2023.05.07
1. 川崎病 とはこんな病気
2. 川崎病 の原因と症状
3. 川崎病 の検査でわかること
4. 川崎病 の治療法と薬
5. 川崎病 のホームケアと予防
川崎病は、主に4歳以下の乳幼児がよくかかる全身の血管に炎症がおこる病気です1) 。
女の子よりも男の子で発病が多く、1歳前後でかかることが最も多いです。
小学校入学後もかかることがありますが2) 、10歳を過ぎるとかかることは少なくなります3) 。
全国で年間1万人程度の子どもが新たに発病しています1) 。
川崎病では、発熱や発疹、首のリンパ節の腫れなどの様々な症状が出ますが、かかってから数日程度で自然に良くなって行くことが多いです。
しかし、重症になった場合に心臓に障害が出ることがあります1,2) 。
川崎病の原因はまだ分かっていません。
感染症や環境因子が原因になると考えられていますが2,4) 、現在のところ細菌やウイルスなどの病原体は発見されていません。
ただ、家族に川崎病の人がいること、白人に少なく日本人に多いこと、なりやすい遺伝子の型があることなどから、何らかの川崎病になりやすい体質がある人が、感染症や環境因子の影響を受けたことをきっかっけにして、かかるのではないかといわれていますが、詳しいことは分かっていません2) 。
▼川崎病の主な症状は、次の6つです(図1)1,2,5) 。
図1:川崎病でよくみられる症状
これらの6つの症状は、すべて全身の血管の炎症に伴う症状と考えられています1) 。
BCG接種後半年以内に川崎病にかかった場合は、BCG部分が赤くなって膿やかさぶたができることもあります2) 。
川崎病では、心臓、肝臓、胆のうなどにいろいろな合併症がみられます。
合併症の多くは、熱が下がって病気がよくなると治ってきます。
合併症の中で最も重大なものは心臓の障害です。
心臓の筋肉に栄養を届ける血管(冠動脈:かんどうみゃく)が広くなってこぶのようになる冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)、心臓の筋肉に炎症が起こる心筋炎(しんきんえん)、心臓の中の弁が異常となる弁膜炎(べんまくえん)が起こることがあります。
治療をしないと、発熱から1週間前後で約25%の子どもに冠動脈瘤がみられるようになりますが、約1カ月で小さくなります。病変がもとに戻った場合はあまり心配いりません2) 。
しかし、全体の約0.1%の子どもでは、冠動脈瘤が残り、将来的に血管が狭くなったり(狭窄:きょうさく)、血のかたまり(血栓:けっせん)で冠動脈が詰まったりするなどして、狭心症や心筋梗塞を起こす危険性が高くなります 4) 。
先にあげた6つの主な症状のうちの5つ以上があれば川崎病と診断します。
主な症状が4つしかなくても、心エコー検査や冠動脈血管造影(かんどうみゃくけっかんぞうえい)検査で、心臓の冠動脈にこぶがみられる場合には川崎病と診断します2) 。
また、主な症状が4つで冠動脈のこぶがない場合や主な症状が3つで冠動脈にこぶがない場合には、血液検査や尿検査で肝機能などを調べて川崎病の兆候に有無を確認でき、ほかの病気が否定できる場合には、不完全型川崎病と診断します。
さらに、主な症状が3つで、冠動脈にこぶがある場合にも不完全型川崎病と診断します(図2)6,7) 。
図2:主な症状による川崎病の診断
川崎病の治療は、冠動脈のこぶ(冠動脈瘤)の予防(発症の抑制)を第一の治療目標にして入院のうえ行います。
治療には、ヒト免疫グロブリンの点滴静注(ヒト免疫グロブリン大量療法)と、アスピリン(アセチルサリチル酸)などの血液が固まりにくくなる抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)を用い、熱が出てから9日以内に行います。ただ、ヒト免疫グロブリン大量療法でもよくならない場合があります。その場合には、ステロイドホルモンや免疫抑制剤などで治療します2) 。
冠動脈瘤ができてしまった場合には、長期間の抗血小板薬と定期受診と検査が必要です。
心臓カテーテルや血管の手術が必要な場合もあります2) 。
子どものときに川崎病になった人は、大人になってから動脈硬化が起こりやすくなるのではないかと考えられています。
川崎病にかかったことがあるお子さんが、お子さんが理解できる年齢になったら、定期受診が必要なことや、動脈硬化のリスクとなる喫煙、肥満、運動不足などに大人になっても注意するよう伝えることが大切です 2) 。
発疹や手足の腫れ・赤みなどは、病院やクリニックを受診した時には目立たなくなる場合があります。発熱後、症状が出たらスマートフォンなどで写真を撮っておき、受診時に主治医の先生にみせましょう7) 。
また、同じ家や部屋にいたからといってうつる病気ではありません5) 。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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