2021.12.03
せきは、気道に入った異物や気道の分泌物を外に出すための自然な防衛反応です。
しかし、かぜや気管支炎などでせきが続くと体力を消耗し、眠ることも難しくなりますので、せきが続くことは好ましいとはいえません。
そのような時に使われるのが、鎮咳薬(ちんがいやく/せき止め)や去痰薬(きょたんやく)です。
せきは2種類の症状に分けられ、乾いたせきと湿ったせきがあります。
イメージは、乾いたせきが「コホンコホン」というせき、湿ったせきは「ゲホゲホ」と痰(たん)が絡むようなせきです。
乾いたせきが出ている時に使われるのが鎮咳薬、湿ったせきが出ている時に使われるのが去痰薬です。
作用を応用して、慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)の排膿(はいのう)などにも使われます。
鎮咳薬にはいくつか薬のグループがありますが、現在、子ども(12歳未満)に使われるのは非麻薬性鎮咳薬と呼ばれるグループの薬です。
ただし、非麻薬性鎮咳薬の中でもコデインという成分などが含まれる薬は、副作用の懸念から2019年以降、12歳未満の子どもには使わないことになりました1)。
コデインなどは市販の大人用のかぜ薬やせき止め薬に含まれているので、家庭に常備している薬をお子さんに飲ませないよう注意が必要です。
せきは体を守る反応でもあるので、軽度~中等度のせきの場合は鎮咳薬をできるだけ使用しない方がよいです。
咳がひどく、より具合が悪くなった場合や、長期でせきが続く場合に使います。
去痰薬は鼻汁やたんを柔らかくするので、効果があれば使用してよいと思いますが、分泌物が柔らかくなって逆につらくなるときには使わない方がよいです。
鎮咳薬 | 去痰薬 |
・乾いたせきが出ている時に使われる ・「コホンコホン」 |
・湿ったせきが出ている時に使われる ・「ゲホゲホ」 |
・脳のせき中枢に直接作用して、せきが出るのを抑える | ・たんの粘っこい性質を変化させ、たんを出しやすくする |
・軽度~中等度のせきの場合は鎮咳薬をできるだけ使用しない方がよい ・せきがひどく、より具合が悪くなった場合や、長期でせきが続く場合に使う |
・鼻汁や痰を柔らかくするので、効果があれば使用してよいが、分泌物が柔らかくなって逆につらくなるときは使わない方がよい |
鎮咳薬や去痰薬を飲んでせきの症状を緩和することはできますが、原因となる風邪、喘息、気管支炎等の病気自体が治るわけではありません。
この記事では、2021年現在子どもに使われる主な鎮咳薬・去痰薬を紹介します。
薬は処方された内服に沿って飲みましょう。
薬を飲み忘れてしまった時は、「数時間であれば、気が付いたその時点で飲ませる」「医師や薬剤師に相談してみる」「#8000のような医療相談窓口に問い合わせる」など確認をして対応しましょう。
なお、ぜんそくや鼻、胃、食道などの病気でせきが出る場合、原因となっている病気の治療が主体となりますが、補助的に鎮咳薬・去痰薬が使われる場合もあります。
など
<薬の形状>散、シロップ、ドライシロップ、錠剤
<特徴>
脳のせき中枢に直接作用して、せきを抑える薬です1)。
<注意>尿が赤色に変わることがありますが、役目を終えた薬が出てきた色なので、心配ありません2)。
<薬の形状>
散、シロップ、ドライシロップ、錠剤
<特徴>
脳のせき中枢に直接作用して、せきを抑える薬です1)。
<注意>
決められた飲み方、量、回数を守りましょう。
<薬の形状>
散、細粒、配合シロップ、錠剤
<特徴>
脳のせき中枢に直接作用して、せきを抑える薬です1)。
<注意>
市販のかぜ薬にはデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を含む薬があります。医療機関で処方された薬と一緒に飲まないように気をつけましょう。
<薬の形状>
散、錠剤
<特徴>
脳のせき中枢に直接作用して、せきを抑える薬です1)。子ども用の錠剤は四角形をしています。
<注意>
眠気が現れることがありますので、お子さんの様子に注意しましょう2)。
<薬の形状>
シロップ、ドライシロップ、細粒、錠剤
<特徴>
気道の粘液の成分を調整する働きや、障害された粘膜を正常にする働きがあります1)。
<注意>
市販のかぜ薬にはカルボシステインを含む薬があります。医療機関で処方された薬と一緒に飲まないように気をつけましょう。
ドライシロップの場合、水に混ぜたら、すぐに飲みましょう2)。
<薬の形状>
シロップ、ドライシロップ、内用液、錠剤
<特徴>
肺や気道の分泌液を増やすとともに、ベルトコンベヤーのように外に運び出す「線毛運動」を促進します1)。
<注意>
市販のかぜ薬にはアンブロキソール塩酸塩を含む薬があります。医療機関で処方された薬と一緒に飲まないように気をつけましょう。
<薬の形状>
細粒、シロップ、錠剤
<特徴>
気道の分泌液を増やす、たんを柔らかくするなどして、たんを出しやすくします1)。
<注意>
市販のかぜ薬にはブロムヘキシン塩酸塩を含む薬があります。医療機関で処方された薬と一緒に飲まないように気をつけましょう。
<薬の形状>
シロップ
<特徴>
気道の分泌液を増やして、たんを出しやすくする生薬です2)。
<注意>
大量に飲むと吐き気や下痢などが現れるので、決められた量や回数を守りましょう2)。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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