2023.09.01
1. 口唇裂・口蓋裂 とはこんな病気
2. 口唇裂・口蓋裂 の原因と症状
3. 口唇裂・口蓋裂 による障害は?
4. 口唇裂・口蓋裂 の検査でわかること
5. 口唇裂・口蓋裂 の治療法と薬
6. 口唇裂・口蓋裂 のホームケアと予防
新生児の500人に1人の割合でみられる異常で、決して珍しい病気ではありません 1,2) 。
哺乳がうまくいかない、言葉がうまく話せない、見た目が気になる、などの支障がみられることがありますが、最近の治療方法の進歩により、健康な人と変わりのない生活が送れ、見た目もほとんど気にならないようになります。
口唇裂、口蓋裂、顎裂を合わせて口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)といいます。
できあがる途中の段階では、顔の左右から伸びてくるいくつかの突起が顔の中央でくっつき合って(癒合:ゆごう)作られます。
口唇裂、口蓋裂、顎裂の原因は、この癒合が十分でなく、顔の中央付近に裂け目(裂:れつ)が残ってしまうことにあります。
その結果、口唇裂や口蓋裂、それに顎裂が起きてしまいます。
癒合がうまくいかない原因については、遺伝や環境の影響があるといわれていますが、詳しいことは分かっていません 3) 。
口蓋裂には、一見すると裂け目がないようにみえても、口の粘膜の下の筋肉に裂け目が起きているものもあります。
これを粘膜下口蓋裂といいます 2) 。
このような異常は、合併することも多く 3) 、口唇裂と顎裂の合併を唇顎裂(しんがくれつ)、顎裂と口蓋裂の合併を顎口蓋裂(がくこうがいれつ)、口唇裂、顎裂さらに口蓋裂の合併を唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)といいます(図1)。
図1:口唇裂、口蓋裂、顎裂の主な症状
口唇口蓋裂による障害には、以下のようなものがあります 3,4) 。
障害や顔貌の変化などでコンプレックスを持ってしまうこともありますが、治療により青年期までに障害や顔貌は改善できます。
必要に応じて心理ケアを行うこともあります。
エコー検査(超音波検査)では赤ちゃんの顔の造形や特徴をみることができるためです。
エコーの描写がうまくいけば、目の位置やあごの位置などの特徴がそのままあらわれ、口唇裂の有無がおおむね推測できます。
一方、エコー検査では赤ちゃんの口の中はうつらないため、口蓋裂は胎児診断では調べることができません 5) 。
口唇口蓋裂の診断は、出生後にはじめて確定します。
前述したように、エコー検査ですべての異常が明らかになるわけではないためです 5) 。
成長に伴ってみられるようになる変化は、追加の手術が必要な場合もありますが、形成外科手術の進歩により、手術を受けたことがほとんど分からないレベルに改善できます。
なお、治療には健康保険が使えます。
また、自治体によっては独自の補助金制度を設けているところもあります。
詳細は、お住まいの自治体の担当窓口にお問い合わせください 6) 。
口唇裂の手術は、生後3~5カ月ごろ口唇鼻形成術を行います。
口唇裂では鼻の変形がみられることが多いため、同時に手術することが多くなります。
裂け目の幅や鼻の変形の程度をみて微調整します 7) 。
片側性の唇顎口蓋裂では同時手術をすることもあります。
口蓋裂の手術は、1~1歳6カ月の間に口蓋形成術を行います。
口蓋裂の手術では、発音機能と、上あごの発達の両方に気をつける必要があり、手術が早いと発音機能はよくなりやすいのですが、上あごの発育が遅れます。
そこで、お子さんごとに最適の時期を判断して行われます 3) 。
口唇裂と口蓋裂が合併する唇顎口蓋裂の場合には、口唇裂の手術の時に軟口蓋を縫い合わせる軟口蓋癒着術を行うことも多くなっています 7) 。
口唇口蓋裂の手術の時、同時に滲出性中耳炎の手術を耳鼻科の先生と協力して手術を行うことが多いです。
表1:口唇裂、口蓋裂の主な治療と実施時期の目安
治療の種類や時期は、お子さんの状態や病院によって異なることがあります。
*口蓋床:口の中の天井の口蓋の裂け目に装着するプレートで、哺乳の補助となる。ホッツ床ともいう
お子さんに口唇口蓋裂があるとわかった時、ご両親はとても不安に思われ、心配されるかと思います 3) 。
しかし、口唇口蓋裂は、適切な時期に適切な治療を受ければ、他のお子さんと同じように生活できるようになることがほとんどです。
学校に行ったり、結婚したり、子どもを産んだりするといった社会的生活には支障がないといえます。
ただ、最終的な整容(見た目の整え)は、16~18歳の間に行われることが多いので、それまでお子さんがコンプレックスなどを持たないようにすることが大切でしょう。
口唇口蓋裂の手術を行う病院の中には、ご家族全体をサポートする部門を備えている場合があります。
そのような相談窓口を利用されることもお勧めします。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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