【医師監修】『 気管支拡張薬 』子ども(小児)の処方箋:気管支をひろげる薬。どんな時に処方されるの?

2022.01.20

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気管支拡張薬ってどんな薬?【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

気管支拡張薬はその名前のとおり、鼻から肺までの空気の通り道(気道)の奥の方にある気管支を広げる薬です。

喘息(ぜんそく)の発作や気管支炎などで、気道が狭くなって呼吸が苦しい時に使われ、呼吸を楽にします。

 

 

子どもに使われる薬は大きく2つのグループの薬に分けられ、1つはβ刺激薬(べーたしげきやく)、もう1つはテオフィリンです。

効く仕組みは異なりますが、どちらも気管支の筋肉を緩めて気管支を広げます。

 

気管支拡張薬には飲み薬、吸入薬、貼り薬、注射薬があります。

気管支拡張薬に共通する副作用として、心臓がどきどきする、手が震える、吐き気・嘔吐などの症状があります。
テオフィリンを服用した場合は重い副作用としてけいれんが現れることがあります。
成分の特性と製剤の形状によって、効果の立ち上がりや持続時間、副作用などが異なります。

 

対象となる病気や症状、お子さんの年齢などに応じて、適した薬が処方されます。

 

例えば喘息(ぜんそく)の場合は、治療の主役は気道の炎症を抑える薬(吸入ステロイド薬など)で、気管支拡張薬は補助的な位置づけです1)

 

発作をくり返す場合に気管支拡張薬を追加して呼吸が楽になっても、「気管支拡張薬の方が効くみたい」と思い、炎症を抑える薬(吸入ステロイド薬など)を自己判断で中止してはいけません。

 

 

この記事では、子どもに使われる主な気管支拡張薬(注射を除く)を紹介します(2021年11月時点)。

薬を使い始めて何か気がかりなことがあれば、医師、薬剤師に相談しましょう。

気管支拡張薬がよく処方される病気

急性気管支炎、📖気管支喘息(ぜんそく)、慢性気管支炎、喘息様気管支炎

など

気管支拡張薬の種類:β刺激薬(べーたしげきやく)

メプチン(プロカテロール塩酸塩水和物)

<薬の形状>
シロップ、ドライシロップ、顆粒、錠剤、吸入液、エアー/キッドエアー/スイングヘラー(吸入器と一体の吸入薬)
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。多種類の形状があります。
<注意>
それぞれの薬の形状ごとに使い方が異なります。所定の使い方を守って正しく使いましょう。

 

ホクナリン(ツロブテロール)

ホクナリン/ベラチン(ツロブテロール塩酸塩)

<薬の形状>
テープ、ドライシロップ、錠剤
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
気管支を広げる薬では唯一のテープがあります。
<注意>
テープは、かぶれることがありますので、毎回貼る場所を変えましょう2)

 

ベネトリン/サルタノール(サルブタモール硫酸塩)

<薬の形状>
シロップ、吸入液、インヘラー(吸入器と一体の吸入薬)
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
<注意>
吸入薬を喘息の発作や症状の悪化(呼吸困難、激しい咳など)に使用する場合、重篤で吸入の効果が不十分な場合には、できるだけ速やかに医療機関を受診してください2)

 

セレベント(サルメテロールキシナホ酸塩)

<薬の形状>
ロタディスク(専用吸入器にセットして使う吸入薬)、ディスカス(吸入器と一体の吸入薬)
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
1回の吸入で作用が12時間持続するのが特徴です3)
<注意>
なるべく同じ時間帯に吸入します2)

 

ブリカニール(テルブタリン硫酸塩)

<薬の形状>
シロップ、錠剤
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
<注意>
主な副作用として腹痛、発疹などがあります。
このような症状に気づいたら、医師や薬剤師に相談しましょう2)

 

ベロテック(フェノテロール臭化水素酸塩)

<薬の形状>
ドライシロップ(後発品)、エロゾル(吸入器と一体の吸入薬)
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
<注意>
吸入薬は発作時に吸入する薬です。
1回吸入しても6時間以内に息が苦しくなるようなら、喘息がひどくなっているサインですので、すぐに医師に相談してください2)

 

スピロペント(クレンブテロール塩酸塩)

<薬の形状>
錠剤
<特徴>
気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
<注意>
手足のふるえ、発疹、筋肉のこわばり、頭痛、動悸、吐き気などが現れることがありますので4)、このような症状に気づいたら医師や薬剤師に相談しましょう。

気管支拡張薬の種類:テオフィリン

テオドール(テオフィリン)

<薬の形状>
シロップ、ドライシロップ、顆粒、錠剤
<特徴>
気管支の拡張、呼吸中枢の刺激などの作用で呼吸を楽にする薬です2)
<注意>
てんかんやけいれんを起こしたことがあるお子さん、熱があるお子さんは、この薬を使用する前に必ず医師と薬剤師にその旨を伝えます2)
以前にテオフィリンなどのキサンチン系の飲み薬や注射でショックやけいれんを起こしたり、意識を失ったりしたことがあるお子さんも同様です2)

 

『参考資料』

1) 日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020.協和企画.2020
2) くすりの適正使用協議会.くすりのしおり.
(2021年10月22日閲覧:https://www.rad-ar.or.jp/siori/index.html
3) セレベント添付文書
4) スピロペント添付文書

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。

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