2023.01.11
2. 風疹(風しん) の原因と症状
3. 風疹(風しん)の検査でわかること
4. 風疹(風しん) の治療法と薬
5. 風疹(風しん) のホームケアと予防
風疹は、三日ばしかと呼ばれることもある風疹ウイルスによって引き起こされる感染症(伝染病)です1) 。
風疹にかかりやすい年齢は0歳~9歳で、4歳以下の感染が約50%を占めています2) 。
以前は、数年ごとに春から初夏にかけて、流行がみられましたが、2006年から麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の定期接種が開始されたため、ほとんどみられなくなっていました。
しかし、定期接種が始まった後も2012年、2013年、2018年に全国で大きな流行が起こりました。
この流行は、風疹ワクチンの定期接種が行われていなかった世代や、これまで風疹にかかったことのない人など、風疹に対する免疫のない人が感染したために起きたと考えられます。
そこで、今後も免疫のない人や低い人を中心に起こる流行に注意が必要です3,4)。
風疹の病原体は、風疹ウイルスです。
感染経路は、患者さんの咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染(ひまつかんせん)が主ですが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることで感染する接触感染もあります4)。
風疹ウイルスに感染すると、2~3週間の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節の腫れ(リンパ節腫脹)の症状が出ます(発症)(図1)1) 。
図1:風疹の主な症状
発熱は、約半数の子どもにみられるほか、感染しても症状が出ないこともあります(不顕性感染:ふけんせいかんせん)。
まれに、関節炎や血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう:血小板という血液の成分が少なくなり、紫色の斑点が皮膚に出る)、急性脳炎などの合併症を起こすこともあります。
なお、関節炎、急性脳炎は、成人に多い合併症です4,5)。
風疹は、一度感染すると、その後生涯感染することはありません4)。
風疹で問題となるのは、妊娠初期の女性が感染すると、先天性風疹症候群という先天性の障害が赤ちゃんにみられることがある点です1) 。
そこで、妊婦さんでは風疹の予防接種を受けたか受けないかに関わらず、風疹患者に接触しないようあらゆる対策を講じることが重要になります。
先天性風疹症候群では、先天性の目の病気(白内障、緑内障、網膜症:目の奥の網膜の異常)、先天性の耳の病気(難聴)、先天性の心臓の病気(動脈管開存症/どうみゃくかんかいぞんしょう):生まれたら2~3週間で閉じるはずの心臓の動脈管という血管が開かれたままになり心臓や肺に負担がかかる〕のような障害が残る病気のほか、低出生体重(小さく生まれる)、血小板減少性紫斑病などの自然に治ることも多い症状もみられます(図2)1,6) 。
図2:先天性風疹症候群の主な病気と症状
先天性風疹症候群が起こる確率は、妊娠1カ月で50%以上、妊娠2カ月で35%、妊娠3カ月で18%、妊娠4カ月で8%であり、妊娠20週を過ぎると起こらなくなるといわれています(図3)1) 。
図3:妊娠期別の先天性風疹症候群が起こる確率
また、妊娠中に風疹にかかった覚えがなくても、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれるということもあります。
これは、感染しても症状が出ない不顕性感染であったためと考えられます7) 。
胎児期や新生児期の赤ちゃんの先天性風疹症候群の診断の手がかりは、胎児エコー検査や新生児エコー検査で得られます。
先天性風疹症候群では、頭部エコー検査で、脳の中に上衣下嚢胞(じょういかのうほう)という液がつまった袋がみられます。また、まれですがエコー検査で水頭症の合併がみつかることもあります8,9) 。
風疹は、
① 全身の小さな赤い発疹など
② 発熱
③ リンパ節の腫れ
などの症状から、おおよその診断ができますが、はっきりした診断(確定診断)には、病原体の検査が必要です。
病原体の検査は下記の内容を行います。
ウイルスによる感染症(伝染病)である風疹を根本から治療する薬はありません。
そこで、症状を和らげる対症療法が行われます。
発疹のかゆみには抗ヒスタミン薬、関節炎には消炎鎮痛薬の内服薬が処方されます。
風疹の予防では、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を1歳と小学校入学前に1年以内に2回接種します。
日本では、ワクチン未接種や1回接種のみの人もいるので、先天性風疹症候群予防のためにも2回の接種が勧められます。
特に、①妊婦のパートナー、子ども、同居家族、②妊娠を希望する女性や可能性の高い女性は、2回接種することが大切です1) 。
なお、妊娠中にはワクチン接種は避けなければなりません。また、ワクチンの接種前の約1カ月と接種後の約2カ月は避妊するようにしましょう1,10) 。
妊娠中で、風疹に対する抗体の量(抗体価)が低い場合には、不要不急の外出を避けて人ごみに近づかない、風疹を思わせる症状が出た時には主治医の先生に相談するなどの対応を心がけましょう10) 。
風疹の予防は、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種によって行います。
家庭などでは以下のような対応をします1.11) 。
(1) 発疹のかゆみには抗ヒスタミン薬、関節炎には消炎鎮痛薬を使います。
(2) 発疹が消えたら、主治医の先生の許可を得て登園・登校します。
(3) 妊娠前半の人にうつさないように注意します。
(4) 食事その他は、いつもと同じ生活でかまいません。
また、以下のような様子がみられたら、もう一度診察を受けましょう11) 。
なお、上記の(5)と(6)で再診する前には、感染予防のためクリニックや病院に受診方法を電話で確認してください。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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