2025.02.10
目次
結膜は、まぶたの裏と白目を覆っている粘膜です。
小児・成人を問わず発症し、眼のかゆみ、充血、眼脂(目やに)などの症状が現れます。
目は血管が発達し、環境のアレルゲンと直接接触するので、アレルギーの標的となります。
結膜は特に免疫の活性が高いとされています。
眼のアレルギーは、単独で出たり、鼻のアレルギーとともに症状が出ることも多いです。
目の症状は生活に影響を与えます。
様々な目の病気は赤目(red eye)になることが多く、アレルギー性結膜炎以外にも眼瞼炎、角膜剥離、異物、出血、角膜炎、虹彩炎、緑内障、化学熱傷、強膜炎などがあるので注意が必要です。
赤目の症状には、眼脂(目やに)、発赤、痛み、羞明、かゆみ、視覚的変化などがあります。
赤目の病気の多くは重篤なものは少ないものの、生活に影響するので治療をしましょう。
症状の発現に季節性の変化がある「季節性アレルギー性結膜炎」と、年間を通して症状がある「通年性アレルギー性結膜炎」に分類されます1) 。
季節性が多く、通年性は少なく、症状も軽いです。
表:季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎
季節性アレルギー性結膜炎 (症状の発現が季節性) |
通年性アレルギー性結膜炎 |
スギやヒノキ、シラカバ、 ブタクサ、ヨモギなどのさまざまな花粉 |
家のほこり(ハウスダスト)、ダニ、カビなど |
予防と治療の基本は原因物質を回避することで、症状を抑える治療として点眼薬などがあります。
アレルギーの原因物質であるアレルゲン(抗原)が体内に入ると、IgE(あいじーいー)抗体が作られ、皮膚や粘膜にあるマスト細胞(肥満細胞ともいいます)の表面にくっついて、アレルゲンが再び体に入ってくるのを待ちます。
同じアレルゲンが再び体内に入ると、IgE抗体と結びつき、マスト細胞が活性化されてヒスタミンなどの化学伝達物質を放出します。これらの物質が、白目のむくみやかゆみなどを引き起こすのです。
アレルギーは大きくⅠ型からⅣ型の4つのタイプに分かれます。
その中のⅠ型アレルギーは即時型アレルギー、アナフィラキシー型とも呼ばれ、アレルギー性結膜炎もこのⅠ型に分類されます。2)
Ⅰ型アレルギーは体のどの部位に生じるかで、いろいろな種類の病気があります。
眼の結膜が反応の場となるのがアレルギー性結膜炎です。
鼻の粘膜ならアレルギー性鼻炎、皮膚なら蕁麻疹(じんましん)やアトピー性皮膚炎ということになります。
このうちいくつかを合併することも珍しくありません。
その他にも、アトピー型気管支喘息、アナフィラキシーショックなどがあります。2)
なお、花粉症は、スギ、ヒノキなどの花粉によって生じるアレルギー性の病気をひとまとめにした考え方です。
花粉症の人は、「花粉が原因のアレルギー性鼻炎」、「花粉が原因の季節性アレルギー性結膜炎」などのうち、一つあるいは複数の病気を合併していることになります。
0~4歳児の3.8%にスギ花粉症があると報告されています3) 。
通年性アレルギー性結膜炎の原因には、家のほこり(ハウスダスト)、ダニ、カビなどがありますが季節性アレルギー性結膜炎より症状は軽度です。
いずれも症状としては、眼のかゆみ、充血、涙が出る、ゴロゴロとした異物感、白目がむくむ、眼脂(目やに)などがあります1,4) 。
かゆみで眼をこすり過ぎると、まぶたが腫れてしまうこともあります。
眼脂(目やに)は、炎症によって血管の外に漏れ出した液体成分などから成り、白っぽい、または半透明で糸を引くような感じになります1) 。
他には、涙の中にアレルギーの抗体がどれくらいあるかを、あるいは、採血して血液中のアレルギー抗体の量を調べることもあります。
耳鼻咽喉科や小児科、内科を受診した場合は、眼やそれ以外の症状、経過から診断されることが多いです。
アレルギー反応を抑える抗アレルギー薬、炎症を抑えるステロイド薬などがあります。
点眼が苦手な場合は内服薬を使うのもよいと思います。
抗アレルギー薬は、アレルギー反応におけるヒスタミンの働きを抑えます。
季節性アレルギー性結膜炎では、花粉が飛散初期から抗アレルギー薬の点眼を続けると、シーズン中、症状がひどくならずに済むとされます4) 。
抗アレルギー薬だけでは効果が不十分なら、炎症を抑えるためにステロイドの点眼薬を使うこともあります1,4) 。
点眼薬の使い方は、下記の記事をご参照ください。
飲み薬とはまた違った注意や工夫が必要ですが、効果を得つつ副作用を防ぐため、正しく使用したいものです。
とはいえ、完全に避けることは難しいでしょうし、対策を行うこと自体がストレスになることもありますので、無理のない範囲で行いましょう。
例えば、スギの花粉は全国的に2~4月を中心に、ヒノキは本州南部、四国、九州で3~4月を中心に、カバノキは北海道、東北で4~6月を中心に飛散します1) 。
その時期には、次のような対策を取ることが考えられます。
家のほこりの対策としては、喘息の予防策と共通していますので、気管支喘息の記事も参考にご参照ください。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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