2023.02.15
皆さんがナッツ類と聞いて思い浮かべるのは、どのナッツでしょうか。
『ピーナッツ』や『クルミ』を思い浮かべる方が多いかと思います。
日本に出回っているナッツ類としてはその他に、カシューナッツ、ピスタチオ、アーモンド、ペカンナッツ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツなどがあります。
ナッツ類は子どもには誤嚥やアレルギーがある食材としてご存じの方も多いのではないでしょうか?
そのため、離乳食を開始しようと思っている場合や、いつ頃から食べさせたら良いのかタイミングをうかがっている親御さんはナッツ類とアレルギーに関していろいろ調べていらっしゃる方も多いと思います。
今回は、ピーナッツを中心によくある疑問点をまとめました。
どうして食物アレルギーが起きるの?
アレルギーはどのような症状が出るの?
などは、こちらの記事をチェックしてください。
しかしその後もピーナッツアレルギーは減少することはなく、2008年には逆にピーナッツの摂取開始を遅らせることでピーナッツアレルギーが増えることが報告されました。
その研究によるとピーナッツの摂取開始を遅らせていた英国と遅らせていなかった(1歳までに開始していた)イスラエルを比較したところ、英国の方がピーナッツアレルギーの発症が多かったとのことです。
その後もそれを裏付ける研究がされ、ピーナッツアレルギーの発症予防として摂取開始を遅らせない方が良いと現在は考えられており、アメリカのピーナッツアレルギー予防のガイドラインでは生後6カ月以降であればピーナッツ摂取可能とされています。
ただし重症のアトピー性皮膚炎や卵アレルギーなどのある乳児の場合は、医師に相談することをお勧めしています。
日本の食物アレルギー診療ガイドライン2021では、「食物アレルギー予防のために、離乳食開始時期や原因食物となりやすい食物の摂取開始を遅らせることは推奨されない」とあります。
授乳・離乳の支援ガイド(厚生労働省2019年改定)では離乳食開始は生後5~6カ月が適当であるとしていますが、ピーナッツについては、いつからが良いのかという記載はありません。
日本アレルギー学会を含む世界の10の学会による声明「ピーナッツアレルギー発症予防に関するコンセンサスステートメント」が2015年に出されており、日本アレルギー学会のホームページに掲載されています。
その中では「ピーナッツアレルギーが多い国では、乳児期早期(4~11カ月)のピーナッツ摂取開始を推奨する」とあります。
しかしピーナッツに関して、日本では離乳食として積極的に食べる文化がないことや欧米と比べてピーナッツアレルギーの有病率が低いため、ピーナッツはいつから開始するのが良いかは明記されていない状況です。
離乳食として始める場合は、ペースト状のものを少しずつ試すことが現実的でしょう。
ピーナッツは丸のみするとのどに詰まり、誤嚥性肺炎を起こすことがあるため、注意をしてください。
ナッツ類を一括りにして避ける必要はありません。
ピーナッツはマメ科であるのに対し、クルミとペカンナッツはクルミ科、カシューナッツとピスタチオはウルシ科、アーモンドはバラ科、マカダミアナッツはヤマモガシ科、ヘーゼルナッツはカバノキ科といった具合に種類が異なり、原因となるタンパク質の交差抗原性*が低いためです。
そのためピーナッツにアレルギーがあったとしても、他のナッツ類を過剰に避ける必要はありません。
もし摂取することが不安であれば、医師に相談してください。
ただし「クルミとペカンナッツ」、「カシューナッツとピスタチオ」は交差抗原性があるため注意が必要です。
アレルギーを専門とする医師を対象とした即時型食物アレルギー全国モニタリング調査によると、木の実類のアレルギーは日本で増加傾向にあり(原因食物として木の実類は2014年3.6%、2017年8.2%、2020年13.5%)、特にクルミのアレルギーが増えています。
また世界的にもクルミアレルギーは増加傾向にあります。
なぜクルミアレルギーが増えているのかについては、洋菓子などでナッツ類を使ったお菓子が増えて摂取の機会が増えたこと(消費量の増加)や血液検査などの精度が上がって診断しやすくなったことなどがいわれていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
2023年度以降クルミについては、食品のアレルギー表示の「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に移行する見込みとのことです。
2023年3月~
食物アレルギーの義務表示対象品目(特定原材料)が、「えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)」の8品目となりました。「くるみ」のアレルギー表示が義務になりました。参考(2024年2月閲覧:消費者庁:食品表示法等(法令及び一元化情報))
《執筆・監修》
小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医
防衛医科大学校卒業。
山梨大学 社会医学講座
アレルギー専門医
専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健
保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。
この事業は全国統一の短縮番号♯8000をプッシュすることにより、お住いの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。
厚生労働省ホームページ:子ども医療電話相談事業(♯8000)について