『 保湿薬 ・皮膚保護薬』子ども(小児)の処方箋:乾燥や痒みなどの皮膚トラブル【医師監修】
保湿薬・皮膚保護薬ってどんな薬? 【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
アトピー性皮膚炎の子どもの皮膚は乾燥しているのが特徴です1) 。
皮膚に加わる様々な刺激や皮膚からのアレルギー物質の侵入によって、かゆみや炎症が生じやすい状態になっています。
そこで、皮膚表層の水分量を高めて乾燥肌を改善し、皮膚がもともと持っている「バリア機能」を回復させようというのが、保湿薬・皮膚保護薬です(単に「保湿薬」とまとめて言うこともあります)。
保湿薬は保湿成分が皮膚に浸透して水分量を増加・保持し、皮膚保護薬は油脂性の軟膏で皮膚を覆い、水分が蒸発しないようにします。
例えば、保護者の皆さんでも知っている方が多い「ヒルドイド」は保湿薬、「白色ワセリン」は皮膚保護薬に当たります。
これを1日2回あるいは3回など、医師から指示された回数を塗りますが、そのうちの1回は、入浴後の皮膚が湿っている時間に塗るとよいとされています2) 。
塗る量は、一般的には「塗った箇所にティッシュペーパーが貼り付いて落ちないくらい」がよいとされています2) 。
もちろん、皮膚の状態によって異なるので、担当医に聞いてみましょう。
💡外用薬や保湿薬の塗り方のコツ2)
・入浴後の皮膚が湿っている時間に塗ると良い
・塗る量はテッシュが張り付いて落ちないくらいが目安
・薄く伸ばしたり、すり込まないで、たっぷりと皮膚に乗せるようにして塗る
・塗る人は手をきれいに洗う
・頭皮にローションタイプの薬や保湿剤を使う場合は、髪の毛を分けて地肌につけて塗る
・皮膚の症状によって塗り方や塗る量は異なるため、薬を貰うときに医師・薬剤師に確認しましょう
皮膚の炎症を抑えるステロイドの塗り薬(📖ステロイドの塗り薬の記事はこちらから)と、日ごろから皮膚をケアする保湿薬・皮膚保護薬は「車の両輪」と言え、アトピー性皮膚炎治療の基本です1) 。
保湿薬・皮膚保護薬を適切に使用すれば、炎症の再燃や皮膚からアレルギー物質が侵入するのを抑えることにつながります1) 。
この記事では、子どもに使われる主な保湿薬・皮膚保護薬を紹介します(2022年4月時点)。
主な保湿薬の種類
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)
<薬の形状>
クリーム、ソフト軟膏(油性クリーム)、ローション、フォーム
<特徴>
皮膚に水分を保持させる作用があり、乾燥性の症状に対する塗り薬として子どもから高齢者まで使われています。形状も豊富です。
<注意>
主な副作用として、皮膚炎、かゆみ、発赤、発疹などが報告されています3) 。このような症状に気づいたら、医師・薬剤師に相談しましょう。
ケラチナミン/ウレパール/パスタロン(尿素)
<薬の形状>
クリーム、ローション、ソフト軟膏
<特徴>
有効成分の尿素が皮膚の水分保持量を増加させます。有効成分の濃度が20%の製品(ケラチナミン、パスタロン)と10%の製品(ウレパール、パスタロン)があります。
<注意>
主な副作用として、ぴりぴり感、紅斑、かゆみなどが報告されています3) 。このような症状に気づいたら、医師・薬剤師に相談しましょう。
ザーネ(ビタミンA)
<薬の形状>
軟膏
<特徴>
皮膚の新陳代謝を高めるなどして、皮膚の乾燥を改善します2) 。
<注意>
主な副作用として、ぴりぴり感、紅斑、かゆみなどが報告されています2) 。このような症状に気づいたら、医師・薬剤師に相談しましょう。
主な皮膚保護薬の種類
アズノール(ジメチルイソプロピルアズレン)
<薬の形状>
軟膏
<特徴>
抗炎症作用、傷が治るのを助ける作用、抗アレルギー作用などがあります3)。おむつかぶれ、日焼けや軽度の熱傷によく使われますが、ベタっとした油脂性の軟膏である点を活かし、皮膚保護薬としても使われます1)。
<注意>
淡青色~淡青緑色の軟膏剤で、製品ごとに色や硬さに多少の違いがありますが、効果に変わりはありません3)。
白色ワセリン/プロペト(白色ワセリン)
<薬の形状>
軟膏
<特徴>
有効成分を含まないシンプルな油脂性軟膏で、皮膚を覆い保護します。油脂の純度が高い「プロペト」もあります。
<注意>
主な副作用として、接触皮膚炎(かぶれ、発疹、皮膚のかゆみ)が報告されています3) 。このような症状に気づいたら、医師・薬剤師に相談しましょう。
亜鉛華(あえんか)軟膏/亜鉛華単軟膏/サトウザルベ軟膏10%、20%(酸化亜鉛)
<薬の形状>
軟膏
<特徴>
収れん作用(タンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める作用)があるので、止血、鎮痛、防腐などの効果があります。主成分の濃度が10%(亜鉛華単軟膏、サトウザルベ10%)と20%(亜鉛華軟膏、サトウザルベ20%)の2タイプがあります。病気に合わせてステロイド剤や抗菌薬等と組み合わせて使うこともできます。
<注意>
主な副作用として、過敏症状、発疹(ほっしん)、刺激感などがあります3) 。このような症状に気づいたら、医師・薬剤師に相談しましょう。
《 監修 》
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松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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