がある程度成熟するのを待つ必要があるため、勝手に排卵をしないよう予防する💊GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬)を同時に毎日使用します。
卵胞が20mm程度に成熟したら採卵になります。
採卵の約36時間前に、卵子を成熟させる💉hCGという注射を打ちます。

 

💡1度に複数の卵子を採卵できるのがメリットですが、薬による副作用が起こる場合もあります(卵巣が腫れる、卵巣刺激症候群など)。

💡連日注射するので薬代がかかり、通院回数が多くなります。

ロング法とは?

ショート法と同じく、勝手に排卵することを予防するために💊GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬)を、採卵を予定している前の周期から長く使う方法です。

排卵誘発剤やhCGの使い方などは、ショート法と同じです。
開始する時期の違いで分けて使われています。

アンタゴニスト法とは?

勝手に排卵することを予防するために、点鼻薬の代わりに💉GnRHアンタゴニスト製剤という注射を用いる方法です。

卵巣刺激は注射が毎日であったり、低刺激であったりとさまざまです。
GnRHアンタゴニスト製剤は効き目が早いため、排卵直前に数回使用するだけで排卵抑制できるのが特徴です。

低刺激法とは?

低刺激法とは、飲み薬の💊排卵誘発剤(クロミフェン製剤)に組み合わせて、💉排卵誘発剤の注射を1日おき程度に投与する方法です。

ショート法・ロング法・アンタゴニスト法に比べると、採卵できる卵子の数は少ないのですが、それらの方法よりも体への負担が少ないのが特徴です。
また、使用する薬が少ないので、費用や通院回数も少なくなります。

自然周期法とは?

自然周期法とは、排卵誘発剤を使わずに、自然に排卵する卵子を採卵する方法です。

薬の副作用がなく、体への負担が最も少ない治療法ですが、排卵をコントロールできないため、排卵直前の卵子を採卵する見極めが重要になります。
💡また、自然に任せるので、採卵できる卵子は基本的に1個です。

どの卵巣刺激法が自分に合っていますか?

どの卵巣刺激法を選択するかは、その人の体の状態や治療方針などによって異なります。

また、同じ人でも「1回目はショート法でやってみたけれど妊娠しなかったので、次はアンタゴニスト法」というように、卵巣刺激法を変更する場合があります。

💡また、年齢が高くなるとショート法やロング法で強い刺激を与えても卵巣が思うように反応しないことがあり、その場合は低刺激法を選択することになるでしょう。

《 監修 》

  • 洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医

    聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。

    不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。

    HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院
     
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