赤ちゃんの『 臍ヘルニア (さいへるにあ/でべそ)』はどんな病気?治療は必要?【医師監修】

2023.07.26

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『 臍ヘルニア (さいへるにあ/でべそ)』とは?【監修】松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

目次

1.  臍ヘルニア とはこんな病気

2.  臍ヘルニア の原因と症状

3.  臍ヘルニア の治療法

4.  臍ヘルニア のホームケア

1.  臍ヘルニア とはこんな病気

年齢別:0歳~
症状別:へその脱出
体の部位:腹部

 

臍ヘルニアとは、へそから内臓の一部が脱出した状態です。

内臓は「むき出し」ではなく、お腹の皮膚で覆われているので、へそが突き出したように見え、「でべそ」ともいわれます。
生まれたばかりの赤ちゃんの10~30%に見られ1,2) 、生後3~6カ月頃にかけて最も大きくなります。
多くは1~2歳までに自然に治りますが1) 、突き出た部分を絆創膏で圧迫するなどの治療が行われています。
2~3歳を過ぎても自然治癒しない場合は、手術が考慮されます。

2.  臍ヘルニア の原因と症状

母親と胎児をつなぐ「へその緒」は、胎児側は臍輪(さいりん)という部分につながっています。

臍輪は、腹筋を包む筋膜に開いた穴です。
生後、へその緒が取れた赤ちゃんは臍輪が閉じ、へそが形成されます。

この臍輪の閉鎖がうまくいかないと、筋膜に穴が開いた状態になり、そこから内臓(小腸など)が体外に脱出します。
脱出といっても、内臓そのままではなく、腹膜(内臓全体を覆う膜)と皮膚に覆われています。

生まれたばかりの子どもはよく泣きますが、泣くとお腹に力が入るため、さらに内臓が押し出されやすくなります。
大きい臍ヘルニアは盛り上がりが4~5cmにもなります2) (図1)。

3.  臍ヘルニア の治療法

臍ヘルニアは、生後3~6カ月で最も大きくなった後は縮小し、1歳までに80%、2歳までに90%は自然に治ります1)

ただし、盛り上がり具合によっては、縮小して自然治癒しても皮膚のたるみが残ることがあります。

 

積極的な治療として、近年多くの医療機関で行われているのが圧迫療法です3)

絆創膏やスポンジ、ガーゼ球などを使い、適切な方法で患部を圧迫します。
圧迫の材料によって異なりますが、例えば数日、2週間といった間隔で交換します3)

 
同様に、圧迫材料や医療機関の方針の違いによって、交換を医師が医療機関で行う場合と、保護者が自宅で行う場合があります。

この治療を2~4カ月ほど続けると治癒すると報告されています3)
臍ヘルニアの発症後早期や小さいうちに始める方が、治癒までの期間も短いとされます2,3)
  
圧迫療法、または、無治療の経過観察で2~3歳を過ぎても自然に治らない場合などでは、小児外科で手術を考慮することもあります。
手術では、全身麻酔下で筋膜の穴を縫い縮めるとともに、へその形態を整えます。

4.  臍ヘルニア のホームケア

家でまずできることとして、腹圧をさげてあげます。

妊娠中のお母さんもお腹が大きくなると、でべそになることがありますが、赤ちゃんも同じです。

ヘルニアが強くならないように、便秘がないかを確認し、便秘症状があれば便秘の治療をします。
ガスが多ければ綿棒浣腸などのケアを地道にしてあげるとよいでしょう。

 
圧迫療法を受ける時には、どのような材料でどのように行うのか、有効性と安全性、予期せぬ事態が発生した時の対処法など、主治医からよく話を聞き、納得した上で治療に入りましょう。

圧迫療法の代表的な有害事象は、圧迫の材料による皮膚の炎症です。
お腹を圧迫したことによる吐き気なども生じる可能性がありますが、圧迫療法を中止するほどの重い吐き気はないとされます3)

『参考資料』

1) 仁尾正記、奥山宏臣、田尻達郎編.標準小児外科学第8版.医学書院 2022
2) 日本小児外科学会ウェブサイト.臍ヘルニア.
(2023年4月閲覧:http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/heso-helnia)
3) 田口智章、濵田吉則監修.土岐彰、奥山宏臣編集.臍の外科 小児の臍疾患治療と臍を利用した手術.メジカルビュー社 2018

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。

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