【医師監修】『 卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)』とは?排卵誘発剤の副作用・症状や治療法は?(不妊治療)

2023.07.10

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【監修】丸山 真理子 産婦人科専門医

卵巣過剰刺激症候群はOHSSともいわれ、不妊治療で使用する排卵誘発剤の副作用によって引き起こされる症状です。

 

重症化すると命に関わることもあります。
早期に発見して対応することがとても重要ですから、不妊治療中は排卵誘発剤での治療を受ける前に、何が原因なのか、どんな症状が現れるのかなどを知っておきましょう。

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の注射の副作用によって起こる❔

卵巣過剰刺激症候群は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の注射の副作用によって起こります。

 

女性の卵巣は親指くらいの大きさ(3~4cm)の楕円形の臓器で、たくさんの卵子が卵胞に包まれて中に入っています。
卵巣では、月経の周期に合わせて毎回いくつかの卵胞が発育の準備をしていますが、その中の1つが発育して大きくなり、中の卵子を排出します。
これが妊娠に不可欠な排卵です。

 

排卵誘発剤は卵胞に働きかけて排卵を促す薬ですが、卵胞が過剰に刺激されると、ホルモンの働きにより血管内の体液が外に漏れやすくなります。
そのため、卵巣が腫れて腹水がたまり、さまざまな症状が現れます。

卵巣過剰刺激症候群の症状

腹水がたまったり、卵巣が腫れて他の臓器が刺激されたりすることで、初期症状ではおなかの張りや体重増加が見られます。

 

血管内の水分が少なくなると脱水の症状も現れます。
重症化すると胸に水がたまって呼吸不全を起こしたり、血管内の水分の脱水が進んで命に関わる重篤な合併症を引き起こしたりすることもあります。

 

 主な症状🖋
・おなかが張る
・ウエストがきつくなる
・急に体重が増える
・下腹部の痛みや不快感
・吐き気
・嘔吐
・喉が渇く
・尿の量が少なくなる
・呼吸が苦しい
急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)
血栓症(けっせんしょう) など

卵巣過剰刺激症候群になりやすい人は❔

💡卵巣過剰刺激症候群は以下のような場合に発症のリスクが高くなります。

 

• 多囊胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS=卵胞が卵巣にとどまって排卵が阻害される病態)【詳しく読む📖
• 第2度無月経などでゴナドトロピン製剤の使用量が多い
• AMHが高い
• 血中エストラジオール値が2500pg/mL以上である
• 過去に多嚢胞性卵巣症候群を経験したことがある
• 妊娠成立
• 多胎妊娠を経験したことがある
• 若年である(35歳未満)
• やせ

卵巣過剰刺激症候群の診断方法、治療方法

卵巣過剰刺激症候群は、おなかの張りや吐き気などの自覚症状や体重・腹囲の増加、尿の量などのチェックに加え、卵巣の状態や腹水の有無を調べる経腟超音波検査、血液検査などで診断します

 

▼重症度は、軽症、中等症、重症の3段階に分けられます。

【軽症、中等症の場合】
卵巣の腫れや腹水が比較的軽度な軽症や中等症の場合は、安静にして通院で治療します。

 

【重症の場合】
重症になると、呼吸困難やおなか全体の腹水や胸水、卵巣の12cm以上の腫れ、重い脱水症状などが見られます。
その場合は入院し、輸液によって血管内の脱水を改善したり尿量を増やしたりする、腹水を除去するなどの処置を行います。

 

なお、2022年4月より生殖医療の保険適応が始まったのに伴い、卵巣過剰刺激症候群の治療でも一部の薬で保険が使えるようになりました。

 

まとめ

卵巣過剰刺激症候群は早期に発見してすぐに対応すれば、ほとんどの場合、軽症で治まる病気です。

不妊治療は心身に負担がかかることも少なくありませんが、体に起こった違和感を「仕方がない」と放置しないことが大事です。
 
排卵誘発剤の使用中は、副作用として卵巣過剰刺激症候群を発症する可能性があることを忘れず、おなかの張りや体重の増加など、少しでも気になる症状があったら、すぐに主治医に相談するようにしましょう。

《 監修 》

  • 丸山 真理子(まるやま まりこ)産婦人科専門医

    EASE女性のクリニック院長。
    産婦人科専門医として子宮がん・乳がん検診のほかプレコンセプションケア、妊活、妊娠、子育てと全てのライフステージの女性診療に携わる。イーズファミリークリニック本八幡・病児・病後児保育室室長、EASE English Montessori School、日本女性財団プラットフォーム委員会委員長としても精力的に活動中。
     
    HP https://ease-clinic.jp/ EASE女性のクリニック
     
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