【医師監修】『 抗ウイルス薬 』子ども(小児)の処方:インフルエンザ、単純疱疹など
抗ウイルス薬ってどんな薬?【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
病気を引き起こす原因の一つであるウイルスは、細菌よりもずっと小さく、遺伝子とそれを包むたんぱく質でできています。
生きた細胞に侵入(感染)し、自分のコピーを次々に作って増殖します。
はしかや水ぼうそう、インフルエンザといった病気はウイルスが原因で起こります。
抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える薬です。
子どもによく使われるのは、抗インフルエンザウイルス薬(抗インフル薬)と抗ヘルペスウイルス薬です。
前者はインフルエンザに、後者は水ぼうそう(水痘=すいとう)、唇の周りなどに赤いぶつぶつや水ぶくれができる単純疱疹(たんじゅんほうしん=ヘルペスとも言います)などに使われています。
抗インフル薬の一般的な特徴をまとめると、次のようになります。
・症状が現れてから48時間以内に使い始める
・症状がよくなる(例えば、熱が37.5℃未満に下がる)までの期間が、薬を使わない場合よりも約1日早くなる
・インフルエンザのA型、B型どちらにも効く
・主な副作用として下痢、吐き気などがある
・重大な副作用として、急に走り出すなどの異常行動が報告されている※
※異常行動はインフルエンザにかかったこと自体で生じることもあり、薬が原因かどうかは不明ですが、子どもを一人にしないようにするなどの注意が必要です。
一方、抗ヘルペスウイルス薬の一般的な特徴は、水ぼうそうを起こすウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)や唇の周りの単純疱疹を起こすウイルス(単純疱疹ウイルス)の増殖を抑える働きがあります。
抗ヘルペスウイルス薬も、症状が出たら早めに使い始めるのが効果的です。
この記事では、子どもに使われる抗ウイルス薬の抗インフル薬と抗ヘルペスウイルス薬を紹介します(2021年時点)。
薬を使い始めて何か気がかりなことがあれば、医師・薬剤師に相談しましょう。
抗ウイルス薬の種類(抗インフルエンザウイルス薬)
タミフル(オセルタミビル リン酸塩)
<薬の形状>
ドライシロップ、カプセル
<特徴>
インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。
インフルエンザの治療には1日2回、5日間飲みます。
<注意>
少なくとも発熱から2日間、お子さんの転落などを防止する対策をとります1)。
イナビル(ラニナミビル オクタン酸エステル水和物)
<薬の形状>
吸入粉末剤、吸入懸濁用(霧状になった薬を口から吸う)
<特徴>
インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。
1回の吸入で治療が完了します。
<注意>
吸入の方法を誤ると効果が期待できないので、医師・薬剤師の説明を聞いて正しく吸入しましょう。
少なくとも発熱から2日間、お子さんの転落などを防止する対策をとります1)。
ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)
<薬の形状>
錠剤、顆粒(未発売)
<特徴>
インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。
1回の内服で治療が完了します。
他の抗インフル薬とは効く仕組みが異なります。<注意>
少なくとも発熱から2日間、お子さんの転落などを防止する対策をとります1)。
リレンザ(ザナミビル水和物)
<薬の形状>
吸入薬
<特徴>
インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。
治療には1日2回、5日間吸入します。
<注意>
少なくとも発熱から2日間、お子さんの転落などを防止する対策をとります1)。
ラピアクタ(ペラミビル)
<薬の形状>
注射薬
<特徴>
インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。
1回の注射で治療が完結しますが、合併症や症状により2回(2日間)以上使用することもあります。重症の場合や重症化する恐れのある場合などに使われます。
<注意>
少なくとも発熱から2日間、お子さんの転落などを防止する対策をとります1)。
抗ウイルス薬の種類(抗ヘルペスウイルス薬)
ゾビラックス(アシクロビル)
<薬の形状>
顆粒、シロップ、ドライシロップ、錠剤、内服ゼリー、軟こう、クリーム、眼軟こう、注射薬
<特徴>
単純疱疹ウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える薬です。
さまざまなタイプの形状があります。<注意>
それぞれの形状ごとに使い方が異なります。所定の使い方を守って正しく使いましょう。
バルトレックス(バラシクロビル塩酸塩)
<薬の形状>
顆粒、錠剤
<特徴>
単純疱疹ウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える薬です。
<注意>
服薬中は普段よりも多めに水分をとりましょう1)。水分制限を指導されている場合は医師・薬剤師に相談しましょう1)。
アラセナ-A(ビダラビン)
<薬の形状>
軟こう、クリーム、注射薬
<特徴>
単純疱疹ウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える薬です。
軟こうとクリームは唇の周りのヘルペス(単純疱疹)などに使われます。<注意>
塗ったところに接触皮膚炎(かぶれ)、刺激感、かゆみなどが現れたら、医師・薬剤師に相談しましょう1)。
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