2023.02.08
妊娠反応検査薬で陽性であれば妊娠が成立したことは間違いありませんが、子宮外妊娠の可能性も1%程度ありますので、早めに産婦人科で適正な位置に着床しているかどうかを確認することが大切です。
子宮外妊娠とは子宮の内腔の外に受精卵が着床してしまう状態です。
完全に子宮の外の腹腔内に着床することもまれにありますが、多くは子宮の一部である卵管妊娠で、子宮外妊娠の90%以上を占めます。
受精卵は、子宮の内腔に着床すれば胎児の成長に十分な血流を確保できますが、それ以外の場所では胎児が育つことはできず、ほぼ早期に流産になります。
しかし、卵管や卵管角(子宮と卵管のつなぎ目あたり)などに着床した場合、なかなか流産にならずに超音波で分かるレベルまで成長することがあります。
それでもそのまま出産できるまで大きくなることは不可能で、成長した結果卵管破裂などを起こし大出血になってしまうこともあります。
したがって、卵管妊娠が判明した場合は原則として緊急手術になります。
卵管角付近や子宮頸管部付近に着床した場合はさらにリスクが高く、生児を得る可能性がごくわずかある一方で、結果的に子宮摘出が必要になることもあります。
検査により妊娠反応が陽性なのに、超音波検査で子宮の中に胎嚢(たいのう=受精卵が着床すると作られる赤ちゃんを包む袋)が見つけられないと子宮外妊娠が疑われます。
その場合は、さらに膣内を超音波検査で調べたり血液検査を行ったりして診断を確定させます。
ただし、子宮内に胎嚢が認められるようになるのは妊娠5~6週目からなので、妊娠のごく初期の段階では、子宮外妊娠かどうか判断できません。
通常、体に負担が少ない腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)が行われることが多いですが、開腹手術になることもあります。
手術のやり方は、卵管の状態や将来の妊娠・出産に対する患者の希望、妊娠週数などにより異なり、卵管ごと切除する場合と患部を切開して残す場合があります。
メトトレキサートという薬を注射する薬物療法もあり、この場合卵管の温存が可能ですが、これを行うためには卵管の状態などが一定の条件を満たしている必要があり、治療は保険適用外になります。
またメトトレキサートは抗がん剤として使われる薬なので、一時的に吐き気や白血球・血小板の減少、脱毛などの副作用が現れることがあります。
受精卵が着床した場所によっては、妊娠が終了しそのまま流産するまで経過観察を行うこともあります。
産婦人科の受診や市販の妊娠検査薬で妊娠が分かっても、妊娠初期には、正常な妊娠か子宮外妊娠かの判断はできません。
妊婦健診をきちんと受け、おなかの赤ちゃんが子宮の正しい場所で成長していることを確認することが大事です。
また、子宮外妊娠の発見が遅れる人の中には、妊娠自体に気づいていなかったケースもあります。
妊娠の可能性がある場合は、生理周期や不正出血に注意し、気になる症状があったら早めに受診しましょう。
《 監修 》
井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医
よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。
▶HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科