2021.12.27
目次
水ぶくれは、手、足、口の中以外のおしりやひじ、膝にもできることがあります1,2,3)。
口の中の水ぶくれがこわれて潰瘍になると、痛みで食べ物が食べられなくなることがあります。
原因は、腸で増殖するエンテロウイルスの感染ですが、複数の種類や型のエンテロウイルスが引き起こすため、一度手足口病になって免疫ができても他の種類のエンテロウイルスの感染により繰り返しかかることがあります3)。
主に夏に流行しますが、秋から冬にも多少みられることがあり、また、数年に一度全国的な流行がみられます3)。
保育園や幼稚園などで集団感染することもあります1)。
ほとんどの場合、7~10日で治る病気です4)。
主な病原は、コクサッキーウイルスA6型、A16型とエンテロウイルス71型で、その他、コクサッキーウイルスA10型が原因になることもあります。3,5,6)。
手足口病は、患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスによって感染したり(飛沫感染/ひまつかんせん)、水ぶくれの内容物や便に排出されたウイルスが手などを介し、口や眼などの粘膜に入ったりして感染します(経口・接触感染)7)。
人間のみに感染する病気で、家庭内での感染と4)、保育園や幼稚園などでの集団感染がみられます1)。
手足口病では、感染してから3~5日後に口の中、手のひら、足の甲や裏に直径2~3ミリほどの水ぶくれができます。
発熱は高くないことが多く、1~2日で熱は下がります。また、発熱しないこともあります。
ほとんどの場合、7~10日で治ります。4)
合併症としては📖ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)が比較的多いです。
小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、弛緩性麻痺(しかんせいまひ)などの合併症は重症ですが発症はまれです1,5)。
中枢神経系の合併症は、エンテロウイルス71型が原因となった場合に多いことが分かっています5)。
コクサッキーウイルスA6型による手足口病では、感染してから数週間後にツメがはがれることがありますが、自然に治るといわれています3,5)。
診断がつきにくい場合には、水ぶくれの内容物、咽頭ぬぐい液、便、血液などの検体からウイルスの種類や型を調べることがあります3,4)。
基本的には軽い病気であるため、経過観察や対症療法(疾病の原因に対してではなく、主要な症状を軽減するための治療)が行われます5)。
対症療法を行いながら、少量ずつ・頻回の水分補給を行い水分不足にならないようにすることが最も大切です。
発熱は解熱剤を用いずに経過観察ですむことが多いです3)。
そこで、予防では手洗いの励行が大切になります。
特に、おむつ交換や排便の後、食事前には流水と石けんでしっかりと手洗いを行うようにします。
このほか、タオルやコップの共用も避けます4,5)。
また発症後1週間程度は周囲の人にうつしやすくなり8)、ウイルスが、のどからは1~2週間、便からは3~5週間排出されます9)。
感染しても症状が出ない不顕性感染(ふけんせいかんせん)の人からもウイルスが排出されるので注意が必要です5)。
ホームケアでは、以下の対応をこころがけます2)。
熱いもの、オレンジジュースなどのすっぱいものはしみるので避け、さましたみそ汁・スープ、リンゴジュースなどがよい。
少量を頻回に飲ませること。
尿の回数・量・色(濃い色ではないか)で判断する。
口の中が痛いので、食べ物は熱いもの、すっぱいもの、塩からいもの、かたいものは避ける。
冷たくてのど越しのよい、冷ましたおじや、とうふ、軟らかくしたうどん、うらごししたバナナ、ゼリーなどを与える。
また、以下のような様子がみられたら、もう一度診察を受けましょう1,2)。
(1) 4日以上高熱が続く
(2) 水分をあまり取らず、ぐったりする
(3) 吐き続けて、ぐったりする
(4) 頭痛がする
熱がなく元気で、普段の食事が取れる場合は、登園・登校できます。
ただし、集団感染を防ぐために園でルールが決められている場合もあります。登園・登校の時期については、園のルールも確認してみましょう。
『参考資料』
《 監修 》
井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医
よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。
▶HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科