2021.07.20
オキシトシンについてはこちらの記事で触れていますので確認してください。
たとえば温かいスープの入ったマグカップに触れた時は、中のスープで温まったカップの「温かさ」とカップ自体の「硬さ」などを手で感じ、脳に伝わり、感覚として捉えます。
しかし、触れたものが人肌である場合は、ただ単純に温度や硬さを感じ取るだけではありません。
愛する人の頬に触れた時、肌の温かさとは別にいとおしい気持ちが生まれ、思わずほほ笑んでしまった経験はないでしょうか。
この「人に触れる」ということは人間にとって、特別な意味を持っています。
そこには必ず何かしらの感情が伴っています。
相手が触り返してこなくても、自分が相手に触れただけで、相手の存在を感じることができるのです。
触れることは、それだけでコミュケーションがとれる行為なわけです。
その為、お母さんやお父さんが自分の子をなでたり、抱いたり、キスしたりすることは、一方的に触ってコミュニケーションをとっているということではなく、親子で互いの存在を確認し合うことも意味しているのです。
触れること、また触れられることによるお互いの存在の確認は、他人との間にも起こります。
たとえば電車の中で、隣にいる赤ちゃんに好奇心いっぱいの様子で頬を触られたら、「この赤ちゃん、私という存在を恐れていないんだ」と思うことでしょう。
この時、赤ちゃん(他者)と自分の存在を感じ、確認したわけです。
別の例でいうと、自分の好きなアイドルと握手して、「この手は絶対洗いたくないです!」と興奮するファンの気持ちは、アイドルと自分が握手し、皮膚を触れ合わせたことで得た一体感によって気持ちが高められたともいえます。
このようなことから、「触れる」ということの大きさを知り、触覚は肌を通してコミュニケーションをとるという役割を担っているといえます。
そうしたコミュニケーションの中で、私たちは相手の存在を認識すると同時に、自分の存在も感じ取るわけです。
《 監修 》
山口 創(やまぐち はじめ) 教授
桜美林大学リベラルアーツ学群 教授、博士(人間科学)、臨床発達心理士。
オキシトシンを分泌させる触れ方、ストレスや痛みを癒す皮膚感覚について研究。
子育て、医療、セラピーなど多数の現場で研究・講演活動中。
『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)、『子育てに効くマインドフルネス』(光文社新書)など多数執筆
▶HP http://www2.obirin.ac.jp/y-hajime/
橋爪 あき(はしづめ あき) 睡眠改善インストラクター
慶應義塾大学卒業。
一般社団法人日本眠育普及協会代表、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、
日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、NPO法人SASネットワーク理事。
睡眠知識の広報活動、講演、執筆、メディア・企業の企画協力などを行う。
▶HP https://min-iku.com/