2023.04.20
目次
「てんかん」は、発作を繰り返す慢性の病気です。
小児期はけいれん(痙攣)を起こしやすい時期ですが、けいれん発作のすべてがてんかんではありません。
たとえば発熱時に起こる熱性けいれんは、てんかんと区別します。
また、他の神経の病気でも(例えばインフルエンザ脳症など)けいれんを起こします。
新生児はもっともけいれんを起こしやすい時期ですが、けいれん発作の多くは新生児仮死、低酸素性虚血性脳症、低血糖、頭蓋内出血、新生児脳梗塞などが原因です。
てんかんの特徴は、いつも同じ症状であるため、両親は発作が続けて起こるとわかるようになります。
「けいれん」は、症状をしめす言葉です。
自分の意志とは無関係に手足や体が硬直したり、突っ張ったり、リズミカルにカクンカクンと手足を動かしたりたり、両方の眼球が片側に偏位したりする状態をいいます。「ひきつけ」もけいれんと同じような意味合いで使われています。
「てんかん」は、発作を繰り返す慢性の病気です。
てんかんは100人に1人の頻度で起こる身近な病気です1)。
子どもから高齢者まで幅広い年齢層にみられますが、18歳以前に発病するケースが8割を占めます1)。
自閉症や発達の遅れがあるお子さんは、小学校入学前後、中学校入学前後等にけいれんが起こりやすいといわれています。
抗てんかん薬を使うと、7~8割は発作をコントロールできるようになり1)、将来的に薬から離脱できたり、複数の薬を内服している場合には薬の種類を減らしたりすることもできます。
てんかんにはさまざまな種類があります。
簡単に分類すると良性のてんかんと、治療が難しく発達に影響するてんかんがあります。
良性とは経過がよく年齢とともに発作を起こさなくなるものです。
すなわち良性とは発作症状は強くても、「経過がよい」という意味で、発作を起こしているときは難治性のてんかんと区別ができないことも多いです。
てんかん発作には、「突然意識を失って、反応がなくなる」、「体の力が抜けて転倒する」、「一時的にぼんやりする」といった症状もあります。
発作には2種類あり、「部分発作」と「全般発作」があります。
「部分発作」は意識が保たれている場合と、意識がなくなる場合があります1)。
部分発作から全般発作に進むこともあります。これを二次性全般化といいます。
「全般発作」は発作の最初から意識がなくなるという特徴があります1)。
脳は神経細胞と神経細胞の間で常に電気信号を交わしており、情報のやり取りをしたり、体への指令を伝達したりしています。
脳内で一斉に信号が送られて混線しないように、それぞれの神経細胞がスイッチを入れたり(興奮)、切ったり(抑制)しています。
しかし、脳の一部で一斉にスイッチが入ってしまうと、興奮と抑制のバランスが崩れて、興奮性の信号が過剰になると考えられています。
興奮性の信号が過剰になると、けいれんのような症状が現れるのです。
交通事故など頭の外傷、脳血管の病気、脳腫瘍などによって、てんかんを発病することもありますが、最も多いのは、原因がはっきりしない「特発性てんかん」というタイプです。
症状としては、手足がけいれんする、手足が突っ張って体がこわばる、意識を失う、全身の力が抜ける、などがあります。
てんかんの診断には、発作の症状、発達の評価を行い、神経学的診察、脳波検査、画像検査、血液検査などを行います。
脳波検査では、てんかんに特徴的な波があるかを確認します。睡眠時の脳波が重要です。発作時の脳波をみるにはビデオ脳波検査を行うこともあります。
MRIやCTという画像検査を行い、脳の奇形、脳障害、脳腫瘍、📖水頭症などの発作の原因がないかを調べます。遺伝子の異常で起こるてんかんが考えられるときは遺伝子診断をすることもあります。
治療は📖抗てんかん薬を使います。
抗てんかん薬には、興奮性の神経の働きを鎮めたり、抑制性の神経の働きを活発にしたりする薬があります。
1種類の薬から治療を始め、効果や副作用の評価、血中濃度の測定などを行います。
💡毎日忘れないように内服し、発作を起こさないようにします。
抗てんかん薬は、決められた回数や量を守りましょう。
発作が起こらなくなっても、自己判断で薬を減らしたり中止したりするのは危険です。
また、抗てんかん薬にはそれぞれ異なった副作用があります。
眠気、肝機能障害、高アンモニア血症、唾液の増加、尿路結石、カルニチン欠乏などを起こすことがあります。
💡一番注意しなければならない副作用は薬剤熱や発疹です。
難治性のてんかんでは、脂肪を多く、炭水化物を制限するケトン食療法を行なうことがあります。
この治療により脂肪が分解されてケトン体が肝臓でつくられます。
ケトン体は神経細胞やグリア細胞で使われます。
その他、脳梁切断術などの外科的治療や迷走神経刺激装置の埋め込み術を行うこともあります。
発作が起こった時に転倒したり、入浴中の場合、溺れたりするリスクがあります。
その子の年齢やてんかんのタイプ、発作の状況、治療の効果などに応じて、医療従事者などとともに対応を考えましょう。
発作が起こってから5分ほど経過しても治まる気配がなければ、救急車を呼びます1) 。
発作を繰り返すときも同様です。
可能なら発作の様子を動画に記録しておくと、医師が病状を把握するのに役立ちます。
1)日本てんかん協会.てんかんについて.
(2022年10月閲覧:https://www.jea-net.jp/epilepsy)
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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