『 弱視 』をわかりやすく解説:弱視(アンブリオピア)の原因や症状、どんな治療法がある?【医師監修】

2023.06.02

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弱視

1.  弱視 とはこんな病気【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

年齢:0歳~
症状:視力が低い
体の部位:目

 

弱視とは、左右どちらか、または両側の眼の視力が低いことで、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力がでない眼のことをいいます。

 

「弱視」という用語は医学的弱視(アンブリオピア)低視力(ロービジョン)の両方の意味がありますが、今回は医学的弱視の内容をお話しします。
医学的弱視とはものを見る機能が発達する乳幼児期に、その機能がうまく使われなかったことによって発症します。1,2)

 


発症時期にもよりますが、適正な眼鏡をかけるなどの治療で視力の回復が期待できます。
早期発見、早期治療が大切です。

小さい子どもは症状を訴えないので、3歳児健診などで分かることがあります。

2.  弱視 の原因と症状

子どもは、ものを見ることを積み重ねて視力が発達させます。

生後3カ月頃から8歳くらいまでの「視覚感受性期間」といわれる期間に1) 様々な視覚刺激を受けて、視機能が発達していきます。
特に生後3カ月頃から2歳までは感受性が高く、この時期に必要な視覚刺激が入ってこないと、視力の十分な発達が得られず弱視になりやすいとされます1,2)

 

ものが見えるのは、外から入ってきた光が眼の奥にある網膜で焦点を結び(ピントが合い)、その情報が脳に伝わるからですが、例えば、生まれつき、上まぶたの筋力が弱く、まぶたが垂れ下がっている「眼瞼下垂(がんけんかすい)」などがあると、視覚感受性期間に十分な視覚刺激(情報)が伝わらず、弱視の原因となります。

また、遠視が強い場合、左右の眼の視力が異なる場合、視線の向きがずれている「斜視」の場合も、外から入った光が網膜でピントが合わず、視覚刺激が伝わりません。

症状としては、視力の低下、コントラスト感度(明暗や濃淡を識別する感度)の低下などです2)

いずれも片側の眼の弱視の場合、本人は気がつかないことが多いようです。

3.  弱視 の検査でわかること

【視力の検査】では3歳ごろからランドルト環(C字)を使う検査を行います。
3歳未満では、絵や縞の視標を使って調べることができます。

 

その他に、両眼を使った時の視覚の状態を検査する【両眼視機能検査】や、
焦点を合わせる機能の異常を測定するための【屈折検査】 、
眼に光を当てて専用の顕微鏡で表面や内部を観察する検査、片眼を隠して眼球の動きを観察したりする【眼位検査】などがあります。

 

 

検査は乳児の特性に配慮した方法で行われ、眼そのものに病気があるかどうかも確認します。

3歳児健康診査における屈折検査の導入が始まり、病院によっては、視覚スクリーニング検査にスポットビジョンスクリーナーを取り入れている場所もあります。

※スポットビジョンスクリーナー:生後6ヶ月~大人まで使用できる機器で、赤外光による目の反射で近視・遠視・乱視などの屈折異常や屈折の左右差、瞳孔不同、斜視などを瞬時に発見できます。

 

 

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4.  弱視 の治療法と薬

治療として、お子さんごとに適した度数の眼鏡をつくり(健康保険が使えます)、眼にあった眼鏡を常にかけるようにします1,2)

網膜に正しくピントが合うように矯正し、視力の発達を促します。乳児用の眼鏡は、頭部にバンドで固定するなど安全性に工夫されていますが、子どもが転んだり、眼鏡が押さえつけられたりして壊れる可能性もあるため注意が必要です。

もう一つは、「健眼遮閉(けんがんしゃへい)」といって、正しく見えている方の目を眼帯などで隠す方法です1,2)
それにより、あえて弱視の眼を使うようにして、視覚刺激を加えるようにします。

 

似たコンセプトの治療法として、ピント合わせの機能を一時的に休ませる作用の点眼薬を、正しく見えている方に差す方法もあります1,2)
近くを見にくくすることで、弱視の眼を使うようにするのが目的です。

 

先天白内障など、もともと眼の病気がある場合は、その治療も行います。

体の他の機能と同様、視機能の発達時期にも終わりがあります。

視機能発達の「伸びしろ」がある時期に、早めに治療を始めることが大切です1,2)

5.  弱視 のホームケアと予防

乳児が自分から弱視を訴えるとは考えにくいので、保護者の手などでお子さんの片側の目を覆ってみて確認する方法があります3)

もし片側の眼の弱視があれば、正しく見えている方をふさがれると嫌がるかもしれない、ということです。
両側の眼の弱視を見つけるには、「テレビや絵本に近づく」「絵本興味がない」「極端にまぶしがる」といったしぐさに注意し、気になることがあれば眼科を受診しましょう3)

 

■日本弱視斜視学会のHP(一般の皆様へ)より、
弱視・斜視を専門とする医師の一覧が検索できます。

 

■日本小児眼科学会のHP
小児眼科を専門とする医師の一覧が検索できます。

 

 

弱視治療のポイントとして、目を開けているときは眼鏡をかけているのがよいとされています。

保育園での弱視治療用眼鏡の取り扱いや破損時などについての対応は、医師に相談してから園側に確認をするとよいでしょう。

健眼遮閉を家庭で行う場合、子どもの様子に気を付けましょう。また1日何時間すればよいのかなど医師に確認します。

 

 

 

【参考資料】

1) 仁科幸子、林 思音編.ファーストステップ! 子どもの視機能をみるースクリーニングと外来診療ー.全日本病院出版会 2022
2) 中澤 満、村上 晶、園田康平編.標準眼科学第14版.医学書院 2018
3) 藤巻拓郎.順天堂医学.56:209-214,2010

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
     
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    この事業は全国統一の短縮番号♯8000をプッシュすることにより、お住いの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。
    厚生労働省ホームページ:子ども医療電話相談事業(♯8000)について

     

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